14話 決着
「結界っ!」
「っ?!」
ジェインさんの声のあと、アレフさんの声が響いた。
パキィッ!と音が鳴り、私とリロイさん、ソラ・カイトとカリアさん、アレフさんに分かれる。多分相性を見てわざと分けたんだろう。
「ふむ…」
私が顎に手を当てて悩んでいると、リロイさんはクスクス笑い、
「あははっ!分けられちゃった。…なら、僕は本気で行こう」
リロイさんの方を見ると、かなり背丈のある4人の精霊が、背中の方に出てくる。
「まずは、四大主属性の上級精霊で、お相手願おうかな?」
「…ふむ、どうぞ?」
私の返事を聞いて、4人の精霊は一気に私に向かってくる。火、水、土、風の玉や刃がこっちにくる。
「あぁ…」
向かってくる攻撃と精霊を見て、私は思う。
これが、全部全部…私の精霊なら…♡
「【ねぇ…私のモノになってよ…?♡】」
声をかける。
ぴたりと精霊達の攻撃が止まり、消えていく。
「…は?」
リロイさんは凍った声を上げる。
すりすりと私に寄ってくる、光のない目をした精霊達。これよこれ…!
「あははっ…皆んないい子だね〜♡」
「なっ…何だよそれっ…!」
恐怖心の混じった声で、リロイさんが言う。
私は擦り寄ってくる精霊達を撫でながら、邪精霊を呼び出す。
彼女も、私の首に腕を回し、抱きついてくる。私はその頭を撫でながら、
「これが私の能力なんですよ…?いい味方を与えてくれて、ありがとうございます♪」
ガクン、とリロイさんの膝が崩れ落ちる。
〈精霊〉と〈精霊王〉。2つの能力は、単なる上位互換か下位互換のように見えて、違う。
「ああ、安心してください。精霊達はお返ししますよ。元は貴方様のものですし」
言うと、彼は今度は顔を真っ赤にして、地面を掴み、
「お前、何言ってるんだ?! 精霊はモノじゃない!全て、ちゃんと生きてるんだぞッ!」
「あぁ、そうですか。そんなの関係ないです」
「っえ…」
瑣末な問いだ。
相手にとってその存在が生きてるか生きてないか。そんなの、私には関係ない。私が生きてると認識できればいい。自分のモノにできれば、それでいい。
一歩踏み出した瞬間、結界で阻まれた向こうから、
「ミムッ!アンタ指輪外れかけてるわよ!すぐ付け直してッ!」
「っ?!」
ソラの声が響き、はっ、として左手を見ると、中指に嵌めている指輪が、ほぼずれ落ちていた。
(どうりで…)
私は一息ついて、指輪をしっかりと付け根まで嵌める。
「ふう…ごめんなさいリロイ様。少しリミッターが外れかけてました」
深く礼をすると、リロイさんは、
「いや、いい…僕は負けた。負けたよ」
リロイさんは、両手を上げて、降参のポーズを取った。
☆
〜ソラ視点〜
どうやら、ミムの方は決着が付いたらしい。
それを見て、わかりきっていたと言うような表情をするカリアさんと、あり得ないと言うような表情をしているアレフさん。
「ふ〜…危なかったな、ソラ」
「そうね…」
戦いの最中で、私は横目でミムを見た。その手にある指輪は、ずれ落ちかけていて、ミムの側には、沢山の精霊。
何をしたのか、どうなっているのかを即座に理解した私は速攻で声をかけた。
何とか相手側が降参してくれた。
なら、私らの方も…。
「おいおいっ!よそ見してる場合か?」
「ああごめんなさい。これから本気出しますんで」
「は…?」
私は右手を前に出し、
「【孔雀石】、【水晶】」
パキィッと、カリアさんとアレフさんを覆うようにクリスタルが現れる。
そして、右足首には、マラカイトで作られた足枷。
カリアさんは、それを見て即座に手をあげ、
「降参するわ」
と言った。
私はその言葉を聞いてすぐ、水晶の拘束を解いた。
だが、アレフさんの方は、水晶内で、不発する魔法を何度も打っている。
カイトと私は同時にため息をつき、
「アレフ様…ソラの能力で作られた宝石は絶対に壊せない。それに、【水晶】の石言葉は"純粋無垢"。効果は"魔法・能力効果削除"だぞ」
「は…?」
アレフさんが情けない声を出した後、カイトは剣に魔力を纏わせ、
「ほら、アレフ様は負けたんだよ。認めろ。どうせミムと戦っても負けてたさ」
カイトの言葉を聞いて、彼は物凄く怒りを滲ませた顔をした後、
「チッ…降参する」
「試合終了!いい試合だったよ!」
ジェインさんの言葉で、ようやく長い戦いは終わった。
☆
〜NO視点〜
空はもう夕日で、橙や赤に染まっている。
寮では、夕食だ風呂だと騒がしくなってくる時間帯。
そんな中、学園内にある、学長の部屋に、5人の人影があった。
「いや〜!まさか全員綺麗に負けるとは!」
5人のうち1人、ジェインの声が響く。
部屋にいたカリアとリロイは、何も言わず目を瞑る。だがアレフは納得がいかないようで、
「でも父さん!俺だって、あのミムって奴と戦えば…!」
その言葉の先は、カリアの「けれど、」という言葉で遮られた。
「アレフ兄は知らないでしょうけどね。ミムは【時空系統魔法】を平気な顔して使う人間よ?単なる魔法の延長線上にある能力じゃあ無理よ、無理」
ソファーに腰掛けているカリアは、手をヒラヒラと振りながら、諦め顔でそう言った。
全ては、カリアの体験談からなった結論。アレフは何も言わず、顔を歪ませた。
「まあまあ、アレフ兄様…僕の精霊が奪われたんですよ?それに、ミムは…」
リロイは、戦いの最中ミムが言った、『そんなの関係ない』という言葉を反芻していた。あの後、指輪を付け直して、『リミッターが外れかけていた』という発言も。
「…きっと、アレフ兄様だって、負けてました。ソラって子と、同じように」
リロイもまた、負けることを寧ろ当たり前と思っていて、諦め顔をする。
ジェインは、沈んだ2人の顔を見て、
「まあまあ…でも退学って訳じゃない。あくまで、決まっただけだ。」
アレフはその言葉を聞いて、顔を明るくさせる。
「そうだよな!俺は絶対、勝ち抜いてやるよ!」
「…負ける未来しか見えないわ」
ため息混じりに言ったカリアの言葉に、リロイも頷いた。
やがて、じっと話を聞いていた学長が椅子を立ち、
「では、ジェイン様。ミム、ソラ、カイトを、編入試験に出す生徒、という事でよろしいですか?」
「あぁ、そうだ。リリスとカリアも回復役として連れていく」
「承知しました」
カリアはジェインの言葉を聞いて、
「果たして私の治癒魔術を使う時は来るのかしらね…」
そうぽつりと呟いた。




