6話 ミムの本気
ぴたり。
ドラゴンの動きが止まった。ぐるる…と優しく唸りながら、地面に立っている私の元に来る。
私が手を出すと、その手に頭を擦り付ける。差し詰め、甘えるように。
「ああ…♡ いい子だねぇ、君♡ 強そうだし、綺麗だし…♡」
ぐるぐる…と猫が喉を鳴らすように甘えてくる。
数秒の沈黙の後、ラシャードが声を出した。
「何を…お前は、何をしたんだ?!」
「ん?」
「そいつはドラゴン!間違っても精霊ではない!お前の能力じゃあ、精霊を従属に置くので精一杯なはずだ!」
「そりゃあ、私の能力〈精霊〉じゃないからね」
「っえ…?」
ラシャードが困惑の声を出す。この能力者世界において、能力を隠しておくのはルール違反ではない。でも、色んな場所で調べられるので、隠すのは大変なだけ、と思うものが当たり前なのだ。
私はドラゴンを撫でながら、邪精霊とさっき"調教"した風の精霊を出す。
「隠してたんですよ。私らのは恐ろしい能力なものでね」
「はぁ…?じゃあ…じゃあ、何なんだよ!ドラゴンを手中に収めるなんて、なんの力なんだ!」
私は魔法で一気にラシャードの前までテレポートする。
「〈調教〉。私が"生きている"と認識さえすれば、生物だろうが物だろうが関係なく私のモノにできる。差し詰め、この能力は『操り人形生成機』ってわけ」
どさり、とラシャードの膝が地面についた。
リロイの能力の上位互換だが、そんなことは関係ない。私の人形を増やしてくれる能力即ち私の傘下。勝てるなどと思うこと、そもそも抗えると思っていることが間違っているのだ。
「まあ、私が親友って思った相手には効かないんだけど…私はお前のような能力主義者、大嫌いでね。君にも能力、使ったっていいんだよ?」
自分でもわかるくらい、ニヤリと笑って言うと、彼はテレポートを使って一気に後退り、
「いっ、嫌だ!来るな!化け物ッ!!」
「化け物で結構だよ。どーせ私らを理解してくれる人なんていない」
スタスタと歩いていくと、彼はテレポートを使ってどんどん遠ざかる。だが、心が乱れているのか、魔術の使い方が下手くそになっている。
「アデリー!兄さん!助けてッ!助けてよッ!!」
「…ユルキとアデリーも私のお人形にしてあげようか?」
くるっと振り向いてそう言うと、さっきまで固まっていた2人は一気に顔が青ざめていく。
「いや…いい…いいからっ…」
震えながら後ろへ移動していくアデリーを見て、私はソラに、向かって手を掲げ、
「ソラ。ナイフ頂戴」
「はいよ。ほれ」
黒く透明な刃でできたナイフを持ち、私は、ついに腰が抜けて動けなくなったラシャードの前に立つ。
「私は、アンタみたいな、私の思い通りにならない人間が嫌い。…それは、貴方もでしょ?」
「へ…?」
「自分の思い通りに動いてくれない人間って、嫌いになっちゃうよね?…でも、大丈夫!私のモノになれば、そんなこと考えなくていい!私の思い通りに動いてくれればそれでいい!…なんて、楽しいでしょう?」
「ぁ…ッ」
「あははっ…♡ さっ、おいで…ッ?」
突然、後ろから目を塞がれ、腰に手が回されて、動きが止まった。
「あ…?」
「ミム、そこまでよ」
「元に戻れ、ミム」
カイトの声と共に、指輪が嵌められる。
すうっと、アイスが溶けるように、さっきまでの感情や性格は消えていった。
「…私、何してた?」
「暴れてたわ。それはもう物凄く」
「久々の暴走ミムだったな」
「へ…ぇ…?」
どさっと前の方から音がする。
ラシャードさんは、意識を失って倒れていた。
「おーっとー!まずはラシャード選手の脱落だぁー!」
これで、残り2人。
ソラとカイトも本性を出すだろう。
そしたら、私が止めないと。




