第59話 お風呂への誘い
「宗春さん! 帰り道でたくさん汗をかいたので、お風呂に入りましょう! 」
星奈がノックもなしに俺の部屋に入ってくるなり、いきなり提案してくる。
「ああ。そうだな。分かった」
俺は言葉通りに受け取る。お風呂に入れってことだなと解釈する。
学生カバンを適当に部屋の床に置き、お風呂場に向かうために退出しようとする。
「宗春さんと私が一緒にお風呂に入るという意味ですからね」
俺が星奈の隣を横切ろうとする際、そのような言葉が星奈から発せられる。
まるで不意打ちのように俺の鼓膜に届く。
「は!? そ、それってどういうこと? 」
俺は思わず星奈に聞き返す。
動揺してどもった返しになる。明らかに歯切れが悪い。
「そのままの言葉の意味です」
星奈は淡白に答える。
どこか素っ気ない感じだった。
もしかして機嫌が悪い?
「そ、それはまだ早いだろ」
「早くないです」
星奈が即座に俺の言葉に被せるように返答してくる。
まるで有無を言わせぬプレーシャーを掛けてくるように。
「一緒にお風呂に浸かりましょう! 」
星奈は真剣な眼差しで俺を見つめる。
その表情は本気で、どこか必死さもあり、危うさが見えて、誰かに対抗してるような、そこから来る焦りが透けて見えた。
誰かに対抗でもしてるのか?
「それは流石に」
俺は逃げるように視線を逸らす。
無意識に星奈の裸を想像してしまう。
きれいなロングの亜麻色の髪に、シミ1つない肌、形の整った胸、程よく健康体で筋肉のついた腕や太ももなど、しっかりとイメージしてしまった。
う〜ん。エロいな。興奮は避けられないな。
「ダメ…ですか? 」
星奈が上目遣いであざとく俺に尋ねてくる。
相変わらず、とんでもない破壊力だ。上目遣いで星奈がより可愛く見えてしまう。
「いいや、ダメだ」
俺は何とか理性を保って提案を拒否する。
本当は一緒にお風呂に入りたい。
星奈の裸姿めっちゃ見たい!
我慢だ我慢。
自分を律しろ宗春。
心頭滅却。
「そ、それじゃあ、背中を洗うだけでもダメですか? 」
星奈がどうしてもって感じで代替案を提案してくる。
身振り手振りしながら諦めないように喰らい付いてくる。
「…分かったよ」
俺が星奈の熱意に負けて折れる。
仕方なく承諾する。
「やったー! 」
星奈は飛び跳ねるようにガッツポーズする。
「それじゃあ行きましょう!! 」
星奈が俺の手を取る。
返事など待たずに俺の手を強引に引く。
「お、おい」
俺は連れて行かれるままに自分の部屋を後にするのだった。




