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5話 当主との面会

 カラカラと鳴る音に耳を傾けながら、馬車に揺られること数十分。

 街から離れ、ぼんやりと外を眺めていた。家こそポツポツとあるが、殆どは畑か野原、って感じだ。


 「妹様!着きますよ!」


 御者の声と共に、リリスは笑顔になり、窓を開ける。

 今の季節にしては涼しげな風が流れ込む中、サングラスを支えつつ、窓から顔を出してみる。


 「っ! おお…!」


 「あの屋敷が、私の住む家になります!」


 白い壁と柱で作られた、如何にもなデザイン。結界やその他能力の気配もする。


 「そういや、ミムのサングラスとか、私達の指輪って大丈夫なの?」


 ソラが聞くと、リリスは頷いて、


 「はい!許可は取ってあります!…そもそも、その指輪は、あなた方の生命線でもあるはずですから」


 「っ!」


 リリスは顔を少し下げて、音量も落とす。


 「私の〈鑑定〉では、他人の年齢や弱点もわかる。その中には当然、"隠している本当の自分"が弱点である場合だってありますからね」


 〈鑑定〉も便利だが、人の隠しておきたいものを嫌でも見てしまう、という点では、本人も苦しんでいそうだな。

 私はリリスの肩に手を置いて、


 「でも、リリスは例え見てしまっても、言わないでしょ?私達は信頼してるから」


 言うと、リリスの顔は上がり、


 「はい!誰にも言いませんので、大丈夫です!」


 肩に置いた手を握られ、言われる。

 それに、思わず「ふふっ」と笑ってしまう。

 我ながら、良い友人を持ったものだ。





 「着きました!ようこそ、我が家へ!」


 「はぇ〜っ…」


 デカ過ぎて、言葉が出ない。

 パーティーでも出来そうな吹き抜けの広間に、階段が両脇にある。


 リリスはそれを指差し、


 「あそこから上に上がります。2階部分は、客間や仕事場、私達の個人部屋になります」


 辺境伯ってすごい(小並感)。

 天井についているシャンデリアとか、周りの彫刻とか、気になるものが多過ぎて、話があんまり入って来ない…。


 リリスは呆気に取られる私達を見て、


 「ふふっ。皆さん、驚いてくれて何よりです!では、早速なんですが…」


 「? 何かするの?」


 ソラが聞くと、リリスはまた顔が沈み、


 「魔物討伐の前に、一度父様と顔を合わせていただきたく…その……父様からの頼みでして…」


 「はい…?」


 え〜っとつまり?現当主様と会えと? 一般人が?

 ソラが身を乗り出し、


 「まっ、そうよね。外じゃなくて中で狩るんだし、どんな奴か見ておきたいわよね。いいわよ、会うくらい」


 ソラはもう…肝が座り過ぎだよ…。

 あの時(・・・)も、最初に能力でなんとかしてみるって言ったのソラだったし…。

 まあでも、危険度チェックみたいなものだもんね。


 「わかった。行こうか」


 カイトも頷くと、リリスは私達の前に来て、


 「では、ご案内いたします!」





 「ここです」


 綺麗な彫刻の彫られた、木製のドア。

 リリスが3回ノックをすると、中からくぐもった男性の声が返ってきた。

 リリスは、


 「お父様。昨日言っていた、3人が来ました」


 すると、中から、「入ってくれ」と返ってきた。

 リリスはこちらを向いて、ウィンクをした後、扉を開けた。


 「いらっしゃい。よく来たね」


 濃い紫色の髪をして、茶色い瞳の、優しげな男性が出迎える。

 男性が椅子から立ち上がり、


 「俺は領主、ジェイン・リストロムだ。そこに座ってくれ。リリスもだ」


 「はい!父様!」


 ソファーに腰掛け、右側に私とリリス、左側にソラとカイトが座る。

 前側にあった椅子にジェインさんが座り、


 「まず。リリスと仲良くしてくれてありがとうな」


 「…へっ?!」


 驚いた。リリスの事について言及されるなんて…。

 私は手を横に振って、


 「いやいや!私達は何もしてません!」


 事実、何もしてないのである。

 友人になりたいと言って来たのはリリスだし、私達は一切関わるつもりもなかった。

 しかし、ジェインさんは笑顔を浮かべ、


 「昔から、〈鑑定〉という能力のせいで、姉や兄に迷惑をかけてばかりだと、自分を嘆いていたんだ。そんなリリスが、心強い友達ができたと言ってくれた時のあの嬉しさは!心が軽くなるのを感じたよ!」


 リリスの顔が真っ赤に染まり、下を向く。

 能力による差別も王都となれば増えていく。そんな中で、〈鑑定〉という戦えない能力を持つリリスは、私達よりもずっと苦労してきたんだろう。そしてそれは、家族もだ。

 ジェインさんは優しい笑みを浮かべながら、私の方を向いて、


 「これからは、うちの領地内で魔物を狩るんだろう?リリスの姉の、カリアを説明役として派遣する。頼んだよ」


 「はい!ありがとうございます!」


 これからは、ずっと狩りか。

 正体だけは見られないよう、手加減して狩るとしよう。

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