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8話 特別な場所

 夏休みもあと2週間を切った。

 私達3人は、リリスの家を離れ、自分達の家に帰ってきていた。

 リリスやカリアさんは残念そうにしつつ、また学園で、と声をかけてもらった。

 街並みを坂の上から眺めて、


 「いやー!久しぶりの街!いいねぇ!」


 カイトはうんうんと頷き、


 「だな!早速だが、どうするんだ?」


 私は少し頭を捻り、


 「まずは、村長のところに行こうよ。それから、秘密基地ね」


 「お、りょーかーい」


 ソラの、普段とは違うのんびりした返しを聞いて、私達は村長の住む家後足を運んだ。





 「…こんにちはー!」


 やがて、一人暮らしがちょうど出来そうなログハウスに着いた。

 私はベルを鳴らした後、声をかける。

 しばらくすると、どたどたと音がして、扉が開く。


 「はいはい!どちら様…って!ミム!ソラもカイトも帰ってきてたのね!」


 「ええ、村長。お久しぶりです」


 ソラが頭を下げる。

 白髪混じりの髪に、優しげな金色の瞳。

 この人は、先代のリストロム領主の妹なのだ。今はこうして、街の中で"村長"という役目についていて、私達のような孤児を積極的に引き取り、育てている。

 一言で言うなら、とてつもなくいい人である。


 「さっ、入ってちょうだい!お茶でもいれるわ」


 「ありがとうございます」


 荷物を指定された場所に置いて、リビングの椅子に腰掛ける。

 相変わらず、綺麗に保たれている。

 猫も多い。むしろ増えてる気がするのは私だけか…?


 数分程して、紅茶が置かれる。

 村長は近くの椅子に腰掛け、


 「よく無事で帰ってきてくれたわね…!嬉しいわ!」


 「村長…私達そんなヤワに見えます?」


 「子供はいつだって、親からすれば弱く見えるのよ」


 そんなもんなのか…?

 首を傾げていると、村長はカイトの方を向き、


 「カイト。剣術はどう?うまくいってるかしら?」


 「っ! ああ!今は能力も制御できてるし、剣も上手くなったと自負してるぞ!」


 「ミムと戦った場合は?」


 村長が間髪入れずに聞く。

 カイトは一瞬、向かい側にいる私を見た後、


 「村長…俺がミムという絶対的存在に勝てると思ってるのか…?」


 村長はケラケラ笑いながら、


 「あら。まだミムに勝てないの?」


 「いやぁ…能力OFFなら全然勝てるが…」


 村長はその先の言葉は聞かなかった。ただ、私の方を見て、


 「そう。制御できるとはいえ、やっぱり強過ぎるのね…」


 とだけ、言った。

 村長は私の能力を知って尚、怖がらなかった数少ない人。

 リリスもだが、〈鑑定〉系統の能力は心が強い場合が多い。

 この人は本当、優しいんだな。


 しばらく無言でお茶を堪能した後、ソラが口を開く。


 「村長。私ら、夏休み終わりまではここに居ようと思ってるの。いても大丈夫?」


 恐る恐る…と言った聞き方をすると、村長は目を見開き、


 「何言ってるの!あの家はずっと、あなた達の物よ!鍵はここにあるから、好きに出入りしなさいな」


 「っ!ありがとう村長!」


 ソラが珍しく感謝の意を見せた。

 一番まともなソラが鍵を受け取り、亜空間にしまう。これは、【次元系統魔法 亜空間】という魔法だ。無詠唱の習得が当たり前な魔法として有名で、便利さもある、完璧なものだ。


 「じゃあ村長!鍵ありがとうね!」


 「えぇ。また来なさいな」


 手を振りかえし、「にゃん」と鳴く猫を軽く撫でる。

 そして私達は家へと歩みを進めた。





 「ふぃー!久々の家だぁ!」


 「あ"〜…この後どうする?もう行くか?」


 荷物を置いた私は、カイトの言葉に頷き、


 「そうだね。ソラ、いい?」


 聞くと、ソラはキッチンの諸々を確認しながら、


 「なんで私に聞くの。いいわよ、行きましょう!」


 ソラが一番最初に扉に手をかける。

 続いてカイト、私が出て、扉を閉め鍵をかける。


 そして、裏手にある森に入る。

 本来なら魔物が出るぐらい暗いのだが、気配は一切ない。

 暫く進み、木々が生えている空間で止まる。そこは、人間の目に見れば、普通の森の一部。でも、私達3人と、特殊な精霊や妖精には、違って見える。


 「邪精霊。ここ守っててね」


 召喚して言うと、彼女は


 「はーい!ご主人様、楽しんできてください!」


 ヒラヒラと手を振られた後、私達はその空間に向かって、右手を伸ばす。

 そして、これでもかと、魔力をそこに注ぎ込む。

 

 「…」


 一瞬にして、瞼の先に光を感じた。


 「…! 久々だな、ここも」


 私達の眼下にあるのは、ぽっかりと空いた空間に、色とりどりの花が咲き誇り、右手側には小さな滝と泉のある、不思議な空間。


 「まずはお祈りしないとね」


 ソラの歩みを着いていき、底の見えないくらいに綺麗な泉の前で、膝をつく。

 指輪を外してポケットにしまい、祈りを捧げる形を取る。


 「…」


 大量の魔力を泉に注ぐ。

 それは魔法を使うでもなく、ただただ、泉の中に注ぎ込んでいく。


 数分して、私達3人は形を解いた。と同時に、どさりと音がする。その方向を見ると、草むらに寝っ転がっているカイト。どうやら、眠っているらしい。

 いつの間にか、ソラも、同じように目を瞑り、寝息を立てている。


 「…」


 やがて、私にも眠気が襲ってきた。

 抵抗する気力なんてないので、素直にそれに身を任せ、草むらに転がる。即座に、私の体は眠りについた。

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