視察先で
「視察は上手くいったの?」
「何の問題もない。色々と見て回れたし、話も聞けた。向こうの王太子とも話をした結果、このまま進めていけそうだ」
「あちらでは第三王子の訪問に不満の声は出なかったの?」
「最初はそんな雰囲気もあったが、まずは信用に足る人間だと思わせる事が大事だから簡単ではなかったよ」
「大変だったのね」
「王太子は俺より若いのに頭の回転が早くて切れる人物だ。厄介なのが、こちらの人手を想定より多く出す事になりそうなところだ」
「おもしろそうな方ね。私もお会いしてみたかったわ」
「やめておけ。あの王太子はできる人間だが、下半身も元気なようだから」
「ジェシカのところの王子のような男なの?」
「それ以上だ。妃の他に愛人がたくさんいて、パーティーでその女達を紹介された」
「公式の場に愛人を出席させるなんて、その王太子は信用できるのかしら」
「だから言っただろ。あの男の上半身と下半身は別の生き物なのさ。仕える人間達もわかっていて見て見ぬ振りするのだから」
数週間の視察から戻って来たアシュリーと久々の寝室。
それでなくても一人寝の方が多いのに、彼がいない間はそれがすっかり当たり前になっていた。
アシュリーは月の半分をあの女の邸で過ごす。だからもしかしたらすぐにそちらに行ってしまい、一人寝は続くのかもしれないと思っていたのに、帰って来たのはシャロットがいつも寝る夫婦用の寝室だった。
むず痒いような、くすぐったいような、つまりは嬉しかったのだ。
今回の視察目的は観光資源についてだった。
あの国は土地が豊富に恵まれていて、他国からの貴族の訪問客の呼び寄せは近隣諸国では群を抜いている。その為、得る財を民の暮らしに還元できる余裕さえある。つまりは大国だ。
一方のサルスタジア王国は小国ではないものの彼の国とは雲泥の差がある。
資源に乏しいのだ。現在、森林は他国より多いはずなのに収入源となる形ができていない。
近々の課題はその模索といったところ。
そこであの国の現状を視察して参考にし、会談次第で協力関係を結ぶ可能性を模索しようというわけだ。
その結果、これまで数度の視察を重ね、話し合いの席を設けた。成果としては引き分けとはいかなかったが。
やはり大国の方が力も説得力も上なのだ。
失敗ではないが、利得と負担をバランスで考えてもサルスタジア王国の方が比重が重くのし掛かる。
だが、数年後の未来は大国と小国の差はあれど、五分となり得るはずだ。
というのも、あの国には優秀な武器職人が多く、力の無い周辺諸国は頼るしかない。金も権力も有する割合の高い国に対して刃向かうのは自分達の首を締める事に繋がると誰もが知っている。
ところが兵力の高くないあの国はその規模も小さく、剣の使い手が少ない。ほとんどが銃ばかりで接近戦に弱い。
人材不足と、攻め入って来るはずがないという考えが要因でもあるのだろう。
今となってはそれも昔で、国力の上がった周辺国が格段に増え、ようやく危機を感じ始めたのか胡座を掻いている場合ではないと至ったわけだ。
そこにサルスタジア王国の登場となる。
ここは四方を他国に囲まれ、昔は攻め入られる事が多かった。険しい山々を登らずに楽して平坦な交易路を利用するには通行料を納めなければならず、サルスタジア王国周辺国にとっては頭の痛い問題となっていたのだ。
国を守る為に小国なりに兵力を高めた結果、今では他国より郡を抜いている。
あの国はそんなサルスタジア王国から兵を駆り出して、自軍の強化作戦に出た。
「それで? 貴方ほどの男性がずっとどなたとも遊ばなかったと言うの?」
「ウィリアムの代理だったのだぞ。あいつの顔に泥を塗るような真似ができるか」
「代理……ね」
――その彼はミーガンとお楽しみだったというのに。




