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クラス1の美少女に嘘告白された帰り道、ナンパされていた絶世の美少女を助けたら、まさかのその日に義妹になった  作者: 白金豪


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第5話 教室に現れた救世主

「君は——」


 俺は言葉に詰まる。


 なぜ教室に義妹がいるのだろうか?


 しかも、このタイミング。


 偶然では片付けられそうにもない。


 何か狙いがあるのか?


 そんな疑問が頭を埋め尽くす。


 だが、義妹は迷うことなく俺の前まで歩いてきていた。


 まるで最初から俺を探していたかのように。


 そして。


 俺と目が合った瞬間だった。


 義妹の顔がぱっと輝く。


 まるで探していた人をようやく見つけたみたいに。


 その瞬間。


 教室中が一気に騒がしくなった。


「お、おい! あれ1年の乾星奈じゃないか!?」


「マジだ!」


「なんで2年の教室にいるんだよ!?」


「しかも里見のところ来てるぞ!?」


 男子たちが目を見開く。


 女子たちもざわつき始めた。


「え、乾さんってあの乾さん?」


「1年で1番可愛いって噂の?」


「モデルみたいな子でしょ?」


「入学した瞬間から有名だった子だよね?」


 次々と名前が上がる。


 どうやら俺の知らないところで、義妹はかなり有名人らしい。


「いやいや、なんで里見なんだよ」


「接点あるように見えないんだけど」


「ありえなくね?」


 視線が一斉に俺へ集まる。


 好奇心。


 困惑。


 嫉妬。


 様々な感情が入り混じっていた。


 本来なら交わるはずのない2人。


 クラスの隅で1人過ごす俺と、1年で最も有名な美少女。


 だからこそ誰もが理解できない。


 だが。


 そんな周囲の反応など存在しないかのように、義妹は嬉しそうに笑った。


「里見先輩って2年生だったんですね!」


 無邪気な声。


 屈託のない笑顔。


 その笑顔に教室中の男子が息を呑む。


「やば……」


「可愛すぎるだろ……」


「なんで里見なんだよ……」


 ざわめきがさらに大きくなる。


 そんな中。


 坂田が立ち上がった。


 仲間の2人を引き連れてこちらへ歩いてくる。


 口元には余裕の笑み。


 女子との会話に慣れた人間特有の自信があった。


「ね、ねえ」


 坂田は髪をかき上げながら義妹へ話しかける。


「どうして君がこいつのことなんか知ってるの?」


 そして俺を指差した。


「もしかして知り合い?」


 その口調には侮蔑が混じっていた。


 坂田たちにとって俺はクラスの最底辺。


 見下してもいい存在。


 笑い者にしてもいい存在。


 そんな認識なのだろう。


 だが——。


「いま、私は里見先輩と話してるんです!」


 鋭い声が教室に響いた。


 一瞬で空気が凍り付く。


「気安く話し掛けないでください!」


 容赦がなかった。


 一切の遠慮もない。


 まるで邪魔者を払いのけるような拒絶。


 坂田の笑顔が固まる。


「え……?」


 間抜けな声が漏れた。


 周囲からどよめきが起こる。


「坂田が拒否されてる……」


「乾さん、ガチで怒ってるぞ」


「初めて見た……」


 教室の空気が変わり始める。


 さっきまで坂田に向けられていた羨望の視線が、少しずつ別のものへ変わっていく。


 だが義妹は止まらなかった。


「あと!」


 1歩前へ出る。


 その小さな身体が俺の前に立つ。


 まるで盾だった。


 まるで俺を守るためだけにここへ来たかのように。


「私をピンチから助けてくれた里見先輩を馬鹿にしないでください!」


 教室中に響き渡る声。


「気分が悪いです!!」


「っ!?」


 坂田の顔から血の気が引く。


 周囲の視線が一斉に坂田へ向いた。


「助けてもらったって……」


「里見ってそんな奴だったのか?」


「ていうか坂田の方が感じ悪くね?」


「乾さん、めちゃくちゃ怒ってるじゃん」


 坂田の頬が引きつる。


 今まで向けられていた視線とは違う。


 困惑。


 軽蔑。


 嘲笑。


 ついさっきまで俺に向けられていたものだった。


 今、それが坂田へ向いている。


 しかも。


 学校中で有名な美少女に。


 皆の前で。


 はっきりと否定されたのだ。


 坂田は何も言い返せない。


 ただ立ち尽くしていた。


 その姿は、さっきまでの余裕に満ちた中心人物とは別人だった。


 だが。


 義妹は坂田など見ていなかった。


 クラスメイトも。


 周囲の視線も。


 全部どうでもいいと言わんばかりに。


 ただ1人。


 俺だけを見ていた。


 今まで何度も笑われた。


 何度も見下された。


 けれど誰も止めなかった。


 それが当たり前だった。


 だから。


 目の前の光景が信じられない。


 俺のために怒る人がいる。


 俺のために声を上げる人がいる。


 俺のために皆の前へ立つ人がいる。


 俺のために戦ってくれる人がいる。


 胸の奥が熱くなる。


 ずっと冷え切っていた場所に、温かいものが流れ込んでくる。


 まるで——。


 誰も助けてくれなかった世界に現れた救世主だった。


 そして。


 義妹はくるりと俺の方へ向き直る。


 怒った表情が嘘だったかのように、ぱあっと顔を輝かせた。


「それで、里見先輩!!」


 キラキラした瞳で身を乗り出してくる。


 教室中の視線が再び俺たちへ集まった。


 嫌な予感しかしない。


 頼むから余計なことは言わないでくれ。


 そう願う俺とは対照的に、義妹は満面の笑みを浮かべていた。


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