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アミューズメントセンターの話






夏のある日。


「みんな準備出来たかー?」


「「はあい!!」」…ん」


猫の足跡亭の玄関に集まっていたいつもの四人。


「夏休みだもん。しっかり遊ばなきゃね!」


「うん!」


「ん!」


「はいはい」


ランブルゲーム漬けになっていた埋め合わせの為、コウヤは三人を連れて遊びに行くことになっていたのだ。


向かう先はラコール・ベルデ。


最近出来た流行のアミューズメント・センターである。


「それじゃ行くぞーっと」


「「おおーっ!!!」」


そしてドアを開き…


「あつっ!」


「あっちゃーっ!!!!」


「う〜っ!!」


焼き付くように射した熱風によって悶絶する三人。


セミの鳴く外は一面、真夏の太陽によって眩いばかりに焼かれていたのである。


…陽炎が揺らめく中、繰り出された日差しと温度のダブルパンチ。


「この中歩いて行くのー…?」


「我慢だ我慢…」


「ううーっ…」


そして一行は歩き出した訳だが、


「…」


只一人リリスだけは涼しい顔で歩いている。


…自分だけ防護結界を張っているのだ。




そして出発して五分ほど。



目抜き通りから数本入った路地の先にその建物はあった。



「ここか…」


「早く入ろーよー…」



ガラス製の自動ドアが開いて、


「…おおっ」


「涼しーっ!!!」


復活したアリシア。


…広々とした施設の中は冷房が利いていて実に涼しい。


ゲームの対戦台などが置かれている一階には皆興味が無いようで、半木造のエスカレーターで上へと進んでいくと、聞こえてきた賑やかな音楽と共に、目当てらしいそれらのゲームが待っていた。


「コウヤ、あれやろうよあれ!」


そう言ってアリシアが指し示した先にあった物は、外側の手元の位置に操作盤が付いた、中に大量の大きな縫いぐるみが入っているアクリル張りの筐体。


「おお、クレーンゲームじゃん!」


歓喜するコウヤ。


…ランブル・ゲームで稼いだ分があるので軍資金には困らない。


「やってみる!」


そう言って筐体に駆け寄り、コインを投入しゲームを始めたアリシア。…が、


ガチャガチャとレバーを動かしていると、見当外れの方へとアームが行ってしまった。


「あれー?」


「俺に任せなさい」


元の世界では腕を鳴らしていたコウヤである。


操作盤に立った彼の目つきは何時になく真剣そのものであった。


「行くぞ…」


慎重にアームを操作していき…


「やった!」


見事茶色の縫いぐるみをキャッチ。


「すごーい!!」


排出口から出てきた縫いぐるみを確かめると、それはクマであった。


「あいよ」


「…えへへ」


渡されたクマの縫いぐるみを抱きしめるノエル。


「私も欲しいー!」


「順番だぞ順番」


そう言って次のコインを投入するコウヤ。


そして順調にゲットしていき、三回で人数分手に入れホクホク顔である。


…そこで巡視の店員に睨まれ退散となった。


ちなみにそれぞれリリスにはヒツジの、アリシアにはトラの縫いぐるみであった。


そんな訳で二階をぶらぶらとしていると、


「おおっ?」


目に付いたその筐体は、デモ画面の流れる魔法石で出来たビジョンに、手元の台には小振りな剣が刺さっている。



「ソード・クエストⅢ? なんだこりゃ」


「勇者様のお話をゲームにした物みたいだね。これもやりたい!」


そう言うとアリシアはコインを投入。


ビジョンに流れた説明通り剣を台座から引き抜くと、勇者が故郷の村から旅立ったというデモシーンが流れた後、緊迫感のあるBGMが掛かると共にビジョンからモンスターのホログラムが飛び出してきた。


「跳ね兎だ! かわいー!!」


アリシアがそう喜んだモンスターは中々愛くるしいデザインである。


「そうじゃなくて、始まっちゃってるぞ!」


「で、でもー」


画面にはモンスターのホログラムを剣で斬るようにという指示が表示されている。


▼ゆうしゃのこうげき !


「出来ないよーっ!」


そういって地団駄を踏むアリシアに、表情を凶悪な物に変えたモンスターが襲いかかってきた!


▽はねうさぎのこうげき !


「うにゃーっ!?」


大迫力の映像効果と共に繰り出されたモンスターの攻撃に、アリシアも思わずたじろいだ。そして…


▼ゆうしゃは しんでしまった !


「えーっ!!?」


「序盤だからプレイヤーのヒットポイントも低いし、今の攻撃がクリティカルだったんだなー」


「そ、そんなー」


「次ボクやる!」


そして、しぼんだアリシアから剣を受け取ったノエル。


コンティニューの操作をした後ノエルが綺麗な構えの姿勢を取ると、手に握られたその剣は何やら白銀に光り始めた。


「な、なんか光ってるんだが」


「えっと、ボクには精霊様の加護があるから」


「それで光るのか!?」


そんなこんなで始まったノエルの番。


「ええーい!!」


再び現れた跳ね兎を輝く剣でズバっと一閃、迫力のあるホログラムの効果と共に大ダメージが加えられた!


そして目をバッテンにして跳ね兎は倒されたのだ。


▼ゆうしゃは しょうりした !


「やっ、やったあーっ!!」


はしゃぐノエル。


…画面が切り替わり、立ち直った跳ね兎は目をうるうるとさせてこちらを見ている。


▼なかまにしますか ?  はい いいえ



「倒すと味方に出来るみたいだな」


「うそーっ?!」


アリシアは驚愕した。


「それなら倒してれば良かったよ…」


うなだれるアリシア。


「ノエルはどうするんだ?」


「えっとね…」


ノエルはスティックにもなっている剣で画面を指し示し、


▼なかまにしますか ? ニアはい いいえ


そして決定。


楽しげな効果音と共に喜ぶ跳ね兎が踊り出すという映像が流れた。


「やったな!」


「えへへ…」


喜ぶノエル。


画面は切り替わり、元の街道の画像が出てきた。


…そのまま順調にゲームは進んで行き、遂に魔王との対決である。


魔王の城の最奥の部屋。角を生やした青白い肌の、禍々しい風貌の魔王が目前に立ちはだかった。


▽わたしのなかまになれ ! せかいのはんぶんをあたえよう


             いいえ はい


「どうする?」


「そんなの…!」


▽わたしのなかまになれ ! せかいのはんぶんをあたえよう


            ニアいいえ はい


ノエルは選択した。


▽ならばしかたない おまえは ここで きえろ!


そう表示されると同時に魔王のポーズが変わり、構えた画面の指先に、ホログラムの黒い色の、大きな光の球が現れた。


「…っ」


「おおっ」


ーー放たれ、迫り来る光の球。


そこに盾になるように飛び出した小さな影。そして…


「「跳ね兎ーっ!!!」」



…後には跡形もなかった。



▽ええい こしゃくなまねを !


そう表示されて、最後の戦闘開始である。


「ノエル!」


「…許さない!」


剣を構えて、ノエルは立ち向かっていった。




ーーそして激闘の後。


画面に勝利のエンディングが流れる中、ガチャンと筐体が作動して、取り出し口から記念品のメダルが出てきた。


…手に取ったそれをじっと見つめるノエル。


跳ね兎はこのゲームのマスコットキャラになっているようで、メダルはそのレリーフとなっていた。


「どうした?」


「…なんでもないっ!」


そして四人は次のゲームへと歩いていった。


「これは?」


「魔力テスターだよ。これを使うと自分の魔力が分かるの!」


そう言って計測台に手のひらをかざすアリシア。


出てきた数値はアリシアは並、ノエルは極大。そして、



「計測不能、だって」


「…ん」


そう言われ、少し自慢げな表情のリリス。


…ちなみにコウヤはゼロであった。


「残念つーかなんつーか…おっ」


差し込んだオレンジ色の日差しにコウヤが窓の向こうを見ると、既に空は茜色に染まっていた。


「それじゃあぼちぼち帰るかー」


「「はーい!!!」」…ん」




「帰りは来た時よりも涼しいかなあ?」


「だといいなー」


「コウヤ、今日の晩ご飯何?」


「んひひ、内緒だぞ」


そう言いながらエスカレーターを下る四人。


そして出口の自動ドアを潜ると、熱気は残っているものの外の暑さはだいぶ和らいでいた。


「また来て良い?」


「もちろん!」


「次は何やろうかなっ」


「…ん」


綺麗な夕焼けが見守る中、四人は猫の足跡亭までの道を帰って行った。

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