第38話 約束です
「お兄ちゃん、もう2度とあの女と関わらないようにしてください! 」
星奈は俺の手を引きながら強い口調になる。
振り返って俺と目が合う。
星奈からは不思議と必死さが伝わる。
「…分かった」
星奈の剣幕に圧倒されて首を縦に振る。
俺自身も三上さんと関わるつもりはなかった。
星奈の言う通り今後は関わらないスタンスでいくつもりだ。
話し掛けられたら流す程度の対応。
しつこくきたら無視することも考えている。
「約束ですよ」
星奈は安心したように視線を前に戻す。
俺の手を引きながら廊下を進む。
「ああ。約束だ。絶対に守るよ」
俺は応えるようにギュッと星奈の手を握る。
「っ!? 」
星奈はピクッと肩を反応させる。
「……」
しばらく黙った後、握り返してくる星奈。
「当然です。これだけは覚えててください。お兄ちゃんは……私だけのものですから」
「……」
最後の方は小さくて聞き取れなかった。
ただ聞き返す勇気は俺になかった。
だって目の前を歩く星奈は顔だけでなく耳まで赤かったから。
そんな星奈に聞き返すほど俺は鈍感ではなかった。
「…」
「…」
俺と星奈の間で沈黙が流れる。
そのまま目を合わせづらい空気が流れたまま、どこに向かっているか分からず、廊下を進み続けた。
「…お兄ちゃんのバカ」




