27:弱い
私は今、世界樹内の一室に来ていた
メンバーはベグー、アン、ジェネ、サンリ、アグ、私だ
三日間の訓練が終わり、お疲れさまでしたの意味を込めての飲み会らしい
中将達は別で飲んでいるそうだ
まあ、結局私は飲めないので雰囲気だけ楽しみながら私はジョッキに入っているオレンジジュース改めみかんジュースを飲んでいる
正直オレンジジュースとの違いはよくわかっていないが、どっちもおいしいし違いを感じるような特別な味覚でも無いので何も考えずに楽しんだらいいのだ
『想、飲む?』
『私、のっとあるこーる』
『なんでそこまで子供っぽく?後これノンアルのビールだよ?』
『え、なんで?普通に飲めば…』
『君は酔っぱらい五名を相手する気なの?一名で?』
『あ~ありがとね。アン』
『分かればいいのだ、分かれば。それで、飲む?』
『一口なら』
『わかった!』
そう返すアンは、自分のジョッキを差し出す
私は両手でジョッキを持ち、そっと口を付ける
直ぐに置き、私のジュースに飲み干し出来るだけそっと置く
『そ、想。大丈夫?』
『…ビールって苦いんだね。学びになったよ』
『ごめん!知ってると思ってて』
『謝る必要は無い。学びになったヨ。ウン』
『本当に、大丈夫?』
『大丈夫ダヨ。ウン。ハイ』
『ちょっと待っててね!みかんジュースとってくるからね!』
『スー…アリガト』
彼女は私のジョッキを持って行った
『想。持ってきたよ』
あたしはジョッキ一杯に入れて持ってきた
『アリガト』
彼女はそう返してジョッキに口を付ける
そのまま一気に飲んでいる
残ったのは三分の一程度だった
『ふぅ……二度と飲まない』
『うん。そっちの方がいい』
『なんだ、想。口に合わんかったか?』
『初めてのビールだとそうなるだろう、当たり前だろボス』
『…そのボスってのやめてくれないかサンリ』
『そうだぞサンリ。それは軍の呼び方じゃない』
『お前だって、ボス呼びじゃねえか!俺の事言えねえだろ』
いつもの言い合いが始まった
でも、酒を飲んでいるときは少し違う
そのいつもはピリピリとした雰囲気を多少なりとも醸し出すのだが…
『『ガハハハッ!』』
互いに多少にらみ合った後笑い合う、大きい声でね
まあ、楽しくなってるんでしょ、実際あたしもだからね
それに、止める者も今日は酔っている
『ふへへへへ』
いつも止める役のアグはあんな感じで言い合いを楽しい軽いイベントのように捉えてる
正直、いつも一名のみは素面でいる決まりだが、あたしは向いていないと思う
いつも二名の言い合いを止める役とか、単純に上司とか、一名は上手く扱える奴らとかね?
でもあたしはどっちかっていうと止められる役な気がしてるんだけども…
『アン、困った顔してる~』
『はぁ、想…助けて~』
彼女の元に駆け寄り、座っている彼女を抱きしめる
彼女は本当に癒しだ
小っちゃいし、すべすべだし、その様子からは考えられない程口悪いし
なにより可愛い!
白い儚げ女の子が口悪くて何か暗い過去があるんだよ!
詳しくは知らないけどもさ、なんというか言葉に表しにくいけども、そういうキャラっていいよね!
そんな子が実際に私の前に居るんだよ
あー撫でたい
でも、撫でたら…
『何してきてるの?キモッ』
って言われそうだよね、傷ついちゃうわ
『想?どうしたの?』
あたしが無駄な事ばっか考えてたら彼女があたしの肩に顔をこすり付けてくる
『そ、想。そんなに嗅がないでもらっても…』
『うるひゃい。ぉちちゅかひぇろぉ』
『そ、想?アルコール入ってる物飲んでないよね』
『ふへへ、飲んでるところ見てないわよ~ふふ』
『飲ませたか、アン?お前、想の事好きすぎだろ。部屋にでも』
『うるせぇ酔っぱらい!』
『…アン、焦りすぎだろ』
『同意だ、サンリ』
『そこ二名、後で話』
『許したしたげてよぉ。わらひは何とほもないかりゃ』
『そっちの方が問題だって…はぁ』
『たいへんしょ~』
『はぁ』
なんでこんなにふわふわしてるこの子
『えっと…そ、想?なんで酔っているの?』
『酔ってないよぉ。ただぁ、あるこーるのにおいがしたと思たら、ふわふわした~』
『げ、言語が崩れてる。そ、想。一旦お水飲む?』
『やだ。めんどくさい』
『アン。俺はこいつらの相手をしておくから、想を連れてってくれ』
『ベグー!酔い覚めたの?』
『そもそもあんまり酔ってねえしな』
『それはうそだ~べぐー』
『はははは!想はアンに甘えてな寝てな』
『ありがとね~』
彼女はそう返すと立ち上がって多少水を持っているあたしに近寄ってくる
『あん~』
想の声は覇気がなく、普段とのギャップが恐ろしい
そんな彼女の酔いをどうにかこうにかするためにお水を与える
『想、ほらお水だよ』
すると、両手でしっかり持ちコップに入った水を一気に飲む
『ぷはぁ。ねむねむ』
そう呟きながらコップを机に置くと、あたしの肩にもたれかかってくる
『もうあうけない。おやすみ』
『へ?』
あたしが彼女の背中に腕を回すと何の抵抗もせずに寝息をたて始めた
酔ってるとは言えみんなの前でこんな無防備な姿を見せるとは…
まあ、ここ数日忙しそうだったし、今日も頑張ってくれたし、疲れていたんだろう
自分にそう言い聞かせて起こさないように彼女を持ち上げる
『軽っ』
思わずそんな言葉が出るレベルで軽かった
どうやら、彼女は起きていないし、酔っぱらい共も気付いていないようだったからこっそりとこの部屋を抜け出して、想の部屋に向かう
彼女の部屋は飲んでいた部屋とは少し遠く、それまでに彼女はほんの少しだけだが目が覚めてしまった
だが、ほぼ寝ている状態で、返事もふにゃふにゃだ
扉の横にあるパネルに彼女の手のひらを置き、扉にカードを翳してロックを解除する
正直想が軽すぎて、片手でも何とかなるおかげで助かった
そんな事を考えながら彼女の部屋のドアノブを握り、扉を押す
そこは光が付いておらず、その代わりに月明かりが部屋に入り込んできており、何とも幻想的な雰囲気を醸し出していた
彼女をそっとベットの上に置き、あたしは外に出ようとする
だが、なぜかは分からないが月明かりで照らされた机の上にある物に目が離せなかった
あたしは机により、紙を覗く
その内容は、あたしの想像を遥かに超えた物だった
その紙の内容に目を通していると、左腕を掴まれた
ゆっくりそちら振り向くと、想が目を細め問いただしてくる
『…見た?』
『ごめん……見てほしくなかった?』
『ふふ』
少し緊張感のある空気が彼女の笑いで晴れる
『正直、心配されたくは無いからね。それに、此処に置いていた私も悪かったりするから』
『そっか…』
お互いにとって気まずい空気が流れる
空気を変える為に、彼女に話しかける
『そ、そういえば、酔いは?』
『へ?』
すると彼女は考える素振りを始め、直ぐに口を開いた
『確かに…私何してたの?確かアンが私の為にオ…みかんジュースを取りに行ってたよね?』
『あ、覚えてないの。ならよかった』
『え、何々?私に何かしたの?』
彼女はにやけながらあたしに声を掛ける
『違うよ。覚えてたら、想が超絶恥ずかしがるだけだし』
『え…そ、そんな事してたの…』
『それはもう。たっぷり愛でさせていただきました』
『…はぁ、多分何かやらかしてるだろうから謝らせて』
『何もやって無かったよ。しいて言うならば…今もだけど可愛いぐらい』
軽く茶化す程度だった
だって、普段だったら
『何?口説いてる?』
みたいに、軽口を叩くと思っていた
『っ…』
でも、彼女の反応は違った
頬を赤らめ、顔を隠すように俯いている
『その…急にそういう事を言わないでくれ。ちょっと余裕ない』
そういうと彼女は固まってしまった
実際、普段の鉄壁の壁が多少のアルコールで軽く崩されているのだろう
急にそういう事言われると素が出ているのだろう
そういうところも含めて可愛いのだが…
『はぁ、話もどそっか』
『いいの?』
『勿論。君が私の事心配しなければいいし』
『そっか。じゃあ質問なんだけど』
あたしはその紙を指差しながら、意を決して彼女に聞く
『これって、機械の目であってる?』
どうもどうも
どうも海老が食べれなくなったっぽいんですよね
加熱したら食べれるんですけど…ね
これって食べないほうがいいんですかね
まあ自己責任ってことで
ではでは~




