第4話 恐怖に支配された登校
自宅を出て学校に向かう。
義妹とは当然、一緒に登校しない。
高校生という特殊な境遇を考え、兄弟だと学校内で知られない方がいいと思ったためだ。
そのため、俺と義妹は別々のルートを使って登校することにした。
自宅から学校まで遠くはない。
いつの間にか正門を通過し、昇降口を抜けてから、2年生のクラスが設置される廊下を進んでいた。
俺の心は恐怖で支配されている。
昨日、嘘告白してきた三上さん。それを企てた坂田たちと顔を合わせないといけない。
教室に入って姿を見られて何を言われるか分からない。怖くて仕方がない。
だが、登校するしかない。休むわけにもいかない。
俺は重たい身体と潰されそうな心と戦いながら、何とかクラスの教室に到着する。
2年A組の教室の前に立つ。
ふぅ〜。
少しでもリラックスするために軽く息を吐き、ゆっくり戸を開けて教室に入る。
「お! 来たぜ!! 」
坂田はすぐに俺を認識する。
仲間の2人に共有し、意地悪な笑みを浮かべる。
「来たぜ来たぜ! 三上の嘘告白を本気だと信じた奴が! だせえよな!! あんなボッチで三上がマジで告白するわけねぇじゃん! ギャハハハッ!!! 」
坂田が教室中に響き渡る大きな声で昨日の嘘告白の顛末について共有する。下品な笑い声は教室を支配する。
「本当にな! 」
「どんだけ脳内お花畑なんだよ!! 」
仲間の2人も追随する。
グサッグサッと追い打ちの刃の言葉が俺の心に深く突き刺さる。
「百合、あの里見に嘘告白したの? 」
「うん。草平に頼まれてやっただけだから」
「それで里見、信じたの。ダサッ! 」
「本当にね」
三上さんも女子の友だちに囲まれながら笑みを浮かべる。どこか楽しそうに。
俺は、そんなカオスな状態に身を置きながら、自分の席に向かう。
クラスメイトの軽蔑や哀れみの視線が痛い。
誰も守ってくれない。
全員が敵に見える。
クラスメイトたちは陽キャの坂田や三上さんたちの仲間。
あいつらが悪いのに誰も指摘しない。
もしかしたら、心の中でおかしいと思ってる奴はいるのかもしれない。
でも、俺を守るために出てくるような奴はいない。
強い者に巻かれるから。
坂田や三上さんを敵に回したくないから。
自分が1番かわいいから。
俺の予想通り誰も助けてなどくれない。
坂田は優越感に浸り、満足した表情で、ニヤニヤと俯く俺を見つめる。ざまぁみろと言いたげだ。
なんなんだよ。
こんなことがあっていいのか?
地獄じゃないか?
絶対におかしい。
こんなことが通るクラスは終わってる。
俺は口に決して出せない悪態を胸中でつく。
しかし、現状は何も解決しない。
ただ地獄が教室を支配してるだけ。
マジできつい。
「う〜ん。いるかな? あ、いたいた」
聞き覚えのある声が俺の耳に届く。
足音がドンドン近づいている気がする。
俺は俯いていた顔を上げる。
目の前には亜麻色の長い髪に薄い赤色の瞳を持つ、絶世の美少女――義妹の姿があった。
「里見先輩! おはようございます!! 」




