第42話 返事
「ただいま」
俺と星香さんがリビングで話してる最中だった。
星奈が帰ってきた。
自然と俺と目が合う。
「っ!? 」
星奈は気まずそうに俺から目を逸らす。
やはりか。
まだ俺との間に生まれた距離は開いたまま。
何もしていないから当然か。
「あら、星奈がおかえりなさい」
俺と星奈に配慮してくれたのか。
星香さんが取り持つように、大人の余裕を見せながら星奈を迎える。
「…」
星奈は無言で首を縦に振る。
返事のつもりなのだろう。
「…」
「…」
そのままリビングには静寂が続く。
俺も星奈も黙り込んだまま。
「さて、私、今日のご飯の買い物行かないといけないから。あとは2人でお願いね」
星香さんはソファから立ち上がる。
そのまま意味深なウィンクをすると、早歩きでリビングを退出する。
玄関を出る音がして、車のエンジン音が聞こえる。やがて車が走り出す音がして、その音は少しずつ遠ざかっていった。
俺と星奈がリビングに取り残された形になった。
「…」
星奈は踵を返す。
逃げるようにリビングを退出しようとする。
「せ、星奈! ちょっと待って!! 」
俺は慌てて星奈を呼び止める。
このタイミングを逃すわけにはいかなかったから。
星奈はドアに手を掛けようとしたタイミングで止まる。
「…何ですか? 」
不安そうな目を向ける。
星奈も俺が声を掛けた理由に気付いている。
「返事なんだけど、聞いてくれないかな? 」
俺は勇気を振り絞って星奈に伝える。
「…分かりました」
星奈は少しの沈黙の後、俺に身体を向ける。
正面で俺と向き合う。
久しぶりに星奈と目が合った気がする。
それほど星奈は身近な存在だったと思い知らされる。
星奈はそれほど俺にとって欠かせない存在になっている。
「返事なんだけどさ。俺もさ、星奈のこと好きだわ」
俺はストレートな気持ちを星奈に伝える。
「え!? 」
星奈から驚きの声が漏れる。
信じられないように両目を大きく見開く。
「でも…。私たち義兄妹だし。関係性的に難しんじゃ——」
「いや、いいんだ」
俺は意図的に星奈の言葉を遮る。
「親や世間のことなんて気にしなくていい。それよりも大事なのは星奈の気持ちに応えることだ。勇気を振り絞って好きだと言ってくれた尊い気持ちにな」
俺は1度、目を瞑ってからゆっくり開ける。
「こんな俺を好きになってくれてありがとう。俺も星奈のこと好きだよ。1人の女性として」
俺は感謝と共に本気の素直な気持ちを星奈を見つめながら伝える。
「っ!? …お兄ちゃん」
星奈の目が揺れる。
潤んでから1滴の涙が流れる。
「お兄ちゃ~ん! 」
星奈は涙を流しながら俺のもとへ駆け出す。
そのまま俺の胸に勢いよくダイブする。
「おっと」
俺は星奈を受け止める。
「ずるいです。そんなこと言うなんて」
星奈は俺を上目遣いで見つめる。
「私、もう我慢できません」
星奈はゆっくり両目を閉じる。
頬を赤く染めて唇を前に突き出す。
「星奈」
俺は星奈の頬に手を添える。
ピクッと肩を跳ねさせるが、決して逃げない。
星奈が拒まないことを確認してから、ゆっくりと両目を閉じ、唇を近づけていく。
星奈の息が吹き掛かる距離を乗り越えて。
チュッ♡
俺たちは義兄妹という関係を超えたキスを交わした。




