16:ルス・アギス
鳥の鳴き声が聞こえてくる自然のど真ん中
私は紅茶を入れて優雅に飲んでいる
時刻は六時半
日は昇っているが、起きるには些か早い時間だ
出発は九時から
じゃあなんでこんな時間に紅茶を優雅に楽しんでいるか
そんな理由一つしかないだろう
寝れなかったのだ
私は目を閉じて考える
決して何か、楽しみな事とか、特別な物とか何もなかったはず
さらに言えば、今まではぐっすり寝れていたはずなのだ
まあ、一つだけ心当たりがあるような無いような…まあいいか
今思い返してみれば、今までの日は、疲れるようなことが多かった気もする
だがしかし、今回はただ歩いてきただけ
疲れる事なんて無い日だった
一般的にはいい日なのだろう
だが、こちらからしたら多少なりとも疲れた方が健康的に過ごせると思うのだが…
まあ、そんな過ぎたことはいい
そして、紅茶を入れたカップを口につける
だが、いくら傾けても液体が口の中に入る事は無い
私は目を開ける
するとカップの底が目に映った
気が付いたら飲み干していたみたいだった
私は隣にある机に置く
そして立ち上がり伸びをする
立ったのは数時間ぶりであり、体も固まっている気がする
私はもう一杯紅茶を入れようと荷物に近づくとテントから出て来た
『あれ?想ちゃん。おはよ』
『ルス?早くない』
『へ、嘘!今何時』
そうして、私は時計を見ると三分しか経っていなかった
『六時三十三分』
『マジ!はぁ、着替えちゃったしどうしよ…』
私は紅茶を入れようとしていた手を止めて話す
『良かったらでいいんだけど、ここら辺少し散歩しない?』
『別にいいよ!行こ!』
彼女は私の横を通り過ぎる前に手首を掴み私を引っ張りながら進んで行く
私は転ばないように走りで彼女に合わせて進んで行った
近くには森があり、少しばかり道が舗装されている
迷うことも無く、大規模な公園のようになっていた
とても綺麗!というわけではないが、首都の者からすれば、自然を感じられるいい雰囲気だ
そんな所を一緒にお互い何も言わずにただ散歩していた
だが、直ぐにその静寂は優しく切り裂かれる
『ねぇ、少しだけ相談いい、かな?』
彼女はいつものハイテンションでは無く、弱弱しく聞いてきた
『いいよ』
私がそう答えると彼女は近くにあったベンチを指差して
『じゃあ、そこに座って話そ?』
私達は一緒に座りそこから彼女が話し始めた
『あたしの剣の正体がわかった。でもそれと同時に私が能力を使いこなす為には能力を使用して、間隔を掴まなければいけない。でも、あたしがこの剣を持っている以上、下手に暴走でもすれば、みんなどころか周りに被害が出る程の武器。でも、能力を使いこなしたい。みんなが窮地に陥った時、あたしが無力のままは嫌だ。どうしたらいいのかな?想ちゃん』
彼女はうつむきながらそう語った
その内容は昨日、ルドからも聞いた
そして、私も悩んだ
元は同じ武器だった彩にも聞いたが伝説の武器達は、持ち主に忠誠を誓っている
持ち主の命令は絶対であり、暴走状態でもそれは変わらないそうだ
武器を話していても、持ち主の意思一つで手まで飛んでくる
便利な力だが、彼女にとってはそれが問題となっている
何か、出来ないものかと悩むが、解決策は出てこない
根本的な問題は何も解決できない
強化系の能力に暴走は付き物だ
暴走させるのを恐怖して能力の強化は出来ない
実際、有能な師が居れば暴走寸前を見極められるだろう
だが、彼女のように圧倒的な強化を施す力は難しい
どうしたものかね
暴走というのは自信を強化した時に魔力が入るところに別の力が入り、その力が溢れることで引き起こされるものだ
何か、彼女の暴走を引き起こされないような力とか、彼女の魔力量を急に底上げするとか無い物かね
『わかってるよ想ちゃん。あたしは魔力許容量を増やせばいいんだけどね』
『でも、それは難しいでしょ?冒険者だし。君は、君のペースで進めばいいんだよ。それに君は心優しい。暴走は本人の本心を反映すると言われているから、問題無いと思っているよ』
『そっ…か』
『そう、問題は解決かい?』
『うん、ありがとう想ちゃん』
『ふふ。それに、私って強いから』
『へ?』
あたしは思わず変な声が出てしまった
そっか、見透かされていたのか
あたしは、ずっとあの時の想ちゃんに何もできなかった私が嫌だった
それに、想ちゃんが心配だった
目が覚めたばっかりで、見た目もか弱い女の子
あたしより身長が低くって、さらに言えば一番小さかったロアよりも小さい
初めに出会ったときなんて右目に怪我をしていた
だから、守りたかった
でも、想ちゃんは強かった
あたしを安心させるように話した
あの子はあたしより何倍も強かったんだと感じた
彼女はあたしが立ち上がるより前に立ち上がり、もう少し遠くに居た
すると直ぐに振り向いた
その顔は満面の笑みを浮かべており、とても可愛らしく思える
すると彼女が言葉を発した
『そんな顔してちゃダメだよ。可愛い顔が台無しだ』
そんな言葉を恥ずかしげもなく言って、こちらに向かって来る
すると彼女は顎を手をやり、あたしに上を向かせて手を伸ばす
『ほら、行こ!』
あたしはその手を取って、一緒に手をつないで歩く
戻ってもみんな起きて居なくて、二名で紅茶を楽しみつつ、雑談を楽しんだ
私はルスと共に紅茶を飲みながら、今までの旅の内容を聞いた
旅の内容を語る彼女は、とても楽しそうに、そして懐かしそうに語った
彼女が言うには、南東に存在しているこの大陸、トガーラ大陸の東側と北東に位置しているグーダ群島の東側、機械人国、草龍の国、鬼の国の三か国を回っているそうだ
冒険者は、大体二パターン存在している
一つ目はある程度拠点を決めておき、そこを中心として活動していく者達
二つ目は特定の拠点を持たず、世界中を回る者達
みんなの場合どちらかと言えば前者に当たる
他の者達と比べて、些かというレベルでは無い程だが範囲が広いのである
それだけ回るのだから、知り合いとかも多いのだろう
エピソード一つ一つが濃く、気が付いたら二時間程経っていた
みんなも起きてきており、今日は朝ごはんは軽い物で済まし、直ぐに出るらしい
出発は九時半、現在は八時四十八分
まあ、時間はある
ルドとロアは簡単なスープを作っているらしい
他のみんなは荷物をまとめており、料理担当の二名分も行われている
え?私?
私はね、何もして無い
眠くも無いし、正直なところ紅茶の飲みすぎでお腹いっぱいなのだ
まあ、あったかいスープは流石に一杯飲みたい
そんなことはどうでもよく、やることが無いのだ
以前から言っている通り、このパーティは以前からやっていけていたのだから、私がやることなんて、ほぼ無いに等しいのだ
私は、椅子に座りながらみんなを眺めている
私はゆっくりしていると目の前にカップに入ったスープが出てくる
『はい!どうぞ』
ルスが満面の笑みで渡してきた
私は両手で受け取る
温かみを感じつつ私はカップに口をつけスープを飲む
多少飲み、私はカップから口を離し、息をつく
その息は、普段より熱を持っており、体も温まる感覚が広がる
みんなスプーンを使って飲んでいるが、私のには何も入っていない
理由は単純、私が頼んだからだ
まあ、それでも美味しいから良いのだ
そんなことを考えながら私はもう一度飲む
みんなは和気藹々とした雰囲気だ
私は飲み干し、カップを洗いに行くと、声を掛けられる
『想ちゃん、もういいの?まだあるわよ?』
『うん、大丈夫だよ。体は温まったし』
『そう…分かったわ』
私はカップを洗い、水気を拭きそばに置く
私は自分の座っていた椅子を削除し伸びをする
簡単な椅子なら、その場で簡単に作れるからこの能力は便利なものだ
そうして、私はバトルアックスを地面に突き刺し、寄りかかり目を瞑る
そして、武器の最終調整を始めた
俺は今息を切らしながら森の中に入った
息を切らしてもなお走り続ける
『元はと言えばあの爺さんが!』
『何か知っているようだな?』
何故お前が!
『教えろ!』
奴は低く、強い声で俺に聞いてくる
だが、もう遅い
その瞬間、光と共に爆音が響く
奴はそっちに見とれている
その先に逃げようとしたが、耳に轟音が響きその場にしゃがみ込み耳を塞ぐ
『クソったれ!』
そう吐き捨てると俺は後ろからの衝撃で気を失った
最後の光景は、龍が竜になり、飛び去る姿だった
どうもどうも
少しだけ、時間を変えてみました
ところで、此処で話したい事って書いた後に思い出すんですよね
ではでは~




