第24話 坂田は思い通りに話を進める
次の日の朝。
俺はいつもより早く登校した。
「……」
教室の目の前の廊下の壁にもたれながら、ある人物が姿を見せるのを待つ。
しばらくすると。
目的の人物を見つける。
亜麻色の長い髪。
整った顔。
きれいな肌。
廊下を歩いているだけで周囲の視線を集める絶世の美少女。
乾さんだった。
今日も迷いなく里見のクラスへ向かっている。
里見に会いに来たのだろう。
やっぱりな。
絶対に来ると思っていた。
確信があったからこそ敢えて普段よりも早く登校して教室前で待機していた。
「乾さ〜ん、ちょっといいかな」
俺は秘密を握ってることから、昨日よりも軽い気持ちで声を掛ける。昨日よりも心の余裕が生まれている。
「むっ」
乾さんは露骨に眉をひそめる。
「何ですか? うざいんですけど」
即答だった。
明らかに嫌そうだった。
普通なら傷付く。
だが今の俺は違う。
この乾さんの態度をひっくり返せる切り札を持ってるからな。
「そんな嫌そうにしないでよ〜」
俺は軽い調子で返答する。
「嫌なので」
変わらず辛辣な対応をされる。
「里見に関することなんだけどね〜」
「――っ」
乾さんの肩がピクリと揺れる。
明らかに里見という言葉に反応した。
里見のことに敏感だと分かる。
分かりやすすぎる。
「……里見先輩がどうかしたんですか?」
先程よりも明らかに声が硬い。
威勢の良さもない。
警戒しているのが丸分かりだ。
俺は思わず口元を歪める。
ふふっ、予想通りの反応だ。
「昨日さ、里見と同じ家に入ってたよね?」
「っ!? 」
乾さんの目が大きく見開かれた。
明らかに驚いている。
信じられない目で俺を見つめる。
けっけっけっ。
どうだどうだ。
乱れてる乱れてる。
「……何で知ってるんですか?」
乾さんの声は震えていた。
明らかに動揺している。
いつもの余裕はない。
言葉を選んでいるような不自然な間も多い。
「昨日たまたま見ちゃったんだよね〜」
「……」
「驚いたなぁ。乾さんと里見って、そんな関係だったんだね」
乾さんは何も言わない。
いや言えないのだろう。
ただ悔しそうに下唇を強く噛んでいた。
「場所を変えて貰えませんか?」
乾さんは周囲の状況を確認した後に切り出す。
「もちろんだよ」
かかった。
完全にかかった。
順調すぎる。
あとは乾さんと里見が家族関係である秘密を学校内に広めると脅して、俺と付き合うように強要すればいいだけ。
けっけっけっ。
俺の勝ちゲーだろ。
断られる気がしねぇ。
幸せな未来しか見えねえ。
最高かよ!
テンションぶち上げ!
「それじゃあ行こうか」
俺と乾さんは場所を移すため、人気の少ない廊下を歩き始める。
俺が前を進み、遅れて乾さんが追う形になる。
そんな乾さんの表情はずっと硬いままだった。




