4話 夏休み
「はぁ"ーー…」
大きなため息が、教室内に響く。
今日は、学園の一学期の期末試験最終日。
皆が皆、日頃のストレスの一つであるテストが終わり、意気消沈している。
カイトはぐったりとしながら、テスト用紙を私の前に出し、
「ミム〜…この問題なんなんだ〜?」
「どれ…?あぁそれ…」
剣技と能力バカなカイトは、魔術関係のテストにめっぽう弱い。
私とソラは魔法も使うが、まあ…適材適所だな。
私は問題を指差し、
「まず、この世界における"四大主属性"ってのが、火、風、水、土。これはわかるでしょ?」
「ああ」
「それで、この問題の、火属性を強くする、また火属性を弱くする属性、ってのは…」
火は風によって火力を上げられる。基本火力が高い方が勝つので、水属性には負けることもあれば勝つこともある。
そんな中で、火属性を弱めるのは土属性だ。弱めるというよりは、無効化に近い。
とまあそんなことを説明していると、ソラから肩を叩かれ、
「一度、食堂にでも行かない?お腹減ったのよ〜…」
「そっか。もうそんな時間…」
時計を見ると、もう12時を過ぎていた。テストの時はテストだけやって終わりなので、もう教室にいる人は私達だけだ。
ふと、扉が開く。
「お三方!もし良ければ、共に昼食にしませんか?!」
明るい声でいうリリス。
教室は違うが、あの日からずっとこんな風に接してくれている。
いつもいつも明るい声で話してくれて、かなりの癒しになる。
「リリス!いいね、行こうか!」
「ちょうど行かないかって話してたの。いいタイミングね!」
「それはよかったです!では行きましょう!」
☆
「いただきまーす!」
皿に盛られた、様々な料理。
私が頼んだのはミートソーススパゲッティだ。
フォークに巻きつけて、口に入れれば、トマトの少しの酸味と肉にある塩味が広がる…。
「相変わらず、おいっしい…!」
ビーフシチューを食べていたソラは顔を上げて、
「そうね。本当に美味しいわ…!」
しばらくの間、4人で料理を堪能していると、ふと、リリスが顔を上げて、
「お三方は、冒険者登録はお済みなんですか?」
私は首を軽く傾げた後、ふるふると横に振り、
「ううん。3人ともしてないの。時間がなくてね〜」
そう言うと、リリスの顔が輝き、
「でしたら!テストも終わって、夏休み期間に入りましたら、私の家に来て、一緒に魔物討伐なんてのはどうです?」
「っ!いいの…?」
辺境伯の家なんて、平民はもっての外。入れるなんて人生単位であるかないかだ。
リリスはこくりと頷き、
「いいのです!何せ、家近くの森にも魔物はいますので…〈鑑定〉では弱点はわかっても倒せないんです。魔法だけでは心許ないですし…」
それは、個人技かつ助けるタイプの能力固有の悩みだな…。
ソラは言わずもがな、宝石から剣を作れるし、カイトは元から剣を使って戦う。
私もまあ、あの子がいる。
その点、リリスは1人じゃ戦いには向かない。
かと言って、私達は魔物の弱点がわかる訳じゃない。
いわゆるWin-Winの関係と言う奴だ。
「いいよ、リリス!冒険者登録をしてからになるけど、大丈夫?」
リリスは顔を輝かせ、
「ええ!良ければ、馬車で連れて行きますよ!姉様や父様にも、心強い友達ができたって、紹介したいです!」
父様…もとい、現リストロム領主様か…。
私達3人は苦笑いを浮かべ、
「ま、まあ!本格的な冒険者業の練習と思いましょ!」
ソラが言うと、カイトも頷く。
「そうだな。…夏休み期間は、ずっとリリスの家か?」
聞くと、リリスは
「いえいえ!それではあなた方も締め付けられてしまいます。帰りたいと言っていただければ、お送りしますよ」
「っ! そう。ありがとう、リリス」
村長に一度も顔を見せないのは、流石に恩を仇で返しちゃうし。
リリスは胸の前で手を合わせ、
「では、約束成立ですね!1週間後、ギルドで待ち合わせにしましょう!楽しみです!」
私達3人も顔を合わせた後、
「そうだね!楽しみにしてるよ!」
そんなこんなで、1週間後。
リストロム領内のギルドへ、私達は足を運んだ。
中は木で出来た温かみのある作りで、前の方には受付らしき場所と、受付嬢、と言えばいいのかな?制服を着た女性が何人かいる。男性もいるようだ。
私達は受付に近づく。すると、本を読んでいた女性が顔を上げて、
「こんにちは。本日は何用でしょうか?」
明るい声でかけられた質問に、私は自分を左手で、ソラとカイトを右手で指差し、
「私達3人とも、冒険者登録をしに来たのですが…」
恐る恐る言うと、受付の人は笑顔を浮かべ、
「ふむ、登録ですね。でしたらまず、この紙に名前と現時点での年齢、使う武器、学生や何か他の職業をしている場合は、それも記入をお願いします」
「わかりました。ありがとうございます」
お礼をして、差し出された紙を見る。
なんとなく目を通した後、2人にも渡して、それぞれ、近くの机で書く。
そういや、戦う時はほぼあの子と魔法頼りで、武器なんて使ってこなかったな。なら空欄でいいか。
…で、副業は…まあ学生だし、学生って書いとくか。
数分程して書き終わり、受付に出す。
確認をした後、こくりと頷き、
「はい、大丈夫ですね。では、このカードを」
出されたのは、銅色をしたカード。"F"と書いてある。
「これが、あなた方の冒険者カードになります。ランクは一番下がF、最高でSSランクです」
「ほう…」
ソラはカードを掲げた後、
「これの空いてるところに名前を書く感じですか?」
「ええ。それは、消えてしまうのを防ぐ為に、彫っていれます。私達の方でいれられますが、どうしますか?」
ソラは少し悩んだ後、
「いや、自分でやりますので、大丈夫です」
受付の人は少し驚いた後、
「そうですか。では、軽い説明に入らせていただきます」
受付の人は軽く咳払いをした後、
「まず。冒険者とは、この世界に溢れる魔物を狩り、その素材をお金に変えて生活をしています。ですが、冒険者活動は、全てが自己責任。心優しき人が助けてくれるかもしれませんが、基本は全て自分に来ます」
ほう。まあ確かに、変な事件に巻き込まれたとかならまだしも、自分から首を突っ込んだのまでギルドが責任を取るってのは、冒険者じゃなく、子供の面倒を見てるって感じだし、妥当だな。
「そして。先程言いましたが、ランクはFからSSまで、8個あります。受けられる依頼は同じランクと、その二つ上のランクまでです。また、もし仮にそれ以上のランクの魔物を狩って来た場合や、依頼としてあったものを受けずに完了してしまった場合、倒した魔物を持って来てくれれば、依頼を受けたとしてカウント致します」
ってことは、誰かの手柄を横取りしたってことになるかもしれないと。
…よし、大体わかった。
「軽い説明は以上になります。何かご質問があれが、その都度聞いていただいて大丈夫ですので」
「はい。ありがとうございました」
冒険者として動く為に用意しておいた服の胸ポケットに、カードをしまう。
小声で「よし」と言い、軽く撫でる。
振り向いて外に出ようとした瞬間、ざわっと声が聞こえてくる。
「っ? あれは…」
「リリス…だな」
…そうか。辺境伯家の次女だもんな。馬車に紋章とか入ってるし、街に入ればバレるよな…。
馬車の扉が開き、綺麗なドレスを着たリリスが、ギルドに入ってくる。
ぽかんとしている私達を見つけると、ぱあっと明るい笑顔になり、私の手を取る。
「ミムさん!ソラさん、カイトさん!さっ、迎えに来ました!行きましょう!」
「私の住むお屋敷へ!」




