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月影の双狼と黒翼―誇り高き2匹の狼と、黒翼の守護者―  作者: アル治
侵す者、守る黒牙

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第44話  重なる軌跡

いつも読んでいただきありがとうございます。

風が、戻ってくる。

荒れていた呼吸が。

少しずつ、整っていく。

アルビスは立っていた。

 

血が流れている。

腕も、脚も重い。

それでも。

 

目だけは、まだ死んでいない。


ノワールが隣にいる。

体で息をしている。

だが、さっきとは違う。

揺れていない。

視線が、定まっている。


ノクスも同じ。

動きはまだ鈍い。

だが。

 

“見ている”

 

完全に。

3つの影。

再び並ぶ。

魔族がそれを見る。

わずかに、首を傾ける。

「……まだやるか?」

淡々と。

興味は薄い。

だが――

 

完全には無視していない。


アルビスが、息を吐く。

ゆっくりと。

集中しろ……

(……焦るな)

 

(合わせろ)

視線を、ほんの一瞬だけ動かす。

 

ノワール。

 

ノクス。

言葉はない。

けど――伝わる。

次の瞬間。

 

3つが動く。

今度は――同時じゃない。


アルビスが先。

正面から踏み込む。

刃が走る。

真っ直ぐ。

迷いなく。

魔族が受ける。

軽く。流す。

その瞬間。

 

ノワールが動く。

遅れて。

横から。

さきほどと、タイミングが違う、

今回は、

“間”がある。

魔族の視線が、わずかに動く。

その一瞬。

 

牙が届く。

浅い。

当たった。


「……ほう」

初めて。

わずかな反応。


ノクスが動く。

さらに遅れて。

死角から。

今度は――完全に入る。

肩。

血が走る。

魔族が1歩引く。

ほんの僅か。

だが――確かに届いた。


アルビスが踏み込む。

逃がさない。

連撃。

流れを切らせない。

刃が走る。

角度を変え。

速度を変え。

繋ぐ。

魔族が剣筋をさばく。

だが――

 

さっきまでとは違う。

完全ではない。

「……なるほど」

小さく呟く。

目が、少しだけ細くなる。


ノワールが再び飛び込む。

今度は低く。

足を狙う。

魔族が跳ぶ。

その着地に――

 

ノクス。

影のように。

だが、さっきより速い。

爪がかすめる。

血が落ちる。


アルビスが詰める。

ゼロ距離。

刃を振るが、

防がれる。

だが――

押す。押し込む!

一瞬。

完全な均衡。

力と力。

技と技。

ぶつかり合う。

そして。

ほんの僅か。

 

アルビスが――押す。

魔族の足が、下がる。

1歩。

静寂。

その1歩が。

すべてを変える。

ノワールが吠える。

今度は迷いがない。

ノクスが低く唸る。

圧が増す。

3つの流れが、重なる。

ズレない。

噛み合う。

魔族が、それを受ける。

だが。

初めて。

“受けに回る”

「……面白い」

声に、わずかな熱。

アルビスが踏み込む。

迷いはない。

ただ、繋ぐ。

(……いける)

確信。

まだ勝っていないが

届いている。

風が強くなる。

木々が揺れる。

血の匂いが広がる。

戦いは、まだ続く。

 


流れは――変わった。

44話も読んでいただきありがとうございます。

後少しお付き合いください。

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