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語る脳子と、綴るは我子  作者: 木ノ倉ラ
二節 皇都剣戟
22/43

2-5 蒼髪懐疑/メキアスーシア

Δ



 時は遡って皇都エルトリアム。その中央部である皇城ラングリアには大量の国属兵と騎士、それに皇国剣術士が配備されていた。巨大な蒼の壁を埋め尽くすように鋼の集団が連なっている。ハオンの光が彼らの鎧に反射して、町中に無数の反射光を映していた。それを眩しげに見ながら皇都騎士団、副団長フート=マルヴィスは言う。


「暇だよなぁ」


 男の齢は三十五歳。乾湿戦争をローレンやラツィオと共に戦った戦士である。剣の腕は上級。されど二つ名はない。


「仰る通りで。フート様」


 ぼやきとも付かぬ独り言に返したのは、騎士団四位のミトルである。このローレンの直属の皇都騎士団はこの場から動くことができないでいた。何故ならば現在、皇都の全兵には騎士、兵卒に拘わらず待機命令が出ているからだ。その理由はただ一つ、今日の十五時よりラングリアで行われる皇貴会議である。全ての兵はその警護の為に宮殿に集結するよう命じられていた。


 ここにいる、皇都騎士団を除いては。


 いや、正確には団長であるマルス=ルーリアだけは会議の警護に当たっていた。騎士団は名目上皇都の守備に当たる、ということで宮殿警護を任されていないが、奇妙なことに、彼らが皇都の警邏を行うこともまた禁じられていた。皇都の市街地区を任されながら、少しの行動も認められない矛盾。実質上の本部待機という形になる彼らは、不信と不満を募らせていた。


「ひょっとして、ローレン殿下が負けたのだろうか」


 苦虫を噛み潰したような顔で、フートが言う。彼は思った以上に、自身が焦っているのを感じていた。


「なんとも言えませんね。ラツィオ様がおられる限り、大丈夫だとは思いますが」


 ミトルが自信なさげに言う。正直なところ、この奇妙な状況はローレンの失脚としか思えなかった。でなければ、かなり大きな集団による組織的な策謀といったところだろう。もし仮にこれが何らかの陰謀だとすると、その黒幕はただ一人しかいない。


「デルフォイは当主も息子も切れ者だからな。分からんぜ」

「国防に深く食い込んでいらっしゃいますし、あり得なくはないですね」


 デルフォイの長男であるルスラ=デルフォイの得ている地位。それは驚いた事に、国属軍の第三管理官であった。管理官は国属軍の最高統括者である皇王に次ぐ地位である。第八まで存在する管理官の内の第三位。


 それはデルフォイの権力を以てすれば、有事に軍を動かせるということだ。この地位はどう考えても異常であり、フートも最初は嘘だと思った。されども、時間をおいてもこの決定が覆ることはなく、ローレンはその軍事力でも、デルフォイに後れを取ることとなった。何しろ、国属軍三十万に対して、皇都騎士団は僅かに千二百である。


 ラハリオがこのような奇妙な勢力図を作り出した目的は分からない。だけれど、皇王が意図を以て、それをしたことをフートは信じていた。一体、あの剛腕爺は、自分の息子を追い詰めてどうしたいのだろうか。それとも、そこまでしても、デルフォイと手を結びたかったのか。理由ははっきりしないが、そんなことでローレンを負かす訳にはいかない。


「ミトル、ラングリアに異常はないか?」


 フートは怠そうに、されど油断なく、言った。ミトルが窓から身を乗り出し、皇宮に眼を凝らす。と、何かを見つけたように、声を挙げた。


「副団長、ラングリアの乾部居住区で煙が立ち昇っています」

 

 フートが急いで、石造りの窓際に寄る。白い漆喰で服が汚れるのも厭わずに、彼も身を乗り出す。煙。それも不吉な『黒煙』が、あの地域を覆っている。直ぐに、フートは室内に駆け戻り、机上の術式板を手に取った。急いで番号を書き込み、微量の魔力を板に込める。繋ぐ相手は、まさにローレン=ノーランである。


 だが、それはまるで何かに阻害されているかのように繋がらなかった。まさか、エルミスタットにも障害が起こっているのだろうか。フートは知る由も無かったが、この時、ローレンは皇宮にいた。執務室でルハランに剣を突き付けられている頃である。転言が繋がらぬ理由など一つもなかった。


「これはどういうことだ」

「フート様、探気を行いましたが、どうやら何者かが争っているようです」


 なんなんだ。フートは悪態を吐いた。この皇都の条例にも私闘の禁止は書かれている筈だが。


「待って、これは、」


 何かを感じ取って、ミトルが顔色を変える。恐ろしいことに気付いてしまった、と言わんばかりだ。その直ぐ後に、フートもそれに気付いた。


 皇都を常に覆っている筈の剣王の剣気が、消えた。敏感な者ならば、市民でも気付くであろう其れ。その消失に、フートもミトルも驚きを隠せなかった。恐らくは、何らかの理由で剣王が自身の邸宅を離れたのだ。それによって、甚大な剣気の維持が不可能になった。つまり、この黒煙は、剣王が邸宅を離れるほどの争いなのだ。


「そういえば『捨剣』の女が戻ってきたという噂が流れていたな」

「リアト様ですか」

「彼女が関わっているかどうかも調べねばならん」


 騎士団として、何らかの策を講じる必要がある、とフートは思った。だが現状では騎士団は禄に動くことが出来ない。故に、彼はミトルに命じる。


「仕方ない。傭兵連中に連絡を取れ」


 ミトルが術式板を操り、素早く、連絡網を展開させた。このような事態が起こりうることを団長は想定していたのだろう。皇都騎士団は有事の事態に備えて、傭兵との繋がりを作っている。


 それも通常の傭兵たちだけではない。仮に組合も抑えられた場合を想定した二段構え。ミトルが連絡を取ったのは、五馬遊先の卑賤兵たちだった。


 誓約がある限り、騎士団と言えども、上に逆らうことは出来ない。ローレンと個人誓約を結ぶ傍付きであれば良かったのだろうが。ひょっとして誓約を抑止力にする為に、皇王ラハリオはラツィオを騎士団にしようとしたのか、なんとなく思いついた、旧友の処遇に関する洞察は当たっているようにも思えた。


「俺たちも体勢を整えておこう。ローレンからの連絡があり次第、動けるようにな」


 遠くで上がる、魔法らしき破裂音を聞きながら、フートは言う。その不安げな眼には、巨大な蒼い城と黒い煙が映っていた。騎士団の二人はゆったりとそれを眺めていたが、次第に音は止み、黒煙も消えていった。そしてローレンからの連絡は未だに一つもない。そのことは確かに奇妙といえば奇妙ではあったのだが、この時点ではまだ皇都は危機的な状況にはなかった。


 そして、ハオンの力だけが増していく。

 だが強い輝きの下ではたくさんの影が生じるものだ。

 このエルトリアムとて例外ではない。



Δ



 そこはひどく臭いように思われた。

 リアトが最初に感じたのは、強烈な臭いだったのだ。


 それだけで、彼女はここが第五都市ティノールだと分かった。

 これは藍神鋼を製鉄する際に用いられる、黒皮熊の血液の臭いだ。


 第五都市ティノールは皇国の都市では比較的新しい街である。とはいえ、この街が建設されたのは約二百年前。当時の湿部は政治的に安定期であり、国内の産業を発展させるだけの余力があった。時の皇王は皇国内を隈なく調べさせた上で、ラオン河が二手に分かれる所のその間、つまり本流と派川の間に大規模な平面都市を築いた。その都市こそが現在のティノールである。


 この街はその地形を活かして鋼の精錬を主産業としていた。上流のアディアラ山脈周辺で取れる鉄鉱石や魔鉄石、ラオン河の流れに乗った其れをこの街で精錬するのである。特にティノールでは、藍鋼の精錬に用いられる黒皮熊の血が手に入りやすい。それ故にこの街では『藍神鋼』の生産が盛んであった。


 その、魔獣の臭い。独特な苦みのある腐臭が大気中を漂っている。眼を開けば一筋の光が目の前を横切っているのが見えた。薄汚れた格子窓からハオンの天光が射し込んでいるのだ。辺りを舞う埃が其れに照らされて、半ば幻想的な雰囲気を醸し出している。どうやらここは屋内のようだった。それも今は使用されていない倉庫か何か。床には大量の埃と真新しい足跡。まだ埃のつもっていない其れは『骸』の物と思われた。


 と、背後のローレンが彼女に声をかける。


「痕跡はあるか」


 リアトはしばらくの間、床の埃に眼を走らせていたがやがて首を横に振った。


「足跡は幾つかあるがイルファンのものはない。髪の毛も見当たらないから恐らくは物理的に残るようなものは何一つないのだろう。悪いがお前に任せることになる」


 ローレン=ノーランはそれを聞くと、すぐに浄眼を開こうとした。とはいえ、剣術士でない彼は闘気の扱いが不得手である。その為、ローレンは靈力を顕現する代わりに懐から一枚の術式板を取り出す。奇妙なことにその術式板は硝子で作られているように見えた。剣術士の『剣輪』よりも一回り程大きな其れは金属で補強されている。上級市民や商人が好んで用いる眼鏡に似ている魔道具だった。


「なんだそれは」リアトが問うた。

「『視鏡しきょう』だ。乾湿戦争時にはまだ殆ど用いられていなかったが、オノバル=ラクトリアスはお前にこいつを教えなかったのか。いや、待てよ、あの男はオプティクスも靈気浄眼も使うことが出来たのだったか」


 ローレンは『視鏡』を片目に付けて言った。術式具をつけた瞬間に、男の目の周りを呪式がくるくると取り巻いた。何らかの魔術が発動した、とリアトは勘付いた。


「呪界を視る為の道具だ。今の私は感覚的魔法行使能力(識)を失っているから、『視る為の魔法(オプティクス)』すら使えない。つまり、こいつが私の眼の代わりという訳だ」


 ぱちり、とローレンの右目に魔力が奔り、術式陣が起動する。と、同時に彼の眼が薄ぼんやりと発光しはじめる。『視る為の魔法(オプティクス)』は四原天獣に属さない『若い魔法』である。それ故に燐光は無色透明、ただ魔光のみの純粋無垢な銀色であった。ローレンが言う。


「靈力を送還しろ。眩しくて何も見えん」


 その言葉に従って、ルハランとリアト、それにレアーツは靈気を還した。強大すぎるその靈力が、ローレンが呪界を視るのを妨げていたからだ。光り輝く白色光が一瞬で霧散し、呪界にも闇が戻ってくる。それを見てローレンはにこりと笑った。


「何が見える?」リアトが問う。


 ルハランとレアーツは既にその魔道具を知っているらしく特に興味もないようだったが、彼女はその道具に心を惹かれた。男の、銀の眼は何処か遠くを見ている様に虚ろである。恐らく今、彼は限りなく近い違界、第二界を視ているのだ。とはいえ、浄眼で視える光景は正確には視覚映像では無い。むしろ、それは五感を超えた直接感覚的な把握であるだろう。


「浄眼と同じく呪界が見えるのだ」


 だが、それはリアトの求める答えでは無かった。


「痕跡はあったかと聞いている」


 ローレンはしばらくの間、黙り込んだ。彼女の問いには答えないままだ。と、彼はおもむろに、硬い混凝土の床に指先を走らせる。その表情はまるで獲物を見つけた狩人のようだった。男の冷たい目に、好奇心と嗜虐の色が浮かびはじめる。ローレン=ノーランは瞳に愉悦を宿したままで独り言ちた。


「――『無形』の対靈撃術式陣だ。高位の術式士が噛んでいる」


 レアーツはそれを聞いて、訳知り顔で言う。


「ロンティエルは既に牙を剥いた」

「この脳みそ遣いは確かに熱部系統の術式技術だよ」


 ローレンが静かに、されど興奮を抑えきれないとばかりに語る。今の彼はまさに術式狂いであった。しかし、狂っていない者にはその思考は分からない。リアトは困惑して、彼に尋ねた。


「転移術式陣を見つけたのか?」

「あぁ見当は付いたぞ。この、三重構造になっている混凝土の壁、その奥には恐らく隠蔽結界術式陣が刻まれているのだろうよ。それも私に匹敵する術式士の手に因ってな」


 リアトはそう言われて、すかさず、壁の奥へと靈気を放った。されど、彼女の研ぎ澄まされた感覚器官を以ってしても、違和感は見つけられない。この壁が術式陣を隠す為に作られた代物であるようには全く思えなかった。一体、ローレンは呪界において何を見ているというのか。彼と自分が見ている物、其れが異なる事をリアトは理解した。


「壁を壊せばええんか?」


 ルハランがすっ、と前に出ると同時に剣を抜き放つ。だが、ローレンは弟の剣腕を素早く掴んで、それを止めた。如何にも不愉快なものを見たとばかりにその顔は苛立っている。ローレンは棘を言葉に込めて、言った。


「短絡的な奴め。『無形』の隠蔽術式だと言っただろう。それを解かずに不用意に壁を壊せば、呪界に仕掛けられた空想魔術式が発動して、部屋は圧潰してしまうだろうよ」


「『無形』?」ルハランが言った。

「認識面に干渉する術式記述法だ。傭兵言葉では空想術式というのか。乾湿戦争に参加していれば今までに一つや二つは見たことがあるだろう。『空門』もその一つなのだからな」


 空想術式ならばルハランでも知っていた。迷宮や高位術式士の作った古代魔道具メキアスーシアに用いられている術式。所謂、『記述されない術式』のことだ。それは剣術士には解くことのできない認識記述型の術式陣であり、破壊どころか触れることすらできないものである。


§


 古代魔道具『メキアスーシア』はバルニア帝国以前の時代、それよりも遥か数千年前に遡る頃に存在した古代人が遺した宝である。彼らは、主に魔術式技術に秀でた民であって、その遺物はどれも一級魔術品である。一説には魔術式を発明したのも彼ら『メキアスーシ』の民であるとも言われている。


 これは即ち、古代世界に於いて、第十一界に法則を刻示したという事を意味する。違界への法則刻示は現代に於いては高位呪術師にも不可能な難事であるが、数千年前は人類の違界認識に大幅な撓みがあった為にその難度は低かった。あらゆる、呪界に精通した人々が好き勝手に世界への刻示行為を行い、結果として、世界に氾濫した刻示が人類を堕落させる多様な下位法則を生み出した。


 人間は働かずとも食べずとも、性交せずとも生きられるようになり、世界の拒絶者たる不老不死の者共が道楽の為だけに生き続けることとなった。この古き人々こそフォルド神話で『不死の二十四氏族』と語られる者ども、天の子『ティア』である。


 メキアスーシの民もその不死の民の一つであったが、しかし彼らは、自身が世界の拒絶者であることに反発する十界法則を見出したと言われている。メキアスーシの民は正しい世界の在り方(その存在を認めない民族も多いが)、其れに従わんとして世界への刻示行為を全て、天の元へ返そうとした。人間存在の虚無こそが、真なる魂の死(もっとも魂は不死だが)であると悟り、彼らは肉体の死で以って、致命的な魂の死を回避しようとしたのである。


 彼らは天との交渉によって、不死に関わる刻示を全て認識外に追いやった。呪界と実界が混ぜ合わさった人の界では、認識こそがあらゆる世界を規定する。それ故に、人間は不死という堕落から解放されて、再び死を迎える事となった。


 但し、メキアスーシの民は刻示法則の全てを否定した訳ではない。特に術式陣等の魔法法則に関しては、彼らは積極的にそれらを保護した。術式技術を始めとした、理による法則を彼らは好んだ為である。メキアスーシの価値観では理に従って生きる事のみが正しい事であった。彼らは理性に基づいて判断を下すことを推奨し、術式技術もまた奨励した。


 彼らが遺した古代術式具、即ち『メキアスーシア』は今でも残っている。メキアスーシは自身らが制作した魔道具全てを厳重に保全しようとした。術式具に『無形』に刻まれた返還術式はメキアスーシアの、民への帰属を表す。それ故に、大陸の王達は強大な力を持つそれらの魔道具を使えなかった。メキアスーシアは大抵の国々に於いて宝物庫の隅に追いやられていたのである。


 その状況が変わったのは、バルニア帝国の時代である。優れた術式技術を持っていた彼らは、古代魔道具の起動に挑んだ。『無形』、つまり術者の認識によって呪界に刻まれる空想術式、その浸食と上書きにバルニア帝国の術式士たちは成功した。これによりメキアスーシアは歴史の表舞台に、現れることとなった。


 この古代魔道具は、一見した所、ただの道具にしか見えない。何故ならば、通常の術式具にある筈の『刻まれた術式文字』が無いからである。前述した通り、メキアスーシアは認識による『無形術式』で規定されていた。道具に宿る、強大な魔術は道具の作り手である、呪魔術式士の認識に依存する。通常の人間では到底成し得ない強固な認識は、世界に道具の存在を刻み込み、形である術式記号/文字に依存しない『無形』という技術を生み出した。


 これにより、術式具の最大の弱点である術式の破損による暴走は防がれた。世界自体にその術式を記述するという方法で、古代人は道具を守ったのである。だが普通の道具に見える、ということが悪く働く場合もあった。


 例えば、古代バルニアには一つの儀礼用古代魔道具があった。これは使い手の魔力を吸い上げて、あらゆる罪を裁く断罪の剣となる物であった。だが、その剣名や秘めた能力は帝国崩壊後の長い年月と共に忘れ去られてしまう。


 この剣が次に発見されたのは、都主戦争後の乾部の小さな王朝である。砂漠の王は清廉潔白、非の打ちどころの無い、まさに聖人と謳われる人物だった。この王や魔術師達はこのメキアスーシアをただの短剣だと信じ込んでいた。故に、砂漠の商人から買われた美しき断罪の剣は十八歳の若き王子の成人儀礼に用いられることとなったのである。


 だが、伝えられている話によれば、この王子は幼少期に数多の獣を虐殺していたという。砂漠の国のメキアスーシアは成人儀礼に於いて、その力を遺憾なく発揮した。指先を僅かに傷つけただけの王子は、獣と同じように四肢をばらばらに裂かれたのである。この剣は犯した罪と同じ苦しみと痛みを罪人に与える剣であった。王は嘆き悲しみ、同じ剣で自害しようとしたが、剣はその刃を隠してしまった。刺せども斬れども、王の穢れなき皮膚からは僅かの血も毀れ出なかったという。


§


「そんなものまで使えるのか」


 ルハランが驚きを隠さずに言った。彼は兄の才能の存在を知ってはいたが、その程度に精通しているわけではない。国内の術式士を圧倒するとは言えども、所詮は魔法士よりも下位の存在と思っていた。それが恐ろしきメキアスーシアに並ぶものさえ手中にあるとなれば、これはとんでもない話である。


「古代魔道具級の物は無理だが、既存の魔術を組み込むだけなら私でも可能だ」

「驚いたな」ルハランが言う。

「大したことではないぞ。他にも出来る者はいるからな」


 とはいえ、それは湿部でも五人に満たなかったが。


「よし、綻びを見つけた」


 呪界と実界に跨って巧妙に隠されているもの、転移術式陣への隠蔽結界を剥がしながら、ローレンが言った。彼は中空で指先を小刻みに動かして、それを解いていった。その仕草は彼が魔法士であった時の名残。ローレンが師匠から教わった魔法の構成法だった。まるで何かを描くかのように彼は呪界に干渉していく。指先から零れる魔力が徐々に空間に溶け込んでいった。その不可視の力は呪界に張られた『無形術式』を解く為のもの。情報を認識面に伝える媒体である。


 ローレンは指先をくるくると廻して、眼に視えぬ何かを引き上げる。それは術式士にしか分からぬ領域のことであった。リアトには、彼がまるで絵画を描く芸術家のように見えた。繊細な手つきでローレンが扱う物は一切の歪みを認めない呪だ。この世界そのものに刻示された術式法則。それを、この男は解体、再構築しようとしている。誰も彼を邪魔しまい、と一言も発しなかった。


 だがそのとき、ローレン自身が静寂を破った。


「剣王、すべての情報の開示を要求する」


 彼の言葉は、何かを暗に示しているような響きを帯びていた。レアーツだけが知り得る情報、その存在を示すような。リアトが思うに、兄は間違いなく自分よりも多くの情報を知っている。この件の全体像も、裏にいる人間たちも目的も、全て。ローレンはそれを彼から引き出したいのだ。都主たるローレンも優秀な密偵を持っている筈だが、それを以ってしても分からぬことがあるに違いない。


「よかろう」レアーツが言う。

「嘘偽りなく頼むぞ」ローレンが答えた。


 剣王レアーツ=ルーミンはにこりともせずに語り始めた。彼の話は、簡潔に纏められていた。


「俺が知る限り、この件に拘わっている人間はデルフォイの子供らと『骸』、そしてさらに二人の『裏王剣』だ。事の発端は、俺がイルファンとリアトを呼び戻したことだろう。彼らは兼ねてより眼をつけていたイルファン=バシリアスに狙いを付けて、皇都にて彼女を拐した。結果としてアルトは半死半生。『骸』は満身創痍で逃亡している」


 それに対して、ローレンが憮然とした顔で言う。


「『骸』を使う為にわざわざ『脳子』に攻撃を仕掛ける程、彼らはあの少女に惹かれている。答えて頂きたい。あの少女は何者……いや違うな。彼女は一体、何なのだ」


 リアトは兄がその質問に答えない事を知っていた。イルファンが誰によって作られ、誰によってその苛烈な運命を背負わされたのか、彼女は知っているが故に、兄がその秘密を隠し通すことを分かっていた。少女に纏わる情報、その全てが国の機密であり、兄の切り札だった。レアーツは何も隠し事はないとばかりに、ローレンをしっかりと見つめて言った。


「ただの少女に過ぎんよ。彼女の父は『剣獣』虎にも似たヴォファン=バシリアス。あの属さない剣術士の遺児というだけでしかない。彼女の価値は、それと琥珀髪だけだろう」

「剣王よ。そんな少女をデルフォイの子供達が狙うと、本気で思っているのか」


 ローレンは虚空を見つめたまま、口元に笑みを浮かべて、そう言った。その間も、男の指先はせわしなく動いている。『雲指』とリアトは思った。まるでふわふわとした宙空の雲をなぞる様に、彼の指先は踊る。同様に、彼の言葉もまた、答えられない疑問として、宙に浮かんだ。レアーツはローレンの問いに対して、沈黙を貫く。だがそれこそが、イルファンという少女の特別性を開示していた。


「そも、何故、其方は此度の件をそこまで知り得ている?誰から情報を得ているのだ?」ローレンが問い詰めるように言う。


「俺の密偵は至る所におるのだ、ルハラン=ノーラン、お前も知る様にな」


 そう言うと、レアーツはちらりと、ルハランを見た。第二皇太子の顔には、皇族とは思えぬ程の陰がかかっていた。彼は少しだけ、間を空けてから、答えた。


「レアーツ様、ベルメーラの事ならば気にはしておりませぬ。元々、彼女は貴方様より与えられた護衛剣術士ですからな。このような事もあろうと予想はしておりました」


 彼の絞り出すような返答を聞いて、ローレン=ノーランが笑った。ほんの数時間前までは、ルハランが彼を笑う側だったと言うのに、今では、ローレンは弟を完全に見下して、愚か者め、と嘲笑していた。


「腹が捩れるわ、ルハラン。貴様、また女に現を抜かしておったのか」

「黙れ、ローレン=ノーラン。仲間に裏切られる事の苦しみはお前も知っているだろう」


 次の手番はリアトだった。彼女はルハランを哂うローレンを諌めた。もう既に彼女の腸は煮えくり返っていた。リアトは知っていた、ルハランの精神状態は良いものでは無い。助けられた身で言うのも奇妙な話だが、彼は弱っている。この上、ローレン如きに、彼を馬鹿にされたくはなかった。


「リアト、お前も何も思わんのか。この弟はお前と護衛女で二又を掛けておったのだぞ」

「そんな事は十年以上前から変わらん。ルハランは女癖が悪いからな」


 愛する女と兄、その両方から鋭い言葉を投げられて、ルハランは心臓がきゅぅ、と縮まるのを感じた。彼とて分かっている、自分はどうしようもない阿呆なのだ。女にだらしがなく、いや、それは敢えてそうなのだが、だらしがないことを演じ続ける自分には嫌気がさしていた。本当は女など興味も無い、と思う自分もまた居るのだ。


 ルハランは自身を俯瞰して眺めるもう一人の冷めた自分、その存在に気付いていながらも、何もして来なかった。漫然と、今まで、求められた自己を演じてきた。その事に自分が耐えられなくなっている事、それをリアトとローレンに打ち明けたくて仕方が無かった。


「私とて、好きで、女と寝ている訳ではない」


 ぼそりと言ったルハランの一言を、ローレンは嗤った。


「たまげたな、この台詞を女どもに聞かせてやりたくて仕方がない」


 流石のリアトも、彼の今の言葉を擁護してはくれなかった。レアーツが話をさらに変えようと、一言何か言おうとした。だが、ローレン=ノーランは其れを許さなかった。彼は基本的に何かが抜けているが、今回だけは確信を以って、剣王を攻撃していた。


「さて剣王よ。先程の問いだが、密偵では説明が付かぬ。裏切った裏王剣の人数まで、何故、其方が把握しているのだ。このままでは、私も弟も其方に協力することは出来ぬぞ」


 レアーツは、この問答にうんざりしているようだった。

 彼は、首を微かに横に振って、苛立ちを示した。


「弟も?ルハランの思惑などお前は知るまい」

「答えぬつもりか、レアーツ=ルーミン」


 話を逸らそうとしたレアーツの言葉をローレンが容易く砕く。弟を都合よく使おうという、その手口を二度も使わせるつもりはない。ローレンは静かに言葉の刃を放った。


「まさか其方、この私を失脚させたい訳ではあるまいな」


 その言葉は部屋の空気を凍り付かせるだけの力を持っていた。ローレン=ノーランによる、唐突な宣告。敵味方を逆転させる、強烈な告発。何を根拠にしているのかは分からない、だが、ローレンの声には強い確信の色があった。間違いない。彼は何らかの事情を知っている。知っていて、剣王レアーツに協力したのだ。その情報を引き出す為に。


「事情は知らんが、私が協力せねば、イルファンは手に入らぬぞ」


 さらにローレンが追撃する。彼は、言葉による脅しを行なっていた。レアーツが沈黙する。リアトが代わりに答えた。


「兄は自身の利益を最大化する人間だ、デルフォイに協力する理由は無い」

「そんな事は分かっている。少女を攫うのに、デルフォイを使う必要は無いのだからな。だが、この男が敵方の誰かと繋がっている可能性は多分にあるのだよ、分かるか?」


 ローレンは指先に付いた埃を払いながら言う。既に隠蔽結界術式陣は殆ど、解いてあるらしく、態度には余裕が滲んでいた。


「リアト、剣王が話さないなら、お前でも良い。イルファン=バシリアスの正体と、その存在価値を私に教えろ。そうすれば、お前たちの計画に協力してやってもいい」

「兄上、争っている場合ではないだろう」


 ルハランがすかさず言った。彼は兄を止めようと必死だった。ここでローレンの協力を失えば、イルファンは救えない。そうなれば、リアトの精神状態はまたも暗く沈み込む。それだけは避けたかった。


 と、レアーツが沈黙を破った。彼は冷ややかな目でローレンを睨みつけて、言った。


「ローレン=ノーラン。勘にしては妙に自信有り気ではないか。貴様、一体何を根拠に俺を敵と見做すのだ。確かにお前たちに話していないことは多い。だが俺は敵ではない」


「貴様の存在情報に呪の痕跡があるからだ」ローレンが言った。


 レアーツは眉を顰めて、その言葉の真意を測る。呪の痕跡。それは術式士がつける印のような物である。この印を付けられた者は、術に掛かり易い状態となる。とはいえ、印だけで剣王を呪殺出来るような高位術士は現代には存在しない。故に剣王の印は、何かを目的に故意に付けられた物ではなく、半ば偶発的に、レアーツの存在情報に焼きつけられた物であろう。と、ローレン=ノーランは思った。


 呪界を視る為に、レアーツらが靈力を送還した際、ローレンは、密かに、彼らの存在情報に干渉していた。高位術式士は存在情報を辿る事で、様々な事を知る。思考、記憶、存在意義、どのような流れにいるか。勿論、剣王級の剣術士は精神障壁を常に張っているから、それを破らずして思考を覗くことは出来ない。


 それでも、ローレンは何かを見つけられないか、と思ったのだ。

 当たりだった。


 レアーツ=ルーミンには呪の痕跡が残っていた。それも熱部系統の『呪氏』に連なる呪。人間を思いのままに操る、精神魔法の痕跡だった。この手の術式を得意とする渦中の人間は一人だけ。恐らく、ロンティエル=デルフォイが仕掛けたのであろう。彼女は、剣王に接触した際、彼に呪術を掛けようとしたのだ。この痕跡から視るに、それは失敗したようだったが。


 ローレンは尚も語気荒く、剣王を問い詰めた。


「剣王、其方にはロンティエルの呪の痕跡が遺っている。自身では気付かなかったであろうが、私にはそれが確かに分かるのだ。レアーツ、其方の口から説明してもらおうか」


「彼女とは当主アランドを蹴落とす為にほんの一時、手を組んだに過ぎん」


 レアーツは顔を顰めて、言った。見たところ、彼は僅かに動揺しているようだったが、それは致命的な個所を突かれたからではなく、むしろ予期せぬ事態に困惑したからであるようだった。彼は仕方なし、とばかりに事情を明かし始めた。


「術式技術の秘匿だ。俺とロンティエルは半年前に、アランドから術式技術に関する全権を奪い取ろうとしたのだ。残念ながら、ラハリオ=セン=ノーランに阻止されたがな」


 ローレンは頭の中で、何かが繋がるのを感じた。ロンティエルと剣王レアーツは驚いた事に協力関係にあった。少なくとも、半年前までは彼らは共に、アランド=デルフォイを倒そうとしていたのだ。『飛浮機』が持ち込まれたのも半年前、この剣王は何かを知っていると見て間違いない。確か、あの時、熱部貴族の間にも皇都で研究を行なおうとする勢力があった。


 それが恐らく、ロンティエルと剣王の属する派閥だったのであろう。現在、彼女は熱部の術式研究を率いているが、それは勝ち取った物に違いない。どういう理由かは知らないが、アランドと彼の子供達は強く対立しているのだから。


「では、此度の件は知らぬと?」

「呪の痕跡はその時に仕掛けられた物だろう。この俺が見抜けなかったのは少々、間抜けに過ぎるがな。まぁ『呪氏』の継承者は流石に甘くは無かったということだ」


 レアーツは疲れた声でそう言った。


 ローレンはそんな彼を一瞥して、思った。呪術返しの儀式や護符による対呪は怠っていなかったのだろう。それでも、知らぬ間にロンティエルの手にかかっていたことに、剣王レアーツは若干の不甲斐無さを感じているように見えた。勿論、ただの印をつけられただけで、彼自身には何らの影響もないのだが。


 だが、こうなると先程の推測も怪しくなってくる。本当に呪の痕跡は偶発的に付けられたものなのだろうか。ひょっとすると、ロンティエルはレアーツに印をつけることで、いざという時に関係を公に出来るようにしていたのかもしれない。彼女の立場は極めて不安定。保険を打つのは当然だった。


 レアーツが事情を僅かながら吐露した事で、場の空気は弛緩する。リアトもルハランも、既に緊張を解こうとしていたが、追及の手を緩めることなく、ローレンは問うた。


「それで優れた術士である彼女が、年端もいかない女子を攫う理由は?」


 少しばかり弛んだ空気を、物ともしない言葉。彼はイルファン=バシリアスの正体に強く拘っていた。十中八九、彼女には特別な何かが秘められている。それをロンティエルは狙い、剣王も狙っているのだ。実の所、ローレンは未だに剣王レアーツを疑っていた。


 デルフォイの子らが如何に優秀でも、その家の皇都での地位はまだまだ低く、彼ら自身が、自由に扱える手駒も情報も他家に比べれば、それ程多くは無い。皇王級の機密であるイルファンの正体を知り得るには、ロンティエル唯一人では、到底不可能なのである。


 故にローレンは、レアーツが彼女に其れを教えたと踏んでいた。その内容までは分からないが、そんな気がしていた。これは彼の、確信めいた予感に裏打ちされた、純然たる勘。十界法則的な、流れによる真理の啓示という奴だろうか。ローレンは、自分は正当な流れを掴んでいるのだ、と思えた。彼はここが正念場、とばかりに問う。


「其方は、ロンティエルをイルファンで誑かしたのか?」


 鋭いローレンの言葉に、レアーツはすぐさま答えた。彼はやはり、冷たく、静かに言う。不思議な事に、今の彼は苛立っている様子ではなかった。むしろ、ほんの少しだけ彼は嬉しそうにも見えた。


「お前を見くびっていたぞ、ローレン=ノーラン。この段階で、お前がイルファンに眼を付けるとは思っていなかった。精々、皇貴会議に囚われて、デルフォイへの憎しみを語るくらいが関の山だと思っていたのだが、俺の認識はどうやら甘かったらしいな」


「では、」


 ローレンは一瞬、剣王を言い込めたように思ったが、残念ながら、それは誤りであった。レアーツは凶暴な剣術士の本性を剥き出しにして、轟くように深く低い声でローレンに言葉を返した。


「黙れ」


 そう言うやいなや、レアーツはローレンの左腕を掴んだ。強く、千切れるほどの力であった。そして、剣王はローレンの眼を、まともに睨み付ける。レアーツから溢れる威圧は常人には到底耐え切れないものだ。強大な剣気。皇王ラハリオと同じ、絶対強者の其れ。ローレンはまたしても、弱者として、地面に這いつくばった。身じろぎ一つ出来ぬ程の、圧倒的な存在位格の差。心が如何に動こうとしても、身体が、其れを本能で拒否していた。


「お遊びは終わりだ。お前の問いには答えぬよ。解き続けろ、皇太子」


 こうなれば、自分には最早何も出来ない。頼んでいることもあるし、ここで敵対するのは危険だ。軽く打ち込めば、何かを得られるかと思っていたのだが。無理だ。これ以上、明確に彼と敵対するのは危険すぎる。ローレン=ノーランは少女の情報を諦めることにした。好機を逃したという思いだけが募り、


 ローレンは思う。


 やはり、こうなるのか。自分は何を間違えたのか。自分の身の程を弁えるべきだったのか。これで、剣王は俺を敵視するだろうか?いや、しない。しない筈だ。まだ、まだ機会はある。今はそれを繋ぐべきだろう。為すべきことは、関係の修復だ。くそったれ。

 

 ローレンは悪態を吐きながら、残された僅かな術式を解除していく。最後の、隠蔽術式を解除した。と同時に其れは起こった。



 狭い部屋全体が、虚空へと落ちていくかのように消失していく。思わず、リアトとルハランは地面に手を着いて、姿勢を保とうとした。が、その地面さえも消えてしまったかのように手は空を切る。


 ここは一体、何だというのだ。


 リアトは必至で自由落下していく身体を何処かに縛り付けようとするが、そう思考した時には、既に落下は終わっていた。まるで水の中。ふわふわと浮き上がるような感覚がある。光の溢れる暗闇、その表現がもっとも似合うであろう空間で、四人は静かに中空に浮遊していた。


「呪界に空間を隠していたのか」ルハランが言った。

 

 彼の目の前には巨大な術式陣が浮かんでいた。ほんのりと燐光を放つ其れには見覚えがある。先程も用いた、転移術式陣だった。それを横目で見ながら、ローレンが言う。


「正確には、呪界と実界に跨る仮想世界だ。ロンティエルは転移の痕跡すらも完全に隠したつもりだったに違いない。これほどの魔術、破れる者はそうそういないだろうからな」


 リアトにとって、ローレンの言葉は自画自賛であるようにも聞こえたが、この奇妙にして、壮大な光景の中では、彼を馬鹿にするつもりにはなれなかった。仮令、彼が地面に這いつくばって、未だに立てずにいるとしても。いや本当のところ、地面すら無いので、彼は滑稽な恰好で浮いていたのだが。この術式は何処に通じているのだ、とリアトが言うよりも早く、ローレンは立ち上がって、転移術式陣に神妙な面持ちで向っていた。


 彼はまたしても、指先を細かく動かして、術式を解いていく。その様子は、先ほど、兄に負かされた人間と同じ人物とは思えない。暫くの後、ローレン=ノーランは言った。


「剣王レアーツよ。先程の事は詫びよう」


 彼はやけに落ち着き払って言った。

 レアーツは面白がって、それを受ける。


「ふむ。それは構わんが」

「私は、其方に恩が有るのを忘れていたのだ」


 その言葉を聞いて、レアーツは彼の言わんとしている事が分かった。彼が自分にしていた頼み事、それを必ず果たせと言っているのだ。良い度胸をしている。敗北したと言うのに、彼は要求を下げない。飽くまでも、自分を協力させるのならば、『其れ』をしろ、と言っているのだ。


 回りくどい言い方でそれを匂わせるのは皇族貴族の常套手段。この国の上位者が四人も揃って、腹の探り合いとは。なんとも、ノーラン皇国らしい物語だな、とレアーツは思った。




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