おやつ頃の話
週末の猫の足跡亭。
時間のあったコウヤが台所を借りてお菓子を作っている最中、そこにドア鈴を鳴らしてアリシアが帰ってきた。
「ふふ〜ん今日は何かな〜」
「おおアリシア、帰ってきたらうがい手洗いだぞ」
「はーい!」
こしらえた菓子はオーブンに入れて、後は焼き上がるのを待つだけであるコウヤはカウンターの椅子に座ってくつろいでいた。
主に自分たちのおやつを作るのがメインとはいえ、すっかり料理が趣味になってしまったコウヤである。
「いやー楽しみだなあー、あなたのお菓子絶品だもん!」
「レシピ通り作ってるだけだよ」
そうしている内にオーブンの鈴が鳴り、来客が多いため多めに焼いたそれを取り出して器に盛っていく。
…この日作っていたのはチョコレートのクッキーであった。
「ほおーおお!」
「すぐ渡すからな、つまみ食いはダメだぞ」
そこに鳴ったドア鈴が二回。
「お邪魔しまーす!」
「…ん」
「みんな!」
ノエルとリリスである。
「おお、丁度いいところに来た!」
二人を手招きして、さっそくこの焼きたての菓子を振る舞う事にしたコウヤだったのだ。
そしてしばらくして、
「…」
「…」
「…」
小さな丸いテーブルを三方に囲むアリシア、ノエル、リリスの三人。
そのテーブルの上にある一枚の皿の上には、これまた一枚のクッキーが。
三人の内の誰かが指を伸ばし掛けては引っ込め、これまた誰かが指を伸ばし掛ける…三竦みであった。
「…どうしよっか」
「…じゃんけん」
「ぼっボクはもう大丈夫だよ? ま、まだもうちょっと食べたいかなーなんて絶対思ってないもん」
「…」
「…」
「………」
…降りる沈黙。
「…最初はg」
「あーっ! 分かった分かった私はいいからこれはノエルちゃんにあげるよ」
「えっ!? …ぼ、ぼぼぼボクはもうお腹いっぱいだからいいいかなーなんて」
「ええーっ?! ほんとにほんとにいいのっ!? そんな事言ってると本当に私が貰っちゃうよーっ!?」
「あう、そ、そう言われるとボクもやっぱり欲しいかなー…」
「ああーっやっぱりノエルちゃん食べたいんだっ!! きーちゃったっきいちゃった♪」
「アリシアちゃん酷いよーっ!」
「むー!」
「うー!」
不毛な争いである。
「…」
そしてそれを見ていたリリス、確かめる様に、小さなクッキーを摘んでから…
「「あーっ!!!」」
…その様子をカウンター越しにニマニマと見ていたコウヤ。
にぎやかな三人であった。




