11話 能力戦
〜ソラ視点〜
「はぁ〜…」
始まって早々、私は大きくため息をつく。
最初こそ、私は力が出せると思って調整してきたが…ミムは、リミッターを外さない選択をした。正直、いい選択だと思う。
この学園には、私達3人を突破できる能力者はいない。
「さぁ!第二回戦!ソラ選手対、リーゼル選手です!では、開始!」
目の前の男性は、いかにもインテリ系って感じがする。
魔導書らしき本を持っているのを見るに、ミムに似た、能力ではなく魔法で戦いたいタイプなのだろう。
「ソラさん。対戦よろしくお願いしますね」
「ええ、こちらこそ」
では…早速。
魔法は使えなくしよう。
「【孔雀石】」
「【ファイヤーボール】!」
途端に、男性の右足に、マラカイトの足枷ができ、ぽすん、という音がなる。
男性は一気に慌て出し、
「はっえ…なっ、なんで…」
「貴方、聞いてなかったの?」
「え…」
私はダイヤモンドで剣を作り出し、歩き出す。
「孔雀石の石言葉は"強い絆"。効果は"一定技術束縛"。今、私と貴方は魔法が使えないわ」
「嘘だろっ…!」
嘘ではない。寧ろ手加減している方だ。
能力を封じなかっただけありがたいと思って欲しい。
剣を彼の首に当て、
「これでも手加減している方よ。束縛されてるのは能力。だから魔法が使えないってだけなんだから」
「ッ…」
生徒は私を見つめた後、手を上げ、
「すみません!棄権しますッ!」
歓声が上がる。
ダイヤモンドの剣を消し、思う。
やっぱり、つまらない。手応えがない。魔物と戦いたいな…。
☆
戻ると、ミムとカイトに、リリスもいた。
リリスは明るい笑顔で、
「どうでした?手応えありました?」
「全然ないわ…楽しくない」
答えると、カイトもため息をつき、
「なら、俺やリリスが戦っても手応えなさそうだな…つまらない」
「ですね…折角魔力が増えて、色々と試したい魔法もあるのに」
2人のため息に、私もミムから見たらこうだったんだな、と理解する。
ミムもつまらなさそうに指輪をいじくっている。
「ほら、次はカイトでしょ?」
「そうだな…〈変永〉でどれくらい持つか…試してみるかな」
カイトはそれだけ言って去っていった。
リリスが私に近づき、
「聞きたいのですが…持つって、どっちがです?」
「ああ。対戦相手の肉体と精神が、よ」
☆
〜カイト視点〜
「…」
「初めまして!カイトさん!では早速、やりましょう!」
俺の対戦相手は、随分と元気そうな女子。
どうしてこんな相手なのか問いたい。これじゃあ満足に能力使えないな…。
(しゃーなし…いい感じな手加減でやろう)
峰打ち程度なら、何か変なことはせずに済むだろう。
後々の言い訳という概念がなくなるように戦おう。
「それでは、カイト選手対シェル選手!開始っ!」
言葉と共に、喉の方に能力を発動させる。
「はあ…【思想変化】」
「っ? なにを…」
俺は、速度を上げて、彼女の肩に触れる。
「【棄権しろ。お前じゃ俺に勝てないよ】」
それだけ言った。
どさりと、彼女の膝がつき、震え出す。そのまま、
「すっ、すみませんっ!棄権しますっ!」
また、歓声が上がる。
中には、絶対に勝てると思い込んでいたのが負けて、悔しそうな生徒もいるようだが、関係ない。
俺は膝をついている女子生徒に近づき、
「すまなかったな。怖い思いをさせた」
「へっ…ぇ?」
「じゃ、俺はここで」
流石に、自分の考えをガラッと変えられれば、恐怖心も湧く。
俺は去るつもりだったが…彼女から声をかけられる。
「待ってください!私、別に恐怖心はないんです!」
「っ?」
恐怖心がない?そんなバカな。
自分の考えを変えられる、いわば洗脳されたようなものだ。普通怖い。というか、精神が崩壊したっておかしくない。なのに…?
「何か、勘違いをされてるかもしれませんが…私はただ、自らの弱さを知っただけ。私が女だから、手加減してくれたんでしょう?」
「…」
「だから、怖くありませんよ。負けた人が言っても、説得力ないかもですが」
俺は、何も言わなかった。
でも、何か行動はしたい。ミムやソラ以外には、言われてこなかった言葉。
「…ありがとうな。そんな事を言ってくれて」
「え? いえ!今度は負けませんから!」
彼女はそれだけ言って去っていった。
俺も、元いた控え室に戻る。
「カイト、おかえり。どうだった?」
普段と似ている、真面目そうな顔をして、ソラが聞いてくる。
俺は、
「あぁ。お前らよりも楽しめたな」
「っ…」
さっき言われた事は、ミムが少し顔を歪ませる為のタネにした。
自分はつまらなかったのに、俺は温かい言葉をかけられたという、煽りのタネに。




