第7話 使い捨ての命
7話も選んでいただきありがとうございます。
気分を害する恐れがあります、納得の上お読み下さい。
硬い音が響く。
ガン!ガン!と。
岩を叩く音。
何日立ったのか判らない、
日数を数える余裕もない、
異世界人はツルハシを振り下ろしていた。
手が痛い。
腕が重い。
息が荒い。
汗が目に入る。
それでも止まれない。
「手ぇ止めるな!」
怒鳴り声。
ガルドだ。
少し離れた場所で腕を組んでいる。
その目は冷たい。
異世界人は歯を食いしばる。
また振り下ろす。
ガンッ!
火花が散る。
「……チッ」
うまく当たらない。
周りを見る。
同じように掘っている人間たち。
誰も喋らない。
目も合わない。
ただ作業している。
まるで――
生きていないみたいに。
「見てんじゃねぇ」
「手動かせ!」
ガルドの声。
次の瞬間。
ドンッ!
異世界人の背中に衝撃。
蹴られた。
前につんのめる。
「余所見してる余裕あんのか?」
「それとももっと蹴られたいのか?」
異世界人は振り返る。
睨む。
だが――何も言わない。
言えば殴られる。
分かっている。
ガルドは鼻で笑う。
「その目、気に入らねぇな!」
ゆっくりと剣を抜く。
ケンジの喉元に当てる。
冷たい感触。
「死ぬか?」
軽い口調。
だが本気だ。
異世界人は目を逸らさない。
沈黙。
数秒。
ガルドはつまらなそうに剣を引いた。
「……つまらねぇな」
剣を肩に担ぐ。
「どうせすぐ壊れるんだからな」
その言葉に、異世界人の拳が震える。
だが抑える。
何も出来ない。
ガルドは他の奴隷に目を向ける。
「おい、お前!」
1人の男を指す。
細い体。
痩せこけている。
「運べ」
岩を指す。
大きい。
1人じゃ無理な大きさ。
男は何も言わず持ち上げようとする。
持てない。
震える。
ガルドが近づく。
「何やってんだ!」
ドンッ
蹴り飛ばす。
男は倒れる。
「立て!」
動かない。
もう限界だ。
ガルドはため息をつく。
「使えねぇな」
剣を振る。
一瞬だった。
血が勢いよく飛ぶ。
男は動かなくなった。
周りは見ない。
誰も止めない。
止められない。
異世界人の視界が揺れる。
(……なんだよ、これ…)
拳を強く握る!
だが何も出来ない。
ガルドは異世界人を見る。
ニヤリと笑う。
「次はお前か?」
異世界人はガルドを睨む。
その目に。
ほんの少しだけ――
楽しそうな色。
ガルドは笑う。
「いいねぇ、その顔」
ゆっくり近づく。
「壊し甲斐がある」
その時。
バドの声が響く。
「おいガルド」
少し離れた場所。
バドが手を振っている。
「そろそろ戻るぞ」
ガルドは舌打ちする。
「チッ…」
異世界人を見下ろす。
「運がいいな」
そう言って背を向ける。
バドの元へ歩いていく。
異世界人はその背中を睨む。
息が荒い。
(……必ず殺す!)
心の奥で、小さく思う。
だが現実は違う。
武器もない。
力もない。
ただの奴隷。
空を見上げる。
青い空。
変わらない。
(……なんで俺が……)
その時。
ガルドの声が聞こえた。
「なぁバド」
少し離れた場所。
二人の会話。
「例の鉱石、どうする?」
異世界人の耳が反応する。
バドがニヤリと笑う。
「決まってんだろ」
声を落とす。
だが聞こえる。
「異世界人に被せる」
異世界人の目が見開く。
「異世界人だ」
バドは続ける。
「どうなろうが知ったこっちゃねぇ」
ガルドが笑う。
「違ぇねぇ」
異世界人の拳が震える。
(……は?)
理解する。
全部。
バド達は鉱石を盗むつもり。
しかも。
(……俺に罪被せる気だ)
怒りが湧く。
だが同時に。
冷たいものも流れる。
(……殺される)
このままじゃ。
確実に。
その時。
ガルドがこっちを見る。
目が合う。
ニヤリと笑う。
気付かれてる。
聞いていたことに。
ガルドはゆっくりと口を動かす。
声は出さない。
だが分かる。
「逃げてみろ」
背筋が冷える。
その瞬間。
異世界人は決めた。
(……逃げる)
7話も読んでいただきありがとうございます。
次から少し展開が動きます、よろしくお願い致します。




