第40話 義妹からの告白
「全く、お母さんは本当に油断ならないです」
星奈と星香さんにベッドの上でサンドイッチのように挟まれて一睡もできなかった日の朝。
俺は星奈と共に学校へ向かっていた。
先ほど家を出て並んで歩いている。
「お母さんはいつ頃から隣で寝てたんですか? 」
星奈が俺に尋ねる。
真剣な眼差しで俺を見つめる。
「分からん。気づいたら真横にいた」
俺は記憶を辿りながら答える。
何時かは分からないが、早朝であろう時間帯にベッドで目を開けた時の星香さんが俺を見つめていた衝撃を思い出す。
凄い驚いたな。
まだ身体に感覚が残っている。
「気づいて大声で叫んで私がお兄ちゃんの部屋に入ってきたって感じですか? 」
「ああ。そういうことだ」
俺は肯定するために首を縦に振る。
「なるほど。そういうことですか。これは早く手を打たないとですね」
星奈がブツブツと呟く。
最後の方は全く聞き取れなかった。
なぜか早歩きで俺より数メートルほど前進する星奈。
ある程度の距離ができた所で立ち止まる。
振り返る。
俺の方へ身体を向ける。
1度呼吸を整え、姿勢を正す。
「お兄ちゃん」
星奈は真剣な眼差しを俺に向ける。
今までで初めて見るほどの真剣さが伝わってくる。
まるで何かを決意したかのように。
「な、なんだよ」
星奈の真剣な眼差しに圧倒される。
思わず数歩ほど後ろに下がってしまう。
「正直に言います」
星奈は俯いて大きく息を吐く。
覚悟を決めたように顔を上げる。
「私はお兄ちゃんのことが好きです! もちろん義兄妹としてではなく1人の男としてです! 」
星奈は両拳を強く握りながら両目を固く瞑って俺に気持ちを伝える。
「……」
俺の方は思考が停止する。
情けないが信じられない。
星奈が俺のことが好き?
しかも1人の男として。
まじかよ…。
「ナンパから助けてもらったのがきっかけです。でもそれだけではありません」
星奈は顔を赤くしながら俺だけを見つめる。
「顔も、優しいところも、強くて守ってくれるところも。全部が愛おしくて大好きです」
星奈は決して俺から目を逸らさず、好きなところを1つ1つ口にする。
「そうか」
それしか言えなかった。
すぐに決断できそうな心境ではない。
まともな対応すらできてないのだから。
「すぐに返事はもらえるとは思ってません。お兄ちゃんのタイミングでください。難しい決断だとは思いますから」
星奈の俺に配慮した発言。
俺と星奈の義兄妹という関係性のことを考えている。
星奈も分かっている。
俺と付き合うことが普通ではないこと。
かなりの歪な関係になること。
それを踏まえての返事の猶予。
「分かった」
俺は首を縦に振る。
「そ、そういうことですから。私、今日は先に行っちゃいますね。それじゃあ」
星奈は俺の返事を待たずに踵を返す。
そのまま駆け足で学校へと行ってしまった。
そんな星奈を呼び止めることすらできず、呆然と背中を見届けることしかできなかった。
ドンドン俺と星奈との距離だけが離れていった。




