ダメ人間たちのお話
ベルデ、そこは地の果て街の果て。かように様々な人々が集まる街である。
であるからして、その中には世の中的に言う所のいわゆるダメ人間もいるのだが、
「…」
最近ちょっとエンカウント率たかくねーか? とコウヤは思ってしまうのである。
たとえば扉を開けると行き倒れていたこの女。
とりあえず足で横に転がしときつつ、今回の有効な対処法を頭で練る…が思いつかない。
そうとしている内にがばっと上体を起こして足にすがりつき、
「お腹、減った…」
そう言い残して再び倒れた。
「…」
見なかったことにしてとりあえず再び扉を閉めようとしたが、がっと足を挟まれ阻止されてしまう。
「起きてるじゃねーか!」
「食べさせてよいけずー!!」
うわーん! と年甲斐もなく泣き出したこの女…リネン。
こうした人々をコウヤは災害のようなものだと思っていた。
その横顔は哀しみで悟ったものである。
「だってだって、おウマちゃんが勝ってくれないのが悪いのよう」
稼ぎが良く、年のせいもあり身持ちの堅いコウヤは、事あるごとに良いカモ、もとい良い友人として頼られていたのである。
「十六でギャンブル狂いとかお先真っ暗すぎんすけど」
「後生のお願いだからゴハン食べさせてぇ!」
「何度目だよ、たく…しょうがねえな、有り物で適当に作るだけだぞー」
「やたっ!」
ため息をつきながらの了承。
冒険者としての給料も悪くはなく、どうやったらあれほどの大金を毎度無一文までスってしまえるかが分からなかった。
「はい、どーぞ」
ほおーっとリネンが覗き見ているのは、たった今作ったばかりの、ほぐしたランチョンミートと細かく刻んだベーコン、塩コショウだけで味付けした具をかけた山盛りのパスタ。
「ううーっおいひい…やっぱ持つべきは善き友人よね」
早速ぱくつくリネンを見つつ、
パスタに使ったランチョンミートはこの後のおやつだったため、また買いに行かないとなーとコウヤ。
「この代金は必ず出世払いするから! おウマちゃんで勝ったお金で」
「真面目に働いてるんだからもらった給料で返してもらうだけでいいんだぞ」
「そのうち、そのうち必ず勝つから!」
「返す気があるのか!?」
言いながら、なんでこんな奴と知り合いになったんだとふと思うコウヤ。
ーーそういえば出会った時もこんな感じだったっけ。
愕然とするコウヤをよそに舌鼓を打ちながら豪快な勢いで食べ続けるリネン。
と、そこにガンガンと荒いノックが聞こえてきた。
「今度は何だ?」
そう言ってコウヤは扉を開け、…開けた事を後悔した。
「よおボオズぅ、元気しとるかあーっ?」
酒臭い息と共に聞こえてきたオッサンの声。
…達と言うからにはリネンだけではないのだ。
昼間っから香水のにおいをプンプンさせて、現れたのはバーガー・マックミラン。
禿げ上がった頭に鷲のくちばしのような鋭い鼻が特徴のオッサンの冒険者である。
そして同時に一番の難敵が現れた。
人格破綻の女冒険者・サイモンである。
女なのにそう言う店に出入りしているらしく、同じく香水のにおいを漂わせている。
性豪であった(いろいろな意味で)。
「おーバーガーちゃんとサイモンちゃんじゃん。あげないからね!」
「酒のアテでも作ってもらおうかと思ってきた。代金はつけだ!!」
どっかと上がり込んできた酔っぱらい軍団の出現に、ここが宿屋の二階であるという安心の確信が揺らぎつつ、またしばらく絡まれ続けそうだとコウヤはゲンナリした。
時刻は休日の朝十時。
こうした者共に囲まれてコウヤは日々を過ごしているのである。




