第36話 突然の告白
「里見君、ちょっといいかな」
次の授業の準備中に声を掛けられる。
聞き覚えのある声色だった。
作業を止め席に座りながら顔を上げる。
三上さんだった。
指先をいじりながら、どこか落ち着かない様子だ。
俺と視線を合わせては逸らしを繰り返す。
最近では俺にチラチラと視線を向けていた三上さん。
星奈に注意されて、それ以来なくなった。
そんな三上さんが俺に何の用だ?
疑問が浮かぶ。
「別にいいけど」
俺は了承する。
できれば手短に終わらせて欲しい。
あまり長く三上さんと関わりたくない。
やはり嘘告白のマイナスのイメージは抜けない。
好きか嫌いかで言えば嫌いだ。
乗り気にならない。
「ありがとう。でも、ここだと言いづらいから場所を変えてもいいかな? 」
三上さんは俺の顔を伺いながら教室の出口を指差す。
言いづらいこと?
どんなことだ?
もしかして面倒なこと?
それは嫌だな。
長く時間を取られそうだ。
「悪いけど長くなりそうなら断ってもいいかな? 」
俺は自分の気持ちを優先する。
嫌いな人のために場所まで変えて用件を聞く義理など俺にはない。
悪いが断らせてもらう。
「…」
三上さんは悲しそうに俯く。
断られてショックを受けているようだ。
正直困る。
「そういうことだから」
このままだとクラスメイトからの視線を集め続ける。
現に集まっている。
居心地が悪い。
俺はイスから立ち上がる。
注目される現状から逃れるために、教室の出口を通って廊下に出る。
「ま、待って! 」
三上さんが慌てた様子で追い掛けてくる。
駆け足なためすぐに追い付かれる。
ちっ、なんだよ。
しつこいな〜。
何で嘘告白してきた奴が俺に関わってくるんだよ。
相手のこととか考えられないの?
自分のことしか考えてないのかよ。
自分勝手だな。
「ついてこないでよ。断ったでしょ」
俺は冷たい口調で伝える。目すら合わせない。
三上さんは下を向きながら、しばらく俺の隣を歩き続ける。
なかなか引いてくれない。
「ね、ねぇ」
三上さんが足を止める。
不自然な動きに俺も立ち止まる。
ちょうど階段の踊り場の近くにいた。
「里見君を酷く傷つけた身としてはおかしいことは分かってる。でも抑えられないの」
三上さんが頬を赤く染めながら胸の前で拳を握る。
意を決したように口を開く。
「好きです! 付き合ってください!! 」
しゅばっ。
三上さんが素早く頭を下げる。
は?
俺は目の前の現実が理解できない。
好きです。付き合ってください。
三上さんが俺に言った?
なんで?
嘘告白したのに。
傷つけてきたのに?
何を考えてるの?
開いた口が塞がらない。
三上さんは未だに頭を下げ続ける。
三上さんを信じられないものを見るように凝視することしかできない。
それほどショッキングな出来事だった。
そんな最中。
「何ふざけたこと言ってるんですか〜〜!!!」




