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クラス1の美少女に嘘告白された帰り道、ナンパされていた絶世の美少女を助けたら、まさかのその日に義妹になった  作者: 白金豪


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第57話 転校生

 9月1日。


 夏休みが終わった。


 久しぶりの教室は朝から妙にうるさい。


「宿題終わった?」


「ギリ昨日」


「俺なんか朝やった」


「それ絶対写しただろ」


 あちこちでそんな声が飛び交う。


 窓から吹く風はまだ暑いけど、真夏の刺さるような熱じゃない。


 新学期だな。


 そんな空気が教室中に漂っていた。


 俺も席に座りながら、ぼんやり窓の外を眺める。


 グラウンドでは運動部が朝練を終えて片づけをしていた。


「眠い……」


 前の席の男子が机に突っ伏す。


「分かる。夏休み中ずっと昼まで寝てたし」


「生活リズム終わってるわ」


 思わず笑ってしまう。


 教室中がそんな感じだった。


 久しぶりに会う友達と話が止まらない。


 夏休みの思い出。


 ゲーム。


 旅行。


 海。


 恋愛。


 話題が尽きる気配はない。


 その時だった。


 キーンコーンカーンコーン。


 朝のホームルームを知らせるチャイムが鳴り響く。


「やべ」


「先生来る!」


「席、席!」


 さっきまで立ち歩いていた連中が、一斉に自分の席へ戻っていく。


 イスを引く音。


 机が動く音。


 笑い声が少しずつ小さくなっていく。


 数秒前まで騒がしかった教室は、あっという間に落ち着いた。


 ガラッ。


 前のドアが開く。


 担任が教室へ入ってきた。


 ……でも。


 今日は担任だけじゃなかった。


 先生の後ろに、もう1人。


 女子生徒が立っていた。


 同じ学校の制服。


 夏服用の白のカッターシャツ。


 初めて見る顔。


「え?」


「誰?」


「もしかして……」


 教室がざわつく。


「転校生?」


「マジ?」


「かわいくね?」


 小声が一気に広がっていく。


 担任は苦笑しながら黒板の前へ立った。


「静かに静かに」


 ざわつきは完全には止まらない。


 みんな視線は先生じゃない。


 後ろに立つ女子生徒へ釘付けだった。


 俺も自然と目が向く。


 ……綺麗だ。


 最初に浮かんだ感想は、それだった。


 肩まで伸びた銀色の髪。


 光を受けるたびにさらりと揺れる。


 透き通るような水色の瞳。


 外国人みたいな顔立ちなのに、どこか柔らかい雰囲気がある。


 肌は雪みたいに白い。


 いや、白いっていうより乳白色って表現のほうがしっくりくる。


 人形みたい。


 そんな言葉が頭をよぎる。


「……めっちゃ美人」


「ハーフ?」


「モデルじゃん」


「レベル高すぎ」


 男子たちの声が聞こえる。


 女子たちも驚いた顔をしていた。


「かわいい……」


「肌すごくない?」


「芸能人みたい」


 教室中の空気が完全に転校生へ持っていかれていた。


 担任が軽く咳払いする。


「じゃあ自己紹介を頼む」


「はい!」


 女子生徒は一歩前へ出た。


 ニコッと笑う。


 その笑顔だけで教室が少し明るくなった気がした。


「堺夜奈《さかいよるな》です!」


 元気な声だった。


「今日からよろしくお願いします!」


 ペコリと頭を下げる。


 その瞬間。


「かわいい……」


「声もかわいい」


「やばい」


「最高じゃん」


 あちこちから小さな歓声が漏れる。


 男子なんか半分くらい目が輝いている。


 女子も「話してみたい」とでも言いたげな表情だった。


 俺も自然と笑っていた。


 明るい子なんだな。


 そう思った、その時。


 堺さんの視線が教室をゆっくり動く。


 1人ずつ顔を確認するように。


 前。


 真ん中。


 窓側。


 廊下側。


 何かを探している。


 いや。


 誰かを探してる?


 そんな気がした。


 そして。


 その水色の瞳が止まる。


 真っすぐ。


 俺を見た。


 一瞬だった。


 でも次の瞬間。


 ぱあっと表情が明るくなる。


 宝物でも見つけたみたいに。


「……あっ!」


 思わず声が漏れたような反応だった。


 そして嬉しそうに目を丸くする。


「もしかして里見君?」


 教室が静まり返る。


 え?


 俺?


 周りの視線が一斉に集まる。


「里見?」


「知り合い?」


「え?」


 そんな声が聞こえる。


 俺も目を見開いた。


 俺を知ってる?


 誰だ……?


 銀髪。


 水色の瞳。


 こんな子、1度見たら忘れるわけがない。


 ……いや。


 待て。


 笑った時の口元。


 嬉しそうに細くなる目。


 その表情。


 どこかで見たことがある。


 頭の中で昔の記憶が一気につながる。


 公園。


 ブランコ。


 鬼ごっこ。


 一緒に帰った夕焼け道。


 運動会。


 卒園式。


 小学校。


 中学校。


 中学の途中で引っ越した仲の良かった女の子。


 目の前の美少女と結びつかなかっただけだ。


 俺は思わず立ち上がりそうになる。


「……もしかして」


 喉が少し震えた。


「堺さん?」


 その1言で。


「やっぱり里見君だー!」


 堺さんは満面の笑みになった。


 今にも駆け寄ってきそうなくらい嬉しそうだった。


「久しぶり!」


 その笑顔を見た瞬間、完全に思い出した。


「本当に堺さんなのか」


「うん!」


「全然分からなかった……」


「ひどいよ! 」


 堺さんが不満そうに頬を膨らませる。


 幼稚園から中学までずっと一緒。


 クラスが違っても、休み時間になれば自然と話していた。


「元気だった?」


「うん! 里見君は?」


「俺も元気」


「よかったぁ」


 心の底から安心したように笑う。


 その笑顔は昔のままだった。


 教室中がシーンとしていることに、その時初めて気づく。


「……」


「……」


 全員が俺たちを見ていた。


「え?」


「幼馴染?」


「マジで?」


「え、そんな展開ある?」


「映画じゃん」


「羨ましい!」


 男子の声が飛び交う。


「しかもあの美少女と?」


「乾さんといい里見、お前なんなん?」


「ずるくない?」


 女子たちまで興味津々だった。


「昔から知り合いなの?」


「幼稚園から?」


「すごーい」


 担任も少し笑っている。


「なるほど。知り合いだったのか」


「はい!」


 堺さんは元気よく返事をする。


「幼稚園から中学まで、ずっと仲良しでした!」


 その1言で教室がまたざわめいた。


「ずっと!?」


「幼馴染じゃん!」


「ガチのやつ!」


「漫画かよ!」


 俺は頭をかいた。


「なんか恥ずかしいな」


「なんで? 嬉しいじゃん」


 堺さんは昔と同じ調子で笑う。


 9月1日。


 ただ新学期が始まるだけだと思っていた朝。


 まさか、幼稚園から中学までずっと一緒だった女の子と、高校で再会するなんて。


 そんなこと、誰が予想できる。


 でも――。


 教室中の視線なんて気にならないくらい、俺は少しだけ嬉しかった。


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