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月影の双狼と黒翼―誇り高き2匹の狼と、黒翼の守護者―  作者: アル治
黒翼に救われた者達

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第18話 届かない牙

いつも読んでいただきありがとうございます。今後もよろしくお願い致します。

森の奥。

足音が止まる。

バドは立っていた。

周囲を見渡す。

「……チッ、やっぱり普通じゃねぇな」

静かすぎる。

気配がない。

いや――

「あるな」

気付く。

遅れて。

前方。

空き地。

そこに、立っている影。

ケンジ。

その後ろに――

黒髪の女。

アルビス。

さらに左右に、

2匹の狼。

バドは口角を上げる。

「……当たりか」

「ゴミも生きてたのか」

剣を抜く。

「ガルドの野郎、死んだか」

笑う。

だが目は笑っていない。

「ま、いい。全部片付けるか」

「女も居るし」

バドがニヤける、

1歩踏み出す。

空気が張り詰める。

ケンジも前に出る。

枝を握る。

頼りない武器。

だが――

引かない。

バドが笑う。

「それでやる気かよ」

「ゴミにはゴミがよく似合うな!」

次の瞬間。

踏み込む。

速い。

ケンジは動く。

避ける。

ギリギリ。

風が裂く。

地面を蹴る。

距離を取る。

(速い……!)

分かっていた。

だが――

実際に相対すると違う。

重い。

鋭い。

殺し慣れている動き。

バドが追う。

間合いを詰める。

横薙ぎ。

ケンジは体を捻る。

避ける。

だが――

遅い。

腕を切られる。

血が飛ぶ。

「っ……!」

止まらない。

次。

突き。

避ける。

地面を転がる。

立つ。

構える。

息が荒い。

バドが笑う。

「避けるだけか?」

「雑魚が!」

嫌な笑い方

余裕。

完全に上だ。

ケンジは歯を食いしばる。

(……まだだ)

踏み込む。

自分から。

振る。

遅い。

読まれている。

弾かれる。

衝撃。

腕が痺れる。

バドが振り上げる。

「終わりだ」

振り下ろし。

ケンジは横に跳ぶ。

間に合わない。

肩に入る。

吹き飛ぶ。

地面に叩きつけられる。

息が止まる。

「がっ……!」

視界が揺れる。

立てない。

足に力が入らない。

バドが近づく。

ゆっくりと。

余裕の歩き。

「やっぱ雑魚だな」

剣を肩に担ぐ。

「女なら楽しめたのによ」

「そっちの女で楽しませてもらうけど」

吐き捨てる。

ケンジは歯を食いしばる。

手をつく。

立とうとする。

動かない。

(……ここまでか)

一瞬、そんな考えがよぎる。

その時。

視界の端。

黒い影。

ノワール。

静かに動いていた。

ケンジとバドの間。

その位置へ。

バドが気付く。

「あ?」

ノワールが踏み込む。

速い。

バドが反応する。

剣を振る。

ノワールは避ける。

完全に。

だが――

一瞬だけ、踏み込みが浅い。

バドの剣がかすめる。

血が舞う。

「……!」

ノワールが1歩退く。

傷。

浅い。

だが確実に入った。

バドが笑う。

「なんだ、獣かよ」

「こっちも楽勝だな」

油断。

明確な。

「まとめて――」

言い終わる前。

ノワールが消える。

次の瞬間。

懐。

内側。

バドの目が見開かれる。

速い。

理解が遅れる。

ノワールの牙が――

喉に届く。

「――は?」

音にならない声。

そのまま。

噛み切る。

肉が裂ける音。

血が溢れる。

バドの体が崩れる。

力なく。

地面へ。

音を立てて倒れる。

静寂。

ケンジはそれを見る。

息も忘れて。

ノワールはゆっくりと離れる。

血が滴る。

振り払うように頭を振る。

その時。

低い声。

ノクス。

少し離れた位置。

そこに立っている。

周囲には、別の複数の死体。

人間。

すでに動かない。

ノクスが言うように唸る。

短く。

鋭く。

そして、

鼻をならす、

ケンジを見る。

一瞬だけ。

冷たい目。

そして。

興味を失ったように背を向ける。

森の奥へ消える。

ケンジは息を吐く。

「情けない……」

体が震える。

生きている。

ギリギリで。

ノワールがこちらを見る。

何も言わない。

ただ――

そこにいる。

アルビスが近づく。

倒れたバドを見る。

一瞥。

興味はない。

ケンジを見る。

「立て」

短く。

ケンジは苦笑する。

「……すみません」

震える足で立つ。

ふらつく。

それでも――倒れない。

アルビスは頷く。

それだけ。

「ならいい」

ケンジはバドの死体を見る。

そして、小さく呟く。

「……終わった」

だが。

アルビスは言う。

「始まりだ」

その言葉に、

空気がまた少しだけ重くなる。

森は静かだ。

だが――

何かが、まだ動いている。

18話も読んでいただきありがとうございます。

次もよろしくお願い致します。

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