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呪術恋愛戦線 山奥に隠れていた陰キャ呪術師の俺が都会から来た陰陽師美少女に狙われる異能バトルラブコメ  作者: 杉林重工
四章 燃えろ、羅生門

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と、いうことがあった

「……と、いうことがあったんです」


「いや、全然わからん。もう一度説明してくれ」


 罪斗罰高等学校、柔道場――の外。廊下。罪斗罰高等学校は過去に柔道で輝かしい成績を残したこともあり、柔道場なる金のかかった設備がある。合儀肺助と真壁動太はその中身の様子をちらちらと見つつ、ぼやぼやと話し込んでいた。別にこの廊下は隅というわけではないのだが、どうにも汗臭い場所であった。


「え、もう一度……?」肺助の顔に困惑が広がり、それを見て動太は笑った。


「嘘だ。正直、お前達の話は、おれからすると理解したくもないのかもしれないな」


「そう、ですか……」


「だが、そういうものだろう。お前達だって、ほら、あれを見ろ」


 動太は柔道場の中を指した。組み合った二人の生徒のうち一人が、えいやと見事に相手を投げて見せる。


「今の技、なんという?」


「全然わかりません」


「だろう? そういうものなんだ」


 わかったような、わからないような、肺助は唇をへの字に曲げるばかり。


「とにかく、おれはお前が元気そうでよかった」ばん、と動太は肺助の背中を叩いた。


「それはまあ、おかげさまで。聞きましたよ、銀杏の木の精霊が阿賀谷戸先輩を助けてくれたって」


「さあな。おれは銀杏の木の精霊じゃないからわからない。だが、あの女狐めが弱っていたからな。からかってやりたくなったんだろう」


 動太は鼻を鳴らした。それをしばしじっと見つめていた肺助は、意を決して言葉を発す。


「それから、真壁さん。ごめんなさい」


 そして、肺助は頭を下げた。突然の行動に、動太は思わず目を丸くした。


「いきなりどうした? おれは別にお前に頭を下げられる理由なんてないはずだ」


「いえ、真壁さんの告白、うまくいくように頑張りたかったんですが……」


 その言葉に、動太はつい笑ってしまった。


「馬鹿かお前は! そんなこと、どうでもいい。本人にも言ってやったが、あれは大した女ではない。いや、おれ向きではない、とでもいうべきか。とにかく、おれの運命の相手は別にいたようだ。出会ってもいないから、誰かはわからんが。お前こそ、いい女がいたらおれに紹介しろ」


「あ、はあ、もしもいたら……」


 肺助も、彼の笑いにつられるように顔を上げた。


「でもなあ、そんなことより今はスピーチの練習をしているんだ。折角だから会場中の客を泣かせてやりたいと思っている。どうだろう、最近は参考のために演劇をよく見るんだが、壇上だけでなく、会場を広く使ったスピーチというのも面白くはないか?」


「それは……よくわからないです。練習だったら付き合いますよ」


「馬鹿いえ、お前がいたら意味がない……まあいいか。とにかく楽しみにしていろ。バスタオルが必要になるぞ」


 なんのことやらさっぱりわからなかったが、肺助は浅く頷いておいた。


「それで、最近見ない気がする阿賀谷戸先輩はどうしているんだ? 先輩も元気じゃないと、おれのスピーチの意味がないんだが」


「阿賀谷戸先輩なら、今は……」肺助が丁度言いかけたその時であった。


「真壁、休憩長いぞ!」


 と、柔道場からそんな声が聞こえてくる。動太は短くしかし大声で、押忍、と返した。その声量に少し驚いている肺助を、動太はにやにやと見つめる。


「ま、いいか。その話は今度聞く。ところで、なんだが」


「はい?」肺助は首を傾げた。


「さっきからずっと敬語っぽいし、いい加減おれのことは相棒とは呼んでくれないのか? まさか、あの時の話、お前が忘れているだなんてことも無いだろう」


 さっきまでの自信たっぷりな様子が一転、どこか寂しげな表情を浮かべて真壁動太は言う。それがおかしくて、肺助は微笑した。


「大丈夫だよ。じゃあ、おれはもう帰る。柔道と恋愛、頑張れよ、相棒!」




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