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クラス1の美少女に嘘告白された帰り道、ナンパされていた絶世の美少女を助けたら、まさかのその日に義妹になった  作者: 白金豪


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第8話 俺だけが特別だと思っていた

 翌日。


 俺はいつもより少し早く学校へ来ていた。


 朝の教室は騒がしい。


 また坂田に何か言われるかもしれない。

 バカにされるかもしれない。


 だから教室へ向かう前に、校舎裏にある自動販売機へ足を運ぶ。


 ここは人通りが少ない。


 朝の時間帯ならなおさらだ。


 財布から小銭を取り出し、青い光が灯ったボタンを押す。


 ガコン。


 お茶の500mLのペットボトルが落ちてくる。


 俺はそれを取り出し、キャップを開けた。


 冷たいお茶を1口だけ飲む。


 少しだけ頭が冴えた気がした。


「さて、行くか」


 教室へ向かおうとした、その時だった。


「それでね――」


 聞き覚えのある声が耳に届く。


 俺は反射的に振り返った。


 そこにいたのは義妹――乾星奈だった。


 思わず足を止める。


 だが。


 すぐに視線は義妹の隣へ向かった。


 男子生徒がいた。


 茶色の髪。


 高い身長。


 モデルみたいに整った顔立ち。


 ジャニーズ系のイケメン。


 その男子と義妹は並んで歩いていた。


 しかも。


 楽しそうに会話をしている。


「ふふっ」


 義妹が笑う。


 心から楽しそうな笑顔だった。


 俺は思わず目を見開く。


 その表情に見覚えがなかったからだ。


 家ではよく話す。


 学校でも話し掛けてくる。


 俺を気遣ってくれることも多い。


 だけど。


 今の笑顔は少し違った。


 肩の力が抜けている。


 無理をしている感じがない。


 自然体。


 本当に楽しい時にだけ見せるような顔だった。


 茶髪の男子も笑う。


 義妹もまた笑う。


 2人の距離は近い。


 まるで昔から仲が良い友達みたいだった。


 胸の奥がざわつく。


 妙な感覚だった。


 別に義妹に恋人がいたっておかしくない。


 むしろ当然だ。


 可愛いし、優しいし、1年生で1番と謳われるほどの美少女だ。


 男子が放っておくはずがない。


 それなのに。


 なぜだか目を離せなかった。


 俺は無意識にペットボトルを握りしめる。


「……そりゃそうだよな」


 小さく呟く。


 義妹は学校でも人気者だ。


 俺なんかとは違う。


 話題の中心にいるような人間だ。


 ああいうイケメンと仲が良くても不思議じゃない。


 むしろお似合いですらある。


 俺は視線を落とした。


 そしてふと考える。


 義妹はなぜ俺に優しいのだろう。


 なぜ俺のために動いてくれるのだろう。


 その気持ちは嬉しかった。


 義妹になったばかりなのに話し掛けてくれる。


 学校でもボッチの俺の味方になってくれる。


 俺を気遣ってくれる。


 朝になれば「おはよう」と言ってくれる。


 クラス中が敵みたいになった時だって、義妹だけは俺の味方でいてくれた。


 だから。


 俺は勘違いしそうになっていた。


 もしかしたら。


 義妹にとって俺は少しだけ特別なのかもしれないと。


 だけど――。


 今なら分かる。


 断じて違う。


 そんなわけがない。


 義妹は元々そういう子なのだろう。


 俺だからじゃない。


 あの日。


 ナンパから助けてもらったから。


 家族になったから。


 だから恩返しをしてくれているだけなんだろう。


 もしあの日。


 義妹を助けたのが俺じゃなくて別の誰かだったら。


 もし義兄妹になったのが俺じゃなくて別の誰かだったら。


 義妹はきっとその相手にも同じように接していたはずだ。


 俺は特別なんかじゃない。


 ただ運が良かっただけ。


 たまたま助けた。


 たまたま家族になった。


 だから優しくしてもらえただけ。


 それ以上の意味なんてない。


 そう考える方がずっと自然だった。


 胸の奥が少しだけ重くなる。


 期待していたわけじゃない。


 期待する資格なんてない。


 それでも。


 なぜだろう。


 がっかりしている自分がいた。


 俺だけが特別だと少しでも勘違いしていたから。


 その間にも。


 義妹は茶髪の男子と楽しそうに話しながら校舎へ向かっていく。


 俺はしばらくその背中を見つめていた。


 手の中のお茶だけが、やけに冷たく感じられた。


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