1話 一難去ってまた一難
「はぁ…一難去ってまた一難…」
私が呟くと、廊下を、背筋をぐったりとさせて歩いていたソラは、少し考えてから、
「そうね…。嫌な予感しかしないわ」
と言った。
現在の状況は、冬休みと定期テストが近くなってきて、範囲を確認していたら、放送で、私、ソラ、カイト、リリスが呼ばれた感じだ。しかも学長室に。
「なに聞かれると思う…?」
私が聞くと、ソラは「そうね…」と少し考えて、
「やっぱり、以前カリアさん達を倒した事で何か言われるとか…」
カイトも、
「もしかしたら、俺らの指輪とか言われるのかもしれないぞ」
「でもそれでは、私を呼ぶ理由が…」
わからないな…。なんで呼んだんだろ…?
悶々と考えていると、やがて学長室に着いてしまった。
小さくため息をついて、扉を3回ノックする。中から、「どうぞ〜」と柔らかい返事が来た。
「失礼します」
リリスを一番後ろ、私を一番前にして、中に入る。
学長は私達を見て、
「よく来たわね。さっ、そこのソファーに座ってちょうだい。お話があるの」
なんと嫌な予感のする切り出しなことだろう…。
リリス除く私達は諦め顔をして、ソファーに腰掛ける。
リリスだけは明るい顔をして、
「それで、学長様は今日は何用でお呼びに?」
「えぇ。この紙をまずは見てほしいの」
机に出された、高価そうな紙。
リリスが持ち上げ、私達で固まって読む。
「えっと…『国立能力者育成学園への編入試験について』…」
「…??」
「『かの生徒、ミム、ソラ、カイトを出場させ…リリスと、国立学園生徒のカリアを、回復役として、共に行かせる』…」
「え…」
ソラが固まった声を上げ、私とカイトは思考停止し固まる。
読み上げてくれたリリスは、「なるほど」と言っているような顔をして、
「では、話というのは、彼女ら3人と、私がサインをしないといけない紙にサインをして欲しい、という事でしょうか?」
信じたくない言葉をリリスが言うと、学長は頷き、
「そうよ。…申し訳ないけど、カリア達を無傷で倒してしまった以上、ジェイン様から貴方達は確定だと、強制連行だと聞いてるわ」
「oh…」
ソラの言ってた事は間違ってないな…。倒しちゃったから、強制連行されるって…。
…ん?ていうか、カリアさん達ってそんな強いの?
「あの…失礼ですが、カリア様達ってそんなに強いんですか?」
「えぇ。カリア、リロイ、アレフの順に、国立学園内のランク10〜8にいる者達よ」
わぁ…そんな強かったの?無傷でボコボコにしちゃったじゃん私達…。そりゃあ強制連行って言われるわ…。少なくとも国立学園内のランク8以上の強さはあるって証明しちゃったんだから…。
「ま、まあでも!この為の能力調整をしないとだから、テストとかは免除よ!」
「…なんでですか?」
ソラが固まった声で聞く。学長は手を合わせて、
「貴方達の事は妹からも聞いてるからね。それに、4人全員成績いいんだから、テストは全部70点にしておくわ」
マジで?! 本当にテスト免除してくれるの?!
だとすれば、能力調整にかなりの時間費やせる!
「その代わり。私も個人的な用事という体で、貴方達の試合を見に行くわ」
「え…」
雲行きが一気に怪しくなった。
「安心してちょうだい。妹からも能力について色々教えてもらってるし、誰にも言わないわ。…指輪の件もね」
「…!」
それは助かる。
…なら、もう……
「ソラ、カイト」
「なに?」 「なんだ?」
「この編入試験では、もしかしたら、指輪を外す選択をするかもしれない」
私達にとって、指輪は枷。首輪。
それを外して、一時的にはっちゃける。わかりやすく表すならそれだけど…本来はそう簡単な事じゃない。
でも、ソラとカイトは頷いて、
「わかったわ。でも、外すならミムからね。一番ヤバいのを最初にしないと」
「それはそうだな。外した時の抑え役は任せとけ」
よかった…なら…!
「学長。サインするためのペンをもらえますか?」
「えぇ、どうぞ」
これで…トラウマも、克服する。




