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ルクレシアの憂鬱



ルクレシアはこの日何度目かのため息をついた。


悩ましげにその柳の葉のような眉が下がり、それを見ていた男性教諭達は皆心を奪われながら、一体何があった、ーーもしや恋の悩みかとそわそわするのである。



正解は恋の悩みなどではなく、彼女の本職に理由があった。




ーー彼女の本職、それはトリエステ政府のエージェント。


映画のような話であるが本当である。もっとも、エージェントと言っても彼女は事務方であり、直接荒事をこなすわけではない。…やれなくはないが。


一ヶ月ほど前に任務〈オーダー〉を言い渡され、二週間前にこの学校の教員として着任。


途中で相棒〈バディ〉である少女を狙ってのトラブルなどがあったものの、今は平穏に任務を実行中である。


…任務の内容。それは対象の監視と警護。


一ヶ月半程前にこの世界に現れた『異邦人』の少年。それを護ることが彼女の使命である。


元気な少年を巡って様々な出来事が起きては消える。ルクレシア達も影から見守っているのである。



ーー去る事情から前職を辞めたルクレシアだが、それを経て就いたこの仕事に愛着のような物を持ちつつあった。


それは誇りのような物でもあるし、なにより相棒であり、そして自分がこの仕事に就いた理由である少女…リリス。その傍にいれること。


護衛対象である少年のこと、そして妹の様に可愛がっているその少女のことを思って、再びルクレシアはため息をついた。

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