9話 嫌な予感
「…」
ぼうっとする視界。
真っ白で、霧がかかっているような…ただ単に白いのか、よくわからない。
少しずつ、その空間に物が作られていく。私はそれをじっと見る。
やがて形作られた…と、思えば。
「…?」
私の体はありえないほどふかふかで温かいソファーの上に寝かされ、頭は、誰かの膝に置かれ、撫でられている。
…まあ、いつも通りだ。
「…♪」
"誰か"が誰なのか、それは私達にとっては瑣末な問いだ。
どうせあの人なのだから。
☆
「ん…」
目が覚める。
辺りを見てみると、あの家の、私のベッドの上。
久々にあの夢を見たものだ。
「…ふたりとも、はやぃな…っ」
のびをして、階段を降りる。
ソラとカイトは、降りてきた私を見て、
「おはよ、ミム」
「ミム、おはよ。今日から二学期だな」
「うん、そうだね」
あの不思議空間には、一度行ったきりだ。あそこに長居していると、最悪居心地が良すぎて出ていきたくなくなるのだ。
そして。今日からは二学期。
普通に朝食を食べて着替え、学園へ行く。
学園に着けば、自ずとリリスとも会う。
目が合った彼女はこちらに走ってきて、
「おはようございますお三方!お元気でしたか?」
なんだか少し魔力量が多くなったような気がする。
私は彼女の問いに頷き、
「勿論。3人とも元気だったよ。リリスも、魔力増えたんじゃない?」
聞いてみると、彼女は驚き、
「そっ、そうなんです…!魔物退治で増えたんじゃないかって、父様が…!」
「へぇ。よかったじゃない。魔法の幅も広がるわね」
「ええ! …あ、そうだ。今日はこの後、朝礼があるそうですよ。何か、重要な話があるんだとか」
「…重要な?」
なんだか嫌な予感しかしないが…。
☆
「おはようございます皆さん!元気な顔を見れて何よりです」
数十分後、私達は講堂に来ていた。
教壇には、入学式で会ったっきりな学長と、何故かいるジェイン様。
…嫌な予感は、当たりそうだ。
「さて皆さん!今日は、リストロム領主の、ジェイン様から、とある発表があります。よく聞くように!」
ハキハキした女性の声が響いた後、声を遠くに届ける魔法を発動させたジェインさんは前に出てきて、一つ咳をする。
「生徒の皆さん。我が王国では、国立の能力者育成学園でのみ、能力者の強さをランク付けしていました。…ですがこの度、陛下より、公立の学園全てにお言葉がありました」
「…」
「公立の学園でも、能力者のランク付けをするように、との事でした」
☆
「はぁ"〜…」
ジェイン様のとんでも発表と授業を終え、現在昼食時間。
大きなため息をついて、机に突っ伏したカイトを見て、ソラが肩をぽんぽん叩く。
「にしても、ランクの導入なんてね…」
「あぁ…魔物としか戦ってこなかったんだから、力加減どうすりゃいいんだろうな…」
沈んだ声で言うカイトに、私も頷き、
「しかも、トーナメント戦なんでしょ?何処かで絶対当たるじゃん…」
私がそれを言った途端、ソラやカイト、リリスも顔を上げ、
「それだけは大丈夫よ。私は棄権する用意があるわ」
「あぁ。俺もミムと当たったら棄権するわ」
「申し訳ながら、私も流石に棄権致します…」
え…そんなに?リミッターは外さないつもりだから、全然カイトでも勝てるはずだけど…?
カイトは大きくため息をついて、
「お前な…?自分の能力もう一回見直したらどうだ?」
「??」
首を傾げると、ソラもため息をついて、
「そうよ。邪精霊がいる奴に喧嘩売るバカは殆どいないわ。私も指輪を外さないと勝てる気しないし…」
「その指輪は、いつか「本気を出す」って決めた相手と戦う時にしか外さないって約束でしょ?今回は外さないから」
私が言うと、カイトは、
「じゃあ、この大会では本気で戦わないのか?」
私は頷き、
「うん。邪精霊と魔法で何とかするよ。サングラスも指輪も外さない」
私は一呼吸置いて、
「…徹底的に、手を抜いて勝つよ」
○不必要であろう解説
学長は物語で出てきた村長の姉であり、能力〈状況把握〉でサポートタイプ。
村長、学長共にジェインの叔母に当たります。が、見た目年齢は40歳くらいでかなり若い。(という設定です)




