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月影の双狼と黒翼―誇り高き2匹の狼と、黒翼の守護者―  作者: アル治
侵す者、守る黒牙

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第41話  牙の継承

いつも読んでいただきありがとうございます。

風が、揺れる。

血の匂いが、濃くなる。

2人が、向き合う。

距離は――近い。

だが、さっきまでとは違う。

カイロスの目が変わっている。

油断はない。

 

完全に――“狩る側の目”。

アルビスも動かない。

呼吸は整っている。

だが。

 

その背に、微かに揺れるもの。

黒。

まだ完全ではない“翼”。


「……面白い」

カイロスが呟く。

首元の血を拭う。

深い傷。

だが、致命ではない。


「……それでは足りない」

踏み込む。速い。

今までで一番。

アルビスが迎え撃つ。

刃がぶつかる。

衝撃。重い。

先ほどまでとは違う。

カイロスが本気で押しに来ている。


連撃。止まらない。

圧。力。技。

すべてが噛み合う。

アルビスが後退する。

1歩……半歩。

だが、崩れない。

(……来る)

読み切る。

次の一撃。

カイロスの剣が振り下ろされる。

真っ直ぐ。

 

逃げ場を潰す軌道。

アルビスが――動く。

黒が、広がる。

“翼”

一瞬だけ。

だが、確かに。

軌道が変わる。

 

体が、滑るように避ける。

剣が空を裂く。

その懐へ。

入り込む。

刃が走る。

だが――

 

カイロスも対応する。

受ける。

完全ではない。

それでも致命は外す。

距離が離れる。

息が荒くなる。

2人とも。

だが、止まらない。


「……それが、お前の牙か」

カイロス笑いながら言う。

だが――警戒している。

アルビスは答えない。

ただ、構える。

その時。

後ろ。

微かな気配。


ノワール。

1歩、前に出る。

まだ揺れている。

だが。

目は戻っている。


ノクスも動く。

ゆっくりと。

だが確実に。

位置を変える。


カイロスの視線が、わずかに動く。

「……来るか」

アルビスが踏み込む。

同時に。

 

ノワールが走る。

低く。速く。

3方向。

カイロスが剣を振るう。

 

ノワールへ。

 

水平に一閃、

直撃コース。

だが。

 

アルビスが割り込む。

弾く。

軌道を逸らす。

ノワールが潜り込む。

牙が腕に食い込む。

浅い。

だが、止める。

その瞬間。

 

ノクスが動く。

影のように。

速い。

だが――ほんの僅か遅い。

カイロスが体をひねる。

完全には捉えさせない。

肩が裂ける。

 

深いが、致命ではない。

それでも。

 

流れが、変わる。

3つの攻撃。

重なる。

逃げ場が、消える。

アルビスが踏み込む。

最後の1撃。

 

迷いがない。

カイロスが迎える。

正面。全力。

ぶつかる。

その瞬間……

 

黒翼が広がる。

完全ではない。

だが――今までで一番綺麗に広がる、

軌道が“読めない”

カイロスの剣が、空を切る。

ほんの一瞬。

完全な空白。

そこに。

 

アルビスの刃。

首元へ。深く。

迷いなく。

斬る。

血が、噴き出す。

一瞬の静寂……


カイロスの体が揺れる。

崩れかける。

それでも。

 

立つ。

「……見事だ」

かすれた声。

 

血を吐きながら。

「……牙は……継がれたか」

そのまま。

崩れる。

地面に、落ちる。

動かない……

風が吹く。

 

森が、揺れる。

ノワールが低く鳴く。

ケンジの方を見る。

そして――

 

アルビスを見る。

ノクスは動かない。

ただ静かに。

その場に立つ。

アルビスは、剣を下ろす。

何も言わない。

  

後ろを見る。

1歩だけ…

ケンジの方へ。

風が、優しく吹く。

争いは終わった……



 

ように見えた……終わりではない。まだ……

41話も読んでいただきありがとうございます。

今後もよろしくお願い致します。

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