表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月影の双狼と黒翼―誇り高き2匹の狼と、黒翼の守護者―  作者: アル治
黒牙と騎士、譲れぬもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/47

第28話  ぬくもりの中で

いつも読んでいただきありがとうございます。

森の奥。

静まり返っていた。

さっきまでの血の匂いも、少しずつ薄れていく。


ケンジは、木の根元に座っていた。

短剣を握ったまま。

手は……もう震えていない。

だが。

重い。

「……」

視線が落ちる。

目に飛び込んでくる赤。

こびりついた血。

自分のものじゃない。

それが、分かる。

胸の奥が、ざわつく。

(……俺がやった…)

消えない感触。

頭から離れない。

その時。

 

ふわり、と。

何かが触れる。

「……?」

顔を上げる。

小さな狼。

子供。

じっと見ている。

警戒も、恐怖もない。

ただ、興味。

そして――


そっと、

ケンジの手に、鼻を寄せる。

血の匂いが残る手に。

「……っ」

ケンジの肩が揺れる。

嫌がらない。

避けない。

ただ、受け入れている。

もう1匹。

さらに1匹。

気付けば、周りに集まっている。

子供たち。

その奥で。

親の狼たちが見ている。

止めない。

警戒してない。

ただ――許している。

ケンジはゆっくりと手を開く。

短剣を置く。

地面に。

そして。

震えが止まった手で。

そっと、撫でる。

柔らかい毛並み。

温かい体温。

小さな命。

「……あったかいな……」

小さく、呟く。

子狼が尻尾を振る。

もう1匹が、膝に乗る。

重み。

確かな存在。

ケンジの呼吸が、少しずつ落ち着いていく。

胸のざわつきが、ほどけていく。

(可愛い)

(……守ったんだ)

さっきの光景が浮かぶ。

振り下ろされる刃。

ノワールの背中。

そして――

自分の一撃。

「……」

目を閉じる。

もう、否定しない。

怖さは消えない。

でも。

それだけじゃない。

 

守るために。

必要だった。

それも、分かっている。

ゆっくりと目を開ける。

目の前。

子狼たち。

無防備に寄ってくる。

信じている。

それだけで。

ケンジの胸に、何かが灯る。

「……守るよ!」

小さく。

誰に聞かせるでもなく。

ただ、口にする。

決意。

その時。

 

背後から気配。

アルビス。

静かに立っている。

何も言わない。

ただ、その様子を見ている。

ケンジは振り向く。

少しだけ、笑う。

「……大丈夫だ」

強がりじゃない。

アルビスはわずかに目を細める。

「そうか」

それだけ。

ノワールも近くにいる。

ケンジの横。

変わらず、静かに。

寄り添うように。

その存在だけで、十分だった。


ノクスは少し離れた場所。

森の奥を見ている。

もう、戦いはないと知っているように。


その夜。

森は穏やかだった。

火はない。

だが、寒くはない。

狼たちの中。

寄り添うように、ケンジは横になる。

子狼が隣に来る。

体を預けてくる。

温かい。

目を閉じる。

浮かぶのは、血ではない。

さっきの温もり。

小さな命。

守る理由。

それが、はっきりと形になる。

ケンジは、静かに眠りについた。

少し戦いはお休みです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ