荒ぶるリネンの話
ある日のベルデ鉱山。
仕事が終わり、コウヤがハンガーで土埃にまみれた〈シロガネ〉を洗っていると、そこに近づく人影が一つ。
「おーい」
「…げっ、リネン」
近寄ると、コウヤの立つ脚立の傍に立ったリネン。
「げっとは何だねげっとは」
「げげげっだよ」
「お姉ちゃん傷ついちゃう…」
「傷つけ傷つけ」
「うえーん!」
もちろん嘘泣きである。
「それでどうした。俺は見ての通りだぞ」
「ふふん、いつも恵んでくれてもらってるからねー、今日は私が後でご飯を作ってあげようと思って」
その言葉にホースを持ったコウヤの手が固まる。
「ちょっと反応ひどすぎない!?」
「いや、なんつーか素で想像がつかなかったわ」
「ドイヒーだよ…」
ガチ凹みのリネンであった。
そんなこんなで猫の足跡亭。
「あっ、リネンちゃんだ!」
歓迎するアリシア。
「はっ、初めまして」「…どうも」
リリスとノエルも初めて見る人物に興味津々である。
「おー元気にやっとるかねー君たち。こうして集まってくれた君たちちびっ子にお姉さんが格言を示してぜんじよう」
「おおー!」
「んとねー」
んーっとしばらく考え込み、リネンは、
「パンツに穿かれる女じゃなくてパンツを穿く女になりなさい」
「変な事いうなし!?」
「あっ、今日の私のパンツ見る?」
「見るかい!!」
怒るコウヤだが、その言葉にお子さま達はほおーっと感嘆しているらしかった。
ーーちなみにイチゴ柄のお子さまパンツであった。
そして料理が出来上がり、それぞれの皿に盛りつけられる。
メインディッシュはトマトソースを掛けた鶏肉のソテーで、それにトマトとベーコンのパスタ、トマトのサラダとトマトずくしであった。
「あたしの地元はトマトの栽培で有名なのよねー」
とリネン。
コウヤは恐る恐る一口食べ、
「…あっ、うまい!」
「どうだ参ったか!」
その反応にガッツポーズのリネンであった。
それにしても、である。
「こんな事してくれるなんて何があったんだ?」
「えへへ、いいことあったんだー」
尋ねたコウヤに返すリネン。
「競馬で勝ったとかか」
「…まあ、そんな感じっ」
ーーその横顔は本当に嬉しそうで、
「そっか」
そこまで聞いて、コウヤは余りリネンの事を自分は知らないのだなと思った。
「と言うわけでこれからもよろしくっ!」
「それは勘弁願いたい…」
「ええっ酷ーい!?」
そうして夕暮れの空は闇色に沈んでいった。




