愛も縁も出会いも想いも
もうすぐ婚姻の儀から一周年。
王宮では大広間にて着々と準備が進められている。それはもちろん、アシュリーとシャロットの為の祝賀パーティーだ。
招待客は様々で、サルスタジア王国内外から私的関係者まで大勢集う予定。
その中にはシャロットの両親や妹スタシア、弟ルイも含まれている。
十一歳になったルイに次期伯爵としての自覚が備わって来たという話は実家からの文で聞いてはいたが、それが日頃の勉学だけでなく、立ち居振る舞いに対する意識も王子妃の弟という周りの視線がそうさせているのかもしれない。
そんなハリス家、両親の目下の悩みはルイの婚約者探しだ。
というのも、シャロットが第三王子妃になった事から周囲が騒がしくなり、ルイと年頃の合う令嬢を娘に持つ貴族連中が毎日のように顔を見せるのだとか。
中にはルイより遥かに年上の、令嬢とも言い難い女性や食料庫が数日で空になりそうな素晴らしい肉体を持った問題外まで。
親としては息子に似合う令嬢を選んでやりたいはず。それはシャロットも同意見で、弟に相応しい令嬢でなければ困るというものだ。
パーティーではルイや第二王子のレオン目当てが目を輝かせるだろう。おそらくは他国の王女や令嬢方も顔を見せるはずだから。
レオンはアシュリーより一歳年上。年齢的には婚約者や妃がいても、或いは恋人や想い人がいても可笑しくない。
なのに色気めいた噂は何もなく、予定もないと言う。
国王夫妻は頭をひねっているのではないだろうか。
どうしてレオンには色恋の話が持ち上がらないのかと。唯一の独身なのに。
ルイ以上に牽制し合う令嬢方は多いはずで、選び放題遊び放題だ。
ところが当の本人はめぼしい相手がいないだのその気になれないだの、兄弟に挟まれた自分だけが独身なのは楽しいものだと笑って言うのだ。
レオンの人柄は誰もが口を揃えて、尊敬に値する立派な王子だと褒め称える。
もしもこの国の王子が彼一人だけだったなら、間違いなく歴史に名を残すほどの王になったはずだと確信を持つ。
そんな事を実際に言えば白い目で見られるのは絶対で、さすがに心に留めるのみなのだが。
シャロットは聞いた事がある。
『どうして結婚なさらないの?』
すると、レオンは答えた。
『愛は一つしかないのです』
告白でもされているような、妙な気分に浸ってしまった。
真剣な目瞳で見つめられたら、どんなに恋愛経験者でも虜だろう。例え、そこに意図した想いがあろうとなかろうと。
パーティーで妹スタシアはレオンに近づくはずだ。
彼女にはまだ決まった婚約者がいない。縁談も求婚も毎日山のように届くのに決めかねているのは欲張りのせいか、誰かを待ち望んでいるのか。
――贅沢なのよ、スタシアは。まさか本気で狙っているわけではないわよね。
アシュリーの話では、招待客はスタシアに会うのを楽しみにしているという。
悪女で名高いシャロットを姉に持つ妹を間近にする機会なのだ。
姉と同じく、妹もそうなのか。或いはやはり誰かの愛人なのか、或いはシャロットの実像は。
殿方だけでない。息子を持つ年配の、もしかしたらそうなるかもしれない想像で一杯の女性達の間で、しっかり吟味すべしとの声が広がっているのは間違いない。
――どう思われているのか知っているわ。ただ、少しでも王家と繋がりを持ちたい人間にとってはいかに機嫌を取るかが重要なのであって、排除する関係は望んでいないのよ。
もう一つの問題、それは公爵令嬢キャサリンだ。
彼女の気持ちはアシュリー自身も知っていて、これは周知の事実と言える。
今でも二人の結婚を否定していて、彼を諦めようとしない。いや、諦めたくないのかもしれない。
婚約者を持ちたがらないのはだからこそなのだ。
――きっと私が苦しめているのね。
別荘でのあの件以来、アシュリーはシャロットとの間に家族を作りたがるようになった。
それが本心なのかどうかはわからないが。それでもシャロットを引き留めたい意思が感じられのは偽りではないだろう。
まるで言葉の代わりに出した答えだと言わんばかりに。




