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決戦の後

     * * *


シロガネの手の上のリリスは、気を失った様子でグッタリとしている。息はあるようだ。


〈シロガネ〉のコクピットから出てきたコウヤはそれを確かめると安心し、そして今までの緊張や疲労感がどっとあふれ出してきた。


仰け反る様にその場にへたり込み、そして倒れ込んだ。


コウヤは怪獣の暴れた跡へ行き、まずは逃げようとしていた不審者をとっちめ、その後リリスの状態を確かめるために適当な建物の陰へと移り、ヴァリアントから降りたのだった。


〈怪獣〉から助け出したリリスは怪獣の体液やらにまみれた一糸纏わぬ姿であり、これはまずいと思って、取りあえず着ていた防護ジャケットを被せたもののますますアングラな感じになってしまい、ややコウヤは赤面した。


なにはともあれ一息つけた。大の字になり寝転がるコウヤ。



深呼吸を数回した後、そこでようやく焦げ臭さに気がつき、その原因が気になった。


煙と火の粉が漂う中、コウヤは周囲を見渡した。



見ると、破壊され所々小火も出ている物もある建物、ボロボロに打ち砕かれた道路。瓦礫に倒れ伏したままの軍警察のヴァリアント…等々。



無惨な光景が広がっていた。



ーー少女一人の行状としては重すぎる。



コウヤはそう思った。



なによりその中には自分の戦闘で破壊された物も多々含まれている。




そして遠くから聞こえてきた鳴り響くサイレン。どうやら軍警察の応援らしい。


この場を見つかったらどうなるか。



呆然が愕然となり戦慄へと変わる。



…しばしの熟考。


とりあえず縛り上げたオッサンは転がしておくとして、



「ばれる前に逃げる!」




そうこうしている内にもサイレンの音は迫ってきている。


コウヤの顔には焦りから、滝のような汗が流れていた。





「…ん」


その時ぼんやりと開けられたリリスの目には、誰かがくる前に立ち去ろうと、たった今〈シロガネ〉に乗ろうとしてコクピットへ向かうコウヤの顔が映っていた。




     * * *



「なになに、“ベルデの街に大怪獣現る”…うーん、私が家で待ってる間にすごいことが起きてたんだね」


「ははは、まーな…」


冷や汗をかきながらそう取り繕うコウヤに、寝ぼけ眼のアリシアは崩しかけた今朝の新聞をバサバサとやって直している。


翌日の朝である。甚大な被害を受けた街は日常を取り戻したとは言い難いが、コウヤとアリシアは少なくともいつもの日常に戻っていた。


今日は週末。最終日の学校があるので、開店前の〈猫の足跡亭〉の一階で朝食を取っていたのだ。


そんな時、がたんと開かれたドアの鈴が鳴り、


「あっ、おはよーリリスちゃん!」


学校の制服姿のリリスがいた。


あの後リリスの保護者であるルクレシアの元に届けた時、ルクレシアはコウヤにリリスの事を秘密にしておくように頼んだのだ。

その際交換条件というか、リリスにアリシアの友達になってくれるよう頼んだのである。



「お迎えに来てくれたのっ? すっごくうれしいよっ! ねえどうしてどうして?」


喜色満面、眠気も吹き飛んだ様子のアリシアである。


そういわれたリリスは、コウヤの方をじっと見て、


「…内緒」


そのまま隠れるようにドアの向こうへと立ったのだった。


「うーん?」


疑問を口にしつつ、残りのトーストをくわえカバンも持ったアリシア。


誰も気づかなかったが、隠れる間際、リリスのその顔が少し赤らめたものだったのは、きっと気のせいではないだろう。


「それじゃ後でね!」


「おう!」


「…ん」


新しい日常が、始まる。

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