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30話 「こだわりと通話」

 日は跨ぎ、月曜日となった。本来ならいつも通り学校に行くところだが、隆司たかしに付けられた足の傷のせいで通学なんてまともに出来やしないと判断した。


 学校にはしばらくの間休むことを伝え、後に気づいて病院には行きたくても行けないことを悟る。こんな傷、正直に言おうが言い訳をしようが噂が経つに決まってる。


「足の痛みはどう? 少しは引いてるのだといいけれど」


「実はまだ痛む。歩けるには歩けるけれど、長距離は無理そうだ。なのでしばらくは学校を休む」


「それなら仕方ないわね。食事も作り置きかインスタントやレトルトになってしまうけど」


「……お姫様が買い物に行く手段もあるんですけどねぇ?」


 顔にしわを寄せながらエンジュを睨む。いくらお姫様とはいえ、何も出来合いの物ばかりでは不健康だ。というか俺のプライドが許さない。度は過ぎていないものの、俺は手作りの料理が好きなので、大抵の物は一から作る。

 ラーメンはカップ麺ではなくスーパーの中華麺を。カレーはレトルトでは無く市販のルーを使ってアレンジする。

 

 とにかく、料理は心のこもった物がいい。俺の中ではそれがモットーなのだ。


「あら、この私に動けって言うの? 良いご身分ね」


「その代わり美味しい食事は約束するから頼む。食費もまだあるし、そもそもお前は居候の身だろ?」


「しょうがないわね。分かったわ。契約を交わしたもの。それくらいは大目に見てあげる」


「助かる。エンジュ様様だよ」


 俺の安堵した表情を見て、エンジュは誇らしげな顔をする。そんな所も可愛いな、等と思いながら俺は密かに両親へ思いを馳せた。



◇◇◇


 夕方。エンジュが買い物へ行っている間に俺は両親に電話をかけることにした。厳密に言えば母親の方にだが、この際どっちでもいい。


「もしもし、母さん? 悪いな、忙しいのに電話しちゃって」


「あれ? 吉? 突然どうしたの。母さんが恋しくなっちゃった?」


「違うぞ!? その……父さんと母さんに大事な話があるから、明後日には家に帰ってきて欲しいと思って。……主に将来のこととか、俺とエンジュのことなんだけど」


「……。そっか。もしかして、その様子だと相当悩んじゃってるみたいだから、早めに行くね。その代わり、美味しいご飯ご馳走するんだぞ〜!」


「う、わ、分かったよ! 分かったから姉みたいに振る舞うのやめろって! 今いるの職場だろ? 恥ずかしいからやめろ……!」


「なははー、ごめんごめん。本当なら今すぐにでもよしの頭を撫でたいくらい。じゃあ、そろそろ切るね。電話してくれてありがとう」


 そんなことを言われて、母さんの方から電話を切る。何でもない礼のはずなのに、俺の目頭は熱くなった。


「……ありがとうって言うのはこっちの方だよ。馬鹿」

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