意外なプロポーズ
一応これが最終話になるんですが、このあとに明後日の朝から3日連続で計3話のおまけを予約していて、ここまでの物語の補足みたいな感じになるのでよければそっちまで読んでもらえたらものすごい嬉しいです!!
今日まで読んでくださり本当にありがとうございました!!!
騒乱から一夜明け、王都は未曾有の激動に包まれていた。
事態はセレスティーヌが描いたシナリオ以上に鮮やかな結末へと収束していく。現国王一家の身柄は正式に拘置され、王位は国民や貴族たちの強い支持のもと法と正義を司る王弟へと引き継がれることが決定した。これに伴い、これまで甘い汁を吸い続けてきた王妃派の貴族たちには徹底的な家宅捜索の手が入り、不正に蓄えられた資産は次々と凍結されていった。
一方、セレスティーヌが率いるナイトメアへの報酬も最高の形で届けられた。
新王の命によりかつて濡れ衣を着せられ没落した一族の名誉が回復され、アルベルトには子爵位の復位が認められた。平和な世界で疎まれるようになった彼らの知略は今や王国の安全を支える正当な情報網として公に認められることとなったのだ。
ゲームの結末とはだいぶ変わってしまったけれど、セレスティーヌはとても満足していた。
騒乱から数日が経ち、王都の喧盛が嘘のように穏やかな午後。
ロシュフォール公爵邸の陽光が差し込むサロンでは、セレスティーヌが母親や幼い弟妹たちに囲まれ、和やかなティータイムを過ごしていた。
「お姉様、このお菓子とっても美味しいわ!」
妹の可愛らしい言葉に、セレスティーヌは慈愛に満ちた笑みを浮かべる。漆黒のドレスを脱ぎ捨て、柔らかな色合いの装いに身を包んだ彼女は、どこからどう見ても家族を愛する心優しい公爵令嬢そのものだった。
だが、その平穏を破るように、執事が緊張した面持ちで入室してきた。
「……失礼いたします。アルフォンス殿下がお見えです。セレスティーヌ嬢に、どうしても直接お伝えしたいことがあるとのことで……」
「あら、殿下が?」
セレスティーヌが立ち上がるのとほぼ同時に、軍服姿のアルフォンスがサロンへと現れた。その手には、燃えるような赤薔薇の花束が抱えられている。
彼は家族に短く一礼すると、迷いのない足取りでセレスティーヌの前まで歩み寄り、剣聖の顔を崩して、一人の男としてその場に片膝を突いた。
「アルフォンス殿下、一体……」
「セレスティーヌ嬢。あの日悪を断罪する貴女の峻烈な美しさに触れたとき、私の魂は貴女の騎士となることを選んでいました。……軍務でも、政治的な駆け引きでもありません。私は貴女という女性を、心から愛しています」
彼は花束を差し出し、熱を帯びた瞳で彼女を真っ直ぐに見上げた。
「私の生涯をかけて貴女を守り、支えたい。……どうか、私の妻になっていただけませんか。貴女の歩む道に、私の剣と、私のすべてを捧げることを誓います」
軍務という口実すら使わない、逃げ場のないほど正々堂々としたプロポーズ。あまりの熱烈さに、サロン中が息を呑んだ。
(……あら。名誉挽回のチャンスをいただいたお礼をどうすべきか考えていたところでしたけれど。まさか、こうして正面から『運命』を突きつけに来てくださるなんて)
セレスティーヌは扇子の陰で、家族には見えないよういたずらっぽく、そして最高に不敵な「ボス」の笑みを浮かべた。
「……殿下。わたくし、殿下が思っていらっしゃるような、ただ守られるだけの淑女ではございませんわよ? 貴方の名誉すら、わたくしの目的のために利用してしまうかもしれませんわ」
セレスティーヌが試すように目を細めると、アルフォンスは待ってましたと言わんばかりに口角を吊り上げた。
「それで構いません。むしろ使い甲斐があるでしょう? 貴女という劇薬に侵されて一緒に破滅へと踊るのなら本望だ。……お礼や義務なんてつまらない理由じゃない。私が貴女に惚れ込んだから貴女を独占したい。これ以上の理由は必要ですか?」
その熱っぽくもどこか軽薄さを装った、だが真実を射抜くような眼差しに、セレスティーヌは扇子の陰でくすりと笑った。
(……あら。チャラついてるだけの剣聖様かと思っていましたけれど。案外、わたくしと同じ側の『食わせ物』だったわけね。……面白いじゃない)
セレスティーヌは彼の手を取り、その掌に優雅に指先を重ねた。
「よろしいですわ。……では、わたくしの傍で、飽きるまで世界を弄ぶ特等席を楽しんでいただきますわね?」
「ええ、喜んで。……最高の人生になりそうだ」
アルフォンスは満足げに彼女の指先に深く口づけを落とし、まるで獲物を射止めた肉食獣のような、不敵で情熱的な微笑みを浮かべた。
一旦ここで完結とさせてください.
長い間ありがとうございました。
また本編そのものの続きを書くかもしれないです。
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