98:混沌様ってなんだよ
私はとある部屋に案内される
そこは、私が泊まる部屋の三倍程の濃度の混沌が漂っている
これだけあれば、そりゃ扉で封じても漏れる
この濃度でありば、常人では耐えきれない
それに、この部屋には大きな祭壇がある
この部屋には見合わない石で出来ており、中心には混沌の源が存在している
外見は鬼の国と同じような建築だった
『さぁ、そこにお座りください。そして目をつむってください。私がいいというまでです』
宮の父、京がそう言う
今は言いなりに従ってあげよう
それにしても、連れてこなくて正解だったな
私は椅子に座る
隣には宮が座るのが見えた
すると、京が話し始める
『宮、貴女は混沌様に従い、混沌様の意見に納得し、その身を差し出しますよね?』
『……はい』
彼女の声には生気が無かった
それもそのはず、私の頭にも現在進行形で混沌が流れてきている
だが、所詮生き物が使うことが出来る混沌
私にとって暖炉の中の塵の一つに過ぎん
それで洗脳など、無茶な事を言う
そんなことをダラダラ考えていると、京が話す
『華寒さん。少しばかり私の話を聞いてもらってもよろしいでしょうか。返事はしてもしなくとも、構いません』
そう前置きをして、更に話し始める
『今の世界は圧迫されすぎているんです。国に従い、勝手に作られたルールに縛られている。混沌はそんな秩序を打ち破り、世界を救います。混沌を否定する者は狂っており、今の秩序を守ろうとする異常者です。私は、秩序を討ち取る為、皆さんを秩序から切り離す為、混沌へと導いております。華寒さん、生き物には皆、混沌が必要、足りていないのです……いかがでしょう、貴女も秩序を打倒し、いずれ現れる混沌様配下になり、新たな国を作る…その身を混沌様に預けませんか?』
…とりあえずツッコまないようにしよう
とりあえず、身の保身に走る事が先だ
『……その考えは、貴方の物何ですか?』
『いえ!混沌様の物です。ある日、夢の中に混沌様が現れ、同じことを告げられました。私はその考え方に共感しているだけですよ…』
まぁ言うと思った
『あのぉ、その混沌様というのは、混沌の主で間違いないので…』
『主なんて秩序の呼び方をしないでもらえますか。主というのか勝手に決めた物。混沌様と呼ぶべきなのです…』
はぁ……
こいつが言っていることが本当ならば、何か裏にいる気がするが
これが全て妄言なのであれば、塵も残らぬほど木っ端みじんにしてやろう
『いかがですか?』
『……そうだねぇ、考えておくとするよ』
そう言った瞬間、一瞬空気が凍った気がする
『……どうぞ、目をお開き下さい』
その声を聞いて、私は目を開ける
『どうやら華寒さん。貴方は私と同じほど混沌を受け入れるようですね。この活動、向いていますよ』
『は、はぁ…』
『それでは、おやすみなさい』
そう言いながら、京は部屋から出ていく
…褒められている気がしない
だって、言っている事、洗脳に向いているよって言っているんだよ
褒められてないでしょこれ
ふと、横を見る
どうやらこの部屋にいるのは私だけのみらしい
さてと、私もあの部屋で過ごすか…
まぁ、普通に過ごすのもいいが、少しだけいたずらしようかな!
だって、混沌の主…いや
混沌様がやったことだもん、許してくれるよね
たとえそれが、憎き秩序の事でも……
よぅし、そうと決まれば、能力で遊ぼうか!
珍しく、目標を持って能力を使用することを決め、私は部屋に戻った
時刻は深夜二時
あれから能力で作りたい物の設計図を作り終え、今から寝ようとするところ
今日は王に謁見できる日というのに、ここまで起きていて、明日起きれるのかという不安の気持ちもあるが、なんとかなるという気持ちもある
にしても、京の問題は早急に片づけなければならない
勝手に私の名を使って信者を増やしている
ここまで勝手にやられていたんだ、どれほど長いかは分かっていないが、早急に始末しないとねぇ…
やっている事は主にケンカを売る事と変わりないからな
そんな事を考えていると部屋にノックが響いた
『どうぞ?』
私がそう言うと、扉が開く
そこには宮が居た
『おや、どうしたんですか?』
『少々部屋に入れてもらっても?』
『勿論どうぞ?』
そう言うと、彼女はこの部屋に入ってくる
扉を閉めた後、私に至近距離まで近づき小声で話しかけて来た
『貴方はあの洗脳を耐えられていますか?』
彼女が耳打ちしてきた理由があるかもしれない
という訳で、私も小声を通り越して、脳内に話しかける
いやぁ、この子が混沌の配下として認めていて助かるね~
『受けていません。こんなこと言うのもなんですが、あんなもので受けろと言うほうが無理です…』
彼女はその事実に衝撃を受ける
洗脳を受けてないこともそうだろうが、それより、脳内に響く私の声の方に驚いている様にも見える
彼女は驚いていながらも、声量を落として話しかけてくる
『えっと…それ、どうやって…』
『君も出来るよ。私の事を考えながら脳内で喋ってみて』
すると、彼女はしばらく黙る
やがて、脳内に声が響いた
『出来てるのかな…』
『出来てますよ?』
そう答えると、彼女の方が揺れる
『ありがとう。それで、催眠を受けていないって本当?』
『はい。というか、貴方もだったのですね』
『いや、自分はもう限界が近い。明日には……だから、貴方に王様へお伝えしてほしく…』
『…約束しましょう』
『ここ数年、父はずっと混沌様の事を考えていた。ある日突然、朝に父から混沌様の事を言われました。そして、ずっと混沌の力を頭の中に流され続けています。この部屋の二倍ほどの混沌が部屋に漂っていて、毎日あれが続く。父の子で変わりは無いので、混沌は受け入れきれましたが、それも限界……お願いです。貴方は王に伝えた後、逃げて』
『逃げなきゃならないので?』
『ええ。自分の遺書には貴方に最上級品を全て譲ることを明記しておきます。いずれ運ばれてくるでしょう。どう?』
『そうですか………一つ聞かせて…ください、混沌様…混沌の主についてどうお思いで?』
私が聞くと、しばらくの沈黙の後答えた
『……正直愛している。これは異端だと理解しているけれども、自分はこの力で鍛冶師の頂点の一名に成れた。考え方は納得できないけれど、その力と存在は愛している』
『そうかい、良かったよ』
『へ?』
『おっと失礼いたしました。それでは最後に一言だけ、遺書は必要ありません。運命とは頼み通りにも、予想通りにもなりませんから…』
そう言いながら、私は彼女の体に触れる
そして、少しだけ小細工を施した
小細工は後々発動するため、今は知らないふりをする
彼女は悲しそうな顔をしながら返事をする
『…ごめん、聞いてくれてありがと。部屋に帰るね』
『ええ。いい夜を』
そうして彼女はこの部屋を出て行った
さて、明日は面倒くさいことになりそうだな
まぁでも、一言告げるとするなら…
私はそこまで愚者でもなければ優しくもないという事だろう
そんなことを考えながら、私は窓から真っ暗な外の海を眺めた
どうもどうも
ようやく主らしい姿というかなんというか…
そもそもこの世界の主という者達は神みたいなイメージなんですね
ですから、宗教の様な物、あってもおかしくないですよね
ですが、混沌を信仰するとすると、魔物を信仰するやばい奴らですからね、今のところ
という訳で、頭のおかしい宗教が誕生するわけですね
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました
今後も、‘‘できれば‘‘お付き合いください!
お相手は九月三日の私、葉都でした
ということで、ではでは~




