新入部員と坑内火災の話
「…部活?」
「そうなの」
ある日の小学校、その放課後。
…アリシアはリリスに部活の勧誘を行っていた。
「あなたが入ってくれれば最低人数の三人を越えてひとまず安泰になるの! お願い、リリスちゃん!」
「………」
たっぷり悩む事数秒。
「…分かった」
「本当!?」
いやったーっ!! と喜ぶアリシア。
こうして鉱山愛好部の部員は三名となったのである。
* * *
そうしてその数日後、リリスを連れての鉱山探検が催される事になったのだ。…が、
「坑道で火事!?」
「大火トカゲが現れちまったんだよ。退治にしくじって四方八方に火を吹いてこの様さ。場所は離れてはいるんだが、逃げれる内にお前達も早く逃げた方がいい」
通りかかり、馴染みの冒険者がそう言ってくれた。
「どうする?」
「んー、帰るしかないよねー」
〈シロガネ〉のコクピットの中、シートに座るコウヤの両側にアリシアとリリスがいた。
「しょうがねーから帰るぞリリスーって、ん?」
リリスは何かを訴えるようにコウヤの袖をくいくいと引っ張っている。
「どうしたんだよリリス」
「…人命救助」
その言葉にコウヤとアリシアは顔を見合わせた。
* * *
燃え上がる火勢の前で、呆然と佇む冒険者が三人。
…火の中に仲間二人が閉じこめられてしまっているのだ。
かなりの高温と迫る火の手の前で、そうして佇む冒険者達の背後に一体の白いヴァリアントーー〈シロガネ〉であるーーが現れた。
「あんた達は先に避難してな、必ず仲間は助け出す!」
そう言って冒険者をその場から離れさせるコウヤ。
「とはいえどうするかね…」
「…外に出して」
「! おい!」
「大丈夫」
力強く言われ、ハッチを解放…直後、吹き込んだ熱風がコクピットの中を急速に熱していく。
「どわっち!」「あつい!」
「…〈防護結界〉」
その魔法をかけると後、吹き込む熱風は和らいだ。
そして自身にもかけて、出された〈シロガネ〉の手のひらに乗るリリス。
…リリスはある事情から治癒や回復などの支援系の魔法が全く使えない。
ーーだが、物は使いようである。
リリスは最大威力の氷魔法と水魔法を同時に詠唱。瞬時にその場が急速に冷やされ、人を運び出すのに問題のない温度にまで冷却される。
そうして弱まった火の向こうに倒れている冒険者二人を発見。そこへとコウヤは機体を近づけさせた。
* * *
坑道の入り口で〈シロガネ〉を待つ冒険者達。共に火トカゲ討伐に出た仲間や避難している鉱夫、只の野次馬などが固唾をのんで見守る中…
…現れた煤まみれになった〈シロガネ〉。その突き出された両手の上に、救助された冒険者二人とリリスがいた。
ーー防護結界を解除した後、踊り終わったバレリーナのように、リリスはスカートの裾を摘んで広げ、一礼。
直後、怒号のような大歓声が、入り口の前に人垣を作っていた鉱夫や冒険者、野次馬から上がったのである。
* * *
「バカヤロウ!」
「痛って!?」
トーマスの鉄拳である。
「おまえらもおまえらだ。危ないことは大人に任せなさい!」
そういって立ち去るトーマス。
「いってて…まあしょーがねーよなーっと」
「…ごめんなさい」
「あ? いやいいって事よ。おまえのお陰で助かった奴がいるんだからさ」
しぼむリリスにそうフォローするコウヤ。
ーーそれに、先ほどコウヤに見舞った鉄拳はかなり加減してあった。
「…そう?」
「そうそう」
「…そう」
言い終わってコウヤはにっこり微笑んだ。
「それじゃ、帰るか!」
「うん!」
「…ん」
時刻は夕暮れ時であった。




