15話 自由と破壊
リストロム辺境伯のカリアさん、リロイさん、アレフさんと戦ってから、3ヶ月が過ぎようとしていた。
外はもう冷たい風が吹き荒れている。一部の地域では"雪"というのが降ってくるらしいが、この国では降らない。
「は〜っ、さむっ…」
朝起きると、布団が離してくれない。もうこの流れを毎日している気がする。
…まあでも、もうすぐ2学期の期末試験。起きて勉強しないとヤバい…。
「っ…」
もぞもぞと布団から這い出るようにして、ベッド脇に足をつく。制服に着替えて、寮内の食堂へ。
他3人はもう既にいて、私を待っていたようだ。
私は走って駆け寄り、リリスの隣に座る。
「ごめん!待たせてたよね?」
向かい側に座っているソラは、私の方を見て、いたずらっ子のように笑い、
「おはようミム。そうね…あんまり待ってはいないけど…」
刹那、ソラが立って、私のサングラスを、文字通り目にも止まらぬ速さで取る。
「あっ!ちょっと…!」
「もういいじゃないの、サングラスは」
「…??」
首を傾げると、ソラはサングラスを畳んで机端に置く。ソラはそのまま椅子に腰掛け、
「そもそもランク分けの戦いで外して赤目を見せたんだから、もうつける必要はないんじゃないか、ってことよ」
「…!」
確かに、流れというか気持ちの動きで、自然と外してしまっていた。
今付けていても意味はないか…。
「…なら、外そうかな」
少しだけ笑顔になってしまって、それを隠すように肯定する。
すると、隣のリリスは手を合わせ、
「いいと思いますよ!黒髪に赤目はとても映えますし!」
カイトも机に肘を置き、
「ああ、似合ってるぞ」
しれっと、嬉しくなることを言ってくる。
「…私、ご飯取ってこないと」
話してても時間が過ぎてしまう。残りの話は食べながら、だな。
☆
〜NO視点〜
日の光が優しく差し込んでくる、学長室。
そこに、今度は2人の人影があった。
「おはようございます、学長。これが許可証と、3人のサインを入れる紙です」
「えぇ…はい。大丈夫ですね。ありがとうございます」
ジェインの渡してきた紙に、記入漏れがないか確認して、学長はこくりと頷く。
ジェインはそれを見て、
「では、冬休みが終わったら、すぐ迎えに行きますから。3人にも伝えておいてください」
「えぇ、わかりましたよ、領主様」
学長が言うと、ジェインは驚き、
「あの…叔母様は、俺に様をつける必要は…」
「あらあら。私は貴方を領主と認めているからこそ、さっきのように呼んでいるのよ」
学長は少しだけ笑いながら言うと、3枚の紙に触れ、
「さっ、あとは私に任せて、貴方は仕事に戻りなさいな」
「…そうですね。なら、俺はこれで」
一つ礼をして、ジェインは去っていった。
終わったという安堵感でため息を一つついて、紙を見る。
その紙は、この国での3月末に行われる、『国立能力者育成学園』への、編入試験に出ることを許す許可証と、3人のサインを書く紙。
「…」
学長は、それを見て、自身の妹である村長の言葉を思い出した。
村長は以前から、能力者の力を信じない人間達が、街の外に作った小さな村が破滅した際、残っていた子供達を沢山保護してきた。
おかげでリストロムは人口も多く、人手不足という概念があまりない。
そんな中、ある日村長は、学長にとある3人の子供を紹介してきた。
その子達の名前は、"ミム"、"ソラ"、"カイト"。
どうも、普通の能力者ではあり得ないほど能力も強く魔法適正も高いと言う。
見た目は、全員が黒髪で、瞳の色がそれぞれ、赤、水色、白。
その中でも、ミムと呼ばれた子は、ずっと無表情で、ソラや村長にくっつき、こちらを敵対視している目を向けたのを、覚えている。
「…」
ただ、学園内で見かけた彼女達には感情もあるし、明るそうだった。
…唯一、不思議に思ったのは、村長から言われた言葉。
『彼女らが指輪をつけるのを、許可して欲しい。そして、本人達の意思でしか、指輪を外さないように、見ていて欲しい』
それが何を意味してるのか。
能力が強すぎるが故の制御装置?それとも、隠しておかないといけないナニカがあって、それを指輪に封じている?
学長はずっとそれで悩んでいた。
でも、もう悩んでいる時間はない。
彼女は立ち上がって、学園全体に声を届ける魔法を展開する。
そして、魔法陣に向かって、声を張り上げる。
「今から呼ぶ生徒は、至急学長室にきてください!ミムさん、ソラさん、カイトさん、リリスさん!もう一度言います!〜〜… 」
放送を終えて、彼女は椅子に座り込み、紙を見る。
彼女自身、気になっていた。
村長が"強い"と宣言するくらいの能力。それを見てみたいと。
第二章 国立学園編 Start




