第48話 雨宿り
6月。
梅雨に入り始めた。
外では雨が降っている。
「雨が降ってますね」
場所は昇降口。
星奈が空を見つめながら呟く。
「そうだな。やばいな傘を忘れた」
俺は外を見つめながら呟く。
「安心してください。念のため傘を持ってきてますので」
星奈が昇降口の傘立てから自分の傘を取り出す。コンビニで売ってるような透明な傘だった。
「それは助かるな」
「これで濡れずに済みますね」
星奈は傘を開く。
「宗春さん、行きましょう」
「ああ。ありがとう」
俺は星奈の傘に入れて貰う。
昇降口から帰路に就き始める。
俺と星奈は傘に守られながら雨の中を進む。
「宗春さん、もう少し私に近づかないと濡れちゃいますよ」
「そ、そうか? 」
「はい、実際にブレザーの肩の辺りが雨で濡れてます」
星奈が俺の左肩を指差す。
俺は左肩の辺りが濡れないように傘の中に入る。
星奈と身体が少しだけ触れてしまう。
「えへへっ。宗春さんと触れちゃいました」
星奈は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「…星奈、狙ったな? 」
俺はジト目を向ける。
「…そんなことないですよ。たまたまです」
星奈は分かりやすく目を泳がせた後、逃げるように俺から視線を逸らす。
どうやら図星だったようだ。
「そうか。たまたまなら仕方ない」
俺は深く追及しない。
ここで話を終わらせる。
そのまましばらく自宅に向かって歩き続ける。
急に天候が変化し、より強い雨が降り始めた。
大雨になった。
俺と星奈は大雨と戦いながら、できるだけ早く帰宅するために走る。
「流石にこのままだと濡れすぎないか? 」
「そ、そうですね。ここまで雨が酷くなるとは思わなかったです」
「あそこで雨宿りしよう」
俺は近くの公園の東屋を指差す。
「はい! 」
俺と星奈は雨宿りするために公園の東屋を利用する。
「大雨ですね」
星奈が傘を畳みながら空を見上げる。
「そうだな」
俺は東屋のベンチに腰を下ろす。
制服や靴は雨によって濡れてしまった。
「本当に、ついてないです」
星奈は俺の隣に座る。
俺と肩が触れそうな距離にいる。
「星奈、結構濡れただろ? 寒くないか? 俺のブレザー貸すぞ? 」
俺はブレザーを脱ごうとボタンに手を掛ける。
「宗春さんのブレザーですか! じゃ、じゃあ、お願いします」
「分かった。すぐ脱いで渡すから」
俺は気持ち急いでブレザーを脱ぐ。
「はい、これ」
身体が冷えてるであろう星奈に差し出す。
「あ、ありがとうございます」
星奈は控えめに俺からブレザーを受け取る。
すぐに袖を通す。
ブレザーを羽織ると嬉しそうに笑みを浮かべる。理由は分からないが、追及はしない。
「宗春さん、まだ寒いので手も握って貰えますか? 」
星奈は俺を見つめながら左手を差し出す。
「ああ。分かった」
俺は星奈の手を包み込むように握る。
少しでも温まるように少しだけ力を入れる。
「宗春さんの手、あったかいです」
星奈もギュッと握り返す。
星奈の手の感触がより伝わる。
手が冷たくなっている。
思った以上に身体が冷えているようだ。
いち早く声を掛けてよかった。
俺は安堵する。
「どのぐらい雨が続くんですかね? 」
星奈は目の前に広がる雨を眺めながら尋ねる。
「どうだろうな? 結構、長くなりそうだが」
俺は雨の様子を見ながら答える。
「でも私はこの雨ずっと続いて欲しいとすら思います」
「どうして? 」
「だって、宗春さんと手を繋ぐ時間が永遠に続いて欲しいと思うから」
星奈は俺に視線を向け、優しく微笑む。
「…ああ。それは俺も一緒だ」
俺は星奈に共感する。
応えるように微笑み返した。




