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月影の双狼と黒翼―誇り高き2匹の狼と、黒翼の守護者―  作者: アル治
黒牙と騎士、譲れぬもの

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第21話  踏み込む者たち

いつもありがとうございます。

楽しく読んでいただけてたら幸いです。

森の奥。

静寂。

風すら、止まっている。

 

その中で――

ヴァルクは一歩、踏み出した。 

「ここか」 

低く、呟く。 

背後では兵士たちが息を潜めている。

鎧の音すら抑えられている。 

だが――

 

「……妙だな」 

ヴァルクの目が細くなる。 

「静かすぎる」

 

バルカスが喉を鳴らす。

「団長……やはり、報告通り――」

 

「黙れ」

 

短く遮られる。 

沈黙。

 

セレナだけが、わずかに視線を動かす。

森の奥。

何かを探るように。 

ヴァルクは足を止める。 

「……いるな」 

その一言で、空気が変わる。

 

兵士たちが息を呑む。 

恐怖が、じわりと広がる。 

その時――

 

風が、動いた。 

一瞬。 

それだけ。 

だが。

 

「――っ!?」 

1人の兵士が、声を漏らす。 

視線の先。 

木の影。 

“何か”がいた。 

気付いた時には―― 

消えている。 

「な、なんだ今の……」 

動揺が走る。 

だがヴァルクは動かない。 

むしろ、わずかに口角を上げた。 

「……獣が」 

剣を抜く。 

静かに。 

「面白い」 

その言葉は、誰に向けたものでもない。 

ただ―― 

“狩る側”の声音だった。

その頃。

 

森のさらに奥。 

ケンジは短剣を握っていた。 

手に馴染む。

軽い。 

だが―― 

「……まだだ」 

自分に言い聞かせる。 

呼吸を整える。 

その隣。 

アルビスが立つ。 

静かに。 

視線は、前。 

「来た」 

短く。 

ケンジの背筋が伸びる。

 

ノワールが1歩前に出る。 

影のように。

 

ノクスは動かない。 

ただ、そこにいる。 

それだけで―― 

空気が張り詰める。 

さらに奥。

 

狼たちが並ぶ。 

吠えない。 

動かない。 

ただ、待つ。 

その姿は、まるで 

“戦場”そのものだった。


再び、森の入口側。 

兵士の一人が叫ぶ。 

「右だ!!」 

振り向く。

 

遅い。 

何かが横切る。 

「ぐあっ――!?」 

血が舞う。 

倒れる。 

「敵襲!!」

 

声が上がる。 

隊列が乱れる。 

見えない。 

どこにいるか分からない。 

恐怖だけが広がる。

 

ヴァルクは動かない。 

ただ観察している。 

「……出来るな」 

低く。 

理解する。 

「かなり統率されている」 

その目が細くなる。 

興味。 

そして――

 

わずかな高揚。 

「殺し甲斐がある」 

1歩、踏み出す。 

その瞬間。 

前方。 

気配。  

はっきりと。 

“そこにいる” 

ヴァルクは止まる。 

そして、 

見据える。

 

森の奥。 

その先に―― 

アルビス。 

ケンジ。 

ノワール。 

そして。 

ノクス。 

視線が、交わる。

 

距離はまだある。 

だが―― 

理解した。 

「……出来るな」 

ヴァルクが呟く。

 

剣を構える。 

アルビスは1歩、前に出る。 

ケンジの前へ。 

守るように。 

だが、その目は冷たい。 

「ここから先は」 

静かに言う。 

「通さない」 

空気が、震える。

 

兵士たちが後ずさる。 

圧。 

見えない圧力。 

ヴァルクは笑う。 

「獣をかばうのか?」

「人間じゃないからか」 

その声には、確かな興奮があった。 

「そういうのは嫌いじゃない」 

1歩。 

また1歩。 

距離を詰める。

 

そして―― 

止まる。 

「……殺るか」 

誰に言うでもなく。 

だが、それで十分だった。

兵士たちが動く。

 

狼たちが動く。

 

ノワールが踏み出す。

 

ケンジが息を呑む。

 

アルビスが構える。

 

ノクスが――

 

動いた。

 

次の瞬間。 

戦いが、始まる。

21話読んでいただきありがとうございます。

テンポ悪かったらごめんなさい。

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