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早起きは三文の得?の話







ある日の朝。


「ふああぁあ…っ」


早く起きてしまったコウヤは猫の足跡亭の玄関前で、眠気覚ましに朝風をあたりに出てきていた。


「………」


時刻は朝の5:30。

誰も人は歩いておらず、二十四時間営業の猫の足跡亭以外は、バーやスナック、酒屋を除いて通りの店は閉まっている様な、そんな時間。


群青色に色相が落ちている街並みを風が通り抜けていって、眠りの温もりに微睡むコウヤの身体をすっきりと冷やしていく…


「……んん…っ、ふぅ」


そんな所でコウヤも眠気が晴れて、ぼちぼち部屋の中に戻ろうか、と思いかけた時、



………‥ーーー‥ーー…‥



「ーーん?」


…何だろう、遠くからからから、と言う軽い回転音が聞こえてくる。


「…ううむ」



もう一度耳を澄ましてみよう。



………‥ーーーー‥‥ーーーーーー‥…‥ーーー………



…音が徐々に近づいてきている。


不審に思って通りを前後に見渡したコウヤだ。

ーーすると正体が分かった。


「おっ?」


コウヤから向かって右手の、通りの半ばにある橋の上。


…そこにあったのは、花束が一つ入ったカートを押している老人の姿だった。


それがすごく、ゆっくりと、音を響かせながら近づいてきていた。



(…新手の怪奇話か?)


ともすればの不気味さに思わずそう思ってしまったコウヤである。




…そしてその姿がコウヤの前を横切る。



それまでは、その姿はぼやけたように明細がはっきりとしなかったのが、この距離になって、その人物は老婆だと認識出来た。


そして離れていって…再び影に薄らいだ。


「……」


呆として見ているしか無かったコウヤだが、



(ついてってみよう)



ふと顔を覗かせた好奇心に、一路駆けだしていったのだ。




………




和らいだ闇の中に消えそうになる相手の影。


「…」


ーーコウヤはその後をズンズンと追っている。


…相手の速度は中々早い。

子供になってしまった自分の歩幅では、ぼさっとしていると置いてかれそうになる程だ。


「……」


それでも意地になってついて行って行くと、しばらく進んだ所で裏道に入った。

角のコインランドリーの前を通って、民家の前を行って…それがどんどんと進んでいく。


すると今度は坂道になった。ベルデは山地に面した複雑な地形なのだ。

結構な勾配。しかし、それを老婆はカートを重そうにもせずどんどんと登るではないか。


「…っ!」


思わずコウヤは置いてかれそうになる。だが…息が上がりそうになるも、ここが踏ん張り所だ。


足を突っ張って、棒のようにして一歩づつを踏み込んで行く。

そうして何とか追っていって、坂の終わりが見えかけた頃…


「あっ!」


相手の姿が消えた! いや、坂の終わり、頂上付近にある横道に入ったのだ。


コウヤは思わず走って、その後を追った。


そしてコウヤがその先へと入った時…


「…!?」


暗がりの中にあったのは、…墓地のような、そんな一角。


ざわざわとその傍に立つ木が揺れる中、コウヤは呆然としているしか無かった。



…そう言えば聞いた事がある。此処は鉱山の事故で死んだ者を弔う慰霊碑の筈だ。


ここ半世紀は死人の出る事故なんて起きてないので誰も行かなくなり、すっかり寂れてしまったそんな場所。

そんな所にどうして…



…ーー思い掛けた時である。



「!」


突然、光に照らされた。


闇が晴れ、東の方からの暖かなそれによって木と慰霊碑がシルエットになって、

そして見えたのは…


「…おおお」


…ベルデの山々に朝日が映える、そんな光景だった。











「なんだい? アリシアちゃん所の坊やじゃないかい?」


その言葉に顔を向けると、すっかり光に満ちたこの場所に居たのは…人懐こそうな一人のおばあちゃんだった。



     * * *


「「おおおーっ!!!」」…おお」


今日のおやつは、そのおばあちゃんに教えて貰ったカスタード・タルトである。


「どうだ、嬉しいだろー」


「「うんっ!」」…んっ」


喜ぶちびっ子達を前に思わずコウヤも胸を張った。



あの後話してみるとすっかり仲良くなる事が出来、最後におみやげとしてレシピを教えてくれたのだ。



アリシアの好物という事だが…果たしてどうだろう。


「ぱくっ、…これはっ、おばあちゃんのタルトの味だあ?!」


そしてその瞬間、驚愕と言った様子に目を見開いたアリシア。


「なんだよ、あの人も言ってたけど、アリシア知り合いなのか?」


「知り合いも何も、私がちっちゃい時すっごくお世話になって! 毎日食べさせて貰って…」 


そう言い掛けたアリシアの顔が、


「うう、私が五歳の時に死んじゃった筈なのに、ううう」


涙目にどんどんと潤んでしまい、とうとう泣き出す一歩手前という所にまでなってしまった。


「死んじゃったあっ!?」


驚くコウヤである。


「うわあぁーあんっ! おばあちゃーんっ!!」


そして堰を切った様に泣き出したアリシアにそれ以上の追求も出来ず、


「…どういう事だってばよ」


なんだか腑に落ちないコウヤであった。


     * * *


オチはな(ry


(了)

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