31話 「作戦会議」
両親が家に帰ってくる約束の日となった。一昨日の月曜日から水曜にへと変わり、俺は両親に話すことを頭の中で整理している。
「そんな難しい顔しなくても、思ったことをありのままに話せばいいと思うけど」
「そういう訳にはいかないんだよ。ある程度の段取りはしないと。話す時に順序がめちゃくちゃだったらどうするんだ」
「まぁ……そう言われるとそうね。悪かったわ。それで、どんなことを話すの? ヨシが高校を卒業して大阪に行くっていうのと、イツキとタカハシの力を借りること?」
「それもある。それもあるけど……」
「けど?」
額に汗が伝う。眉間に皺が寄る。果たして、これは両親に話しても良いのだろうか。
「……お前が、吸血鬼だってことを、話しても良いのかなって……」
エンジュは口を挟むこと無く目を見開く。そりゃそうだろう。誰だって居候している女の子が吸血鬼なんて知れたら、気がどうかしたのと思われる。
朗らかで暖かく、家を息子一人に任せ気味な両親でも、首を縦に降ることは無いだろう。
「正直、話さなくても良いのか分からない。でも、将来のことを考えたら言っておいた方がいいのかもしれなくて……」
所在無くうつむく。エンジュは何か言おうとして、歯切れ悪そうに言葉を繋いだ。
「……言ったところで、ジンとミサキがどう思うかが不安ね。さすがにツキシロに告げ口するとは思わないけど、ヨシと離れ離れになる可能性だってある」
「その時は契約が無効になっちまうのか?」
「えぇ、私とヨシの縁が切れてそうなるわ。繋ぎ止める物が無くなったら、契約も自動的に破棄される」
「そうだったのか……」
「案外、私の契約なんて脆いものよ? 縛るものの規模が大きければ大きいほどその分強いけれど、つつかれると弱いところは一緒だもの」
エンジュが俺に契約の対価としたのは俺自身の人生だ。そう言われると、確かに彼女が作り上げた契約は強力だろう。トップクラスと言っても過言では無い。
しかし、肝心要な人生の節目になるとエンジュが編み出した契約は弱くなる、ということだろうか。
「だいたいは理解出来た。要は今が一番危機的状況だってことだろ? なんだ、俺もお前も危機的なのは変わらないってことか」
「そうね。で、私が吸血鬼だってことはどうするの? 正体を明かすのか、しないのか。早く決めないと約束の時間になるんじゃない?」
「……分かった、俺はエンジュが吸血鬼だってことを明かす。なんで、フォローは任せた。吸血鬼について一番知ってるのはお前しかいないんだから」
俺達の話を聞いていたんじゃないか、っていうくらいのタイミングでインターホンが鳴った。訪ねてきたのは紛れもなく俺の両親だということは分かってる。
俺は、俺達は。この話で両親とのケリをつけるしかないんだ。




