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十話 忘れなくてもやって来るらしい

お待たせしたわりに、話が進んでいない…


画面の向こうから恐縮ではございますが土下座いたしますごめんなさい。

 大運動会の翌日の昼休み、おれとウェイグ、それからハルクアルドが呼ばれたのは保健室。

 なんだろうかと訝しみながらガラリと扉を開ければ、


「あ、やぁっと来たですね?あんまり遅いから、もしかしてガキ共めばっくれやがったかと思ったですよぅ」

「にこやかに刺付き棍棒(凶器)振り回しながら言わないでください、幼児ハルが怯えてます」


 ぶぅ…ん、 ぶぅ…ん


と身長の二倍位ありそうな刺付きの棍棒を振り回す、笑顔の幼女ロリ先生がそこにいました。


 抱きつかれてると歩きにくいから、と妥協案で手を繋いでやっていたハルが、入口で立ち止まったおれに、びっくりしたのかひしとしがみついてきた。頭上でくぅーん、と怯えたような声がするから、怖いのもあるのかもしれない。

 何せ外見は「カッコいい美青年」でも、残念なことに中身は幼児だからな!


 隣では口元を引きつらせたウェイグが「さすがドワーフ…」と呟いている。獣人にも腕力の強い者が多いが、ドワーフは種族全体で、漏れなく大力おおちからという特性持ちだ。そのわりに指先が器用で、主に鍛冶屋だとか細工師が多いという、結構謎な種族だ。大地から生まれた種族だから鉱石類と相性がいいんだ、という噂は、本当なのかもしれない。


「マルベリィ先生。あの、まさか逃げてたら、その棍棒振り回して追いかけてきてたんですか?」


 ようやく振り回すのを止めて、傍らに凶器を立てかけた幼女先生に尋ねれば、おれたちに椅子に座るよう促しながら自らもゆったりとした椅子に座り、当然といった面持ちで答える。


「そうですよ?呼び出しに応じない生徒は、これで背後から強襲して、強制連行してるです」

「それ死ぬだろ」


 幼女先生にツッコむだなんて、ウェイグは勇気があるというか恐れ知らずというか命知らずというか。

 おれには無理だよ、出来ないよ。


 すげぇという尊敬の念を込めてウェイグの横顔を眺めていると、幼女先生がなんだかにやにやといやらしい笑い方でおれを見る。


「おや?おやおや?これはもしかしてもしかしちゃう感じですか?」


「…嫌な予感しかしないんですけど何がもしかするんですか?」


「え?え?言っちゃっていいんです?いいんです?

 やぁん、青春っていいのです!ああ、でもでも、先生の口からはとても恥ずかしくて言えないですぅ、困っちゃうですぅ」


 いやんいやんと体をくねらせる度に、初見でも目を引いた、あの不自然なくらい大きな双丘がぼよんぼよんといった感じで揺れる。


 すげー、あんなの胸にくっつけてるひと見たことないや。


 村の祭りとかで、酔っぱらったおっさんが下手くそな女装をして爆笑の渦を巻き起こしていたけれど、あの時以来かな。あれは動いてる途中でだんだん詰め物がずれていって、最終的に腹に一つ、落ちかけて股間付近に一つぶらさがっていて、それもまた笑いを誘っていた。


 幼女先生はどんなに動いても位置がずれないので、これは自前のようだ。ぼよんぼよん揺れて、この上なく動きにくそうだ。寝る時どうしてんだろ、仰向けだと結構苦しいんだ、って実はかなりのプロポーションの持ち主だったミリアムが言っていた。彼女はどうも着痩せするタイプだったみたいです。


「…なぁ、それ言うために俺達を呼び出したわけじゃねぇんだろ?」


 僅かに眉をしかめただけで、射殺すような視線になったウェイグだが、これは別にイラついているわけじゃない。訝しんでるだけだ。でも大体、


「っ!ごほん、も、もちろんですよ、ローエンくん。これも偏に君たち生徒の緊張を解すための、先生のお茶目さんです。

 …あの、だからその噛み付きそうな目で見るのは止めてくれると嬉しいです」


「………」


「…まぁ、元気出せよ」


 別に睨んだわけじゃないのにな。

 先生にまで勘違いされたどこか寂しげなウェイグの肩をぽん、と叩く。

 うーん、ウェイグ耐性があるのは、どうやらうちのクラスだけみたいだな。未だに他クラスの生徒からは完全に避けられ、さらには目も合わせないようにあからさまに顔を背けられていた事すらあった彼の姿を思い出し、やっぱり不憫なヤツだという結論に至る。


「先生?ウェイグのこれはデフォですよ。気にしちゃダメです」


「これとか言うな」


「てへぺろ✩」


 ムッとしたような表情で、ウェイグが軽く小突いてくる。それに即座に反応し立ち上がったハルが、横手から、むぎゅうと抱きついてくる。

 

「ああっ、ウェイグずるい。おれもジルと遊ぶ!」


「遊んでねぇよ」


「うんうん、後でな。今は大事な用事があるからな」


 不満気ながらも「はぁい」と素直に言うことを聞いて、しかし椅子に座るのが嫌なのか、獣化しておれの隣に腰を下ろし、お座りの姿勢をとる。でけぇ。

 お座りしたハルと、立った時のおれの目線の高さがあまり変わらないってどういうことなの。


「メイルさんったらモテモテなのです…!くぅっ、イケメンハーレムとか乙女の夢をあっさり短期間で叶えちゃうだなんて…

 恐ろしい子…!なのですよ!」

「乙女の夢っつーかただの欲望じゃないですかそれ」


 おれ全然嬉しくないんだけど。

 確かに最近、妙におれの周囲に美形が増えてきている。でもイケメンとお知り合いになれても全く!これっぽっちも!嬉しくなんかないけどな!!けっ。

 「いい加減にしろよおいこら教師」という感情を載せた視線をじとりと送っていれば、うっとりと未だ桃色な妄想が止まらない幼女先生が戯言を漏らしながらも、はっと覚醒し、今更すぎるが威厳を正そうと二度目の咳払いをする。


 ていうか最後の「あぁ、ダメよそれはR18指定…」って他人使ってナニ考えてたんだこのロリィタは。


「ではでは!気をとり直して、本題に入りましょうです!!」


 慌てて、取り繕うように笑って言った幼女先生は、居住まいを正すときりっとした真面目な表情になる。


「昨日、お二人さんとハルちゃんが仕留めたあの大きなお猿さんですが、クラフティモンキーの変異体だという事が分かったですよ」


「え、ウソぉっ!?」


「あれが同じ猿だってのか?」


 あきらかに見た目が違っていたと思うんだけど。言外にそう伝えれば、先生もやはり、どこか納得いかないといった表情だ。


 大体、あれは攻撃手段からして違う。通常のクラフティモンキーは、精神的にくるような攻撃で、じわじわといやらしく追い詰めてくるような戦法をとる。奴らは力に任せた戦い方が出来るような、そんな膂力も身体も持っていないからだ。


 だがあの手甲猿は、体格も一回りどころか倍以上大きく、繰り出される攻撃は一つ一つが脅威で。

 何より、ともすれば金属の装甲ともとれるようなものが、皮膚の代わりにその筋肉を覆っていたのだ。他に見つかったことのあるどのクラフティモンキーの変異体にも、そんな特徴の出た個体はいない。


 そもそも魔物の変異体というものは、せいぜいが特定の属性を手に入れ強くなった変わりに反属性に弱くなったりだとか、体色の変化、あとは爪や牙、角の肥大化だとか変形程度ということだ。

 ちなみにグリーンビットからストラグリーンへの変化は進化であり、変異体と違って別物になるため、見た目も特性も、何もかもが変わってくる。共通するのは、瘴気パターンくらいなものである。


「変異体なんて、所詮はその程度で済むはずなのですよ。それが今回は、確かに体組織の作りや魔動脈、瘴気パターンまで一致したっていうのに、あきらかに別物になってたですからね」


 うちの狂人共が発狂してお祭騒ぎですよ、と最後は愚痴のように、溜息と共に漏らした。



 幼女先生の言う狂人共というのは、学園内に存在する、魔物・魔獣の研究機関に所属する教師や生徒を指す。

 所属条件はただ一つ、教師であれ生徒であれ、とにかく学園に在籍していればいいらしい。所属していなくても、出てきた結果は新聞のような様式にして各クラスに配布(という名のレポートの押し付けを)されるため、おれたちのような新入生にも、その存在は広く認識されている。


 ただし、所属員は皆一様に変人である、というオマケ情報付きだが。


 やつら、珍しい魔物や魔獣が出たと聞けば、地下だろうと海だろうと噴火中の火山だろうと行こうとするのだ。それを止めるのに、常識的な先生方がそれはそれは苦労していると聞いた。結果は出すので優秀なのだろうが、そのために自らの命を犠牲にしてもなんとも思わないような情熱を持っているので、質が悪いそうな。


 ちなみに、精霊は専門外だそうです。



「彼らの調査結果ですからね、疑いはしないですよ?でも今回ばかりは…」


「納得できない、と」


「です」


 おれの言葉にその幼い顔を不満げに歪め、腕組みをして、うんうんと頷く。見た目が幼女だからか、とても微笑ましく映るのは気のせいかな。


「本人たちもどこか納得いかないみたいで。それで、もうちょっと詳しく話を聞いてきて欲しいと頼まれたですよ」


「直接は聞きに来ねぇのか?」


「だよねぇ。普通こういうの――フィールドワークだっけ?って、自分でやろうとするんじゃないんですか?」


「ああ、君たちはまだここに入って日が浅いから、知らないのですね。

 彼らの厄介なところは、自分達が変人であると自覚があるところです。常識人相手に自分たちが話すと、まともに話が聞けないってヤツら分かっていやがるのですよ。なので、交渉事や事情聴取は「任せた」、と丸投げすることが多いのです、鬱陶しいことに」


 しわ寄せは毎回こっちにくるです、と言った幼女先生の顔はすごくうんざりしていた。そうか、だから嫌いなんだな。


「そういうわけで、私のためにも、何か気づいたこととかなかったです?変なこととか、君たちが感じたことでいいのですが」


「変わったことかー…」


「気づいたこと、なぁ…」


「わふぅ~」


 何かあったっけ?

 三人、もとい二人と一匹で、互いに顔を見合わせ、首を捻る。


「…そう言えば、ハル?お前、何で鉄鋼蔦で簀巻きにされてたんだよ?あれやったのって、猿?」


「ん?んん?? んーとねー…

 分かんない」


「デスヨネー」


 まぁ、期待はしていない。

 でもあれ、たぶん猿じゃないと思うんだよなー。なんで、って言われると勘なんだけど、なんとなく、人の手で縛られたもののような気がしたし。


「…ん。そういや、目がおかしかったような気がしたな」


「目?…ああ、そう言えば、なんかどろっといい感じに濁ってたよなー」


 冥い穴みたいに、と言いかけたところで、背筋にぞわりと悪寒がはしる。

 そうだ。そうだった、なんで忘れてたんだ!!


「ジル?顔青いぞ、どうし…

「ソーマだ、べレク・ソーマ!あいつの目と同じだった!!」


「な…!!」

「それ本当です!?」


「?」



 一人訳のわからないハルだけが、くぁっと暢気に欠伸した。




 * *




「…なるほど。で、保健室から帰ってきてからずっと、そこの犬はそのままというわけか」


 放課後。

 昼休みの出来事を、様子を見に来たレスターに告げれば、机の間、おれの隣にお座りしてぱたぱたと箒のような尻尾をふるハルを呆れ顔で見ながら、そんな答えが返ってきた。そっちかよ。


「うん、獣化した状態の方が楽なんだってさ。記憶失くす前も、殆ど獣化した状態で過ごしてたのかもな。そういうひともいるらしいから」


 寄せてきたハルの鼻面を軽く掻きながら、胡散臭そうに彼を見る(っていうより睨んでる、かも?)レスターに返事をすれば、一見すると分からない程度に眉を寄せたのが分かった。なぜか不機嫌度が増している。


 …これはあれか、友達が他の、それもぽっと出の新参者と仲良くしてるのを見て嫉妬してるのか。「仲良しはおれなの!」的な。

 なんだよ、こいつも結構可愛いとこあるんだなぁ。そういえばちっこい時は、ツンデレ予備軍だったっけ。野郎のツンデレなんてめんどくさいだけだと思ってたけど。


「なんだよレスター、妬いてんのか?」


「だ、誰が妬くか!妙なことを言うな!!」


 ニヨニヨ笑って言えば、焦ったように言い返してくるレスター。ぐっと腕を伸ばして、子供を宥めるようにその頭を撫でようとしたらさっと避けられたので、もっと嫌がるであろうと思い「照れ屋さんめ」と言いながら抱きついてみた。脳天に手刀を落とされた。痛い。


「あー、はいはい。お前ら幼馴染コンビが仲良いのは分かったから」


「ふははー、羨ましかろう!」


「何キャラだ、お前は」


 どうだ、とばかりに、ないわけではないが然程目立たない胸を張って言えば、ウェイグが律儀にツッコミを入れてくれる。

 姉ちゃんは、学園と言えば「ラブ♥ロマンス」らしいが、おれはこういう友情を育む方がメインじゃないかと思うんだ。あの頭のちょっと沸いた発言を聞いた時は、しばらく仕事休んだらいいのにと、わりと本気で思った。


「おれも!おれも、ジルと仲良しだよね!」


「ハルは本当にジルが大好きですね」


 おれが微笑むミリアムに見守られながらウェイグと戯れているところに、ハルが自分も混ぜろとばかりに割って入る。おい、その巨大な犬の姿で伸し掛られると、人型の時より重いんだが。

 すると、何かの沸点に達したロアナが唸り出す。


「うぅ~~~!レスターせんぱい、しっかりしてください!

 ここは幼馴染として、ハルくんにこう、ガツン、と!言うところですよ!『お前にジルは渡さない』って!!」


「ぶっ!!い、一体何を言い出すんだ、貴様は!!?」


 狼狽えるレスターは見ていて楽しいのだが、ちょっと可哀想かもしれない。おそらくこの中で一番ロアナのとんでも発言に耐性のないこいつには、結構な爆弾だったろう。しかもおれがおとk(以下略

 青いような赤いような。そんな器用な顔色をさせたまま、あわあわし続ける可哀想な我が幼馴染のために、おれはふ、とうっすら微笑んで。


「…ロアナ、今度はなんの影響かな?」


「最近流行りのロマンス小説でね、ずっと一緒にいた幼馴染と、出逢ったばかりの男の子との間で揺れる恋心をテーマにしたお話があるの!これがとってもきゅんきゅんするの!!」


「…レスター、そういうことだ」


「…ああ、なるほどな」


 ぐっと拳を作り、いい笑顔で言い切るロアナ。その瞳にはきらきらと何かに対する憧れが見え隠れしているが、おれは気づいていない。そうとも、気づいていないのだ。


 事情が分かったレスターも、先程までの狼狽えぶりはどこへやら、冷静さがお帰りなさいしている。


 ちなみに今更だが、不要な混乱を招くかもしれないという事で、ベレク・ソーマのことは話していない。奴が今回何をしようとしていたのか、その目的を、今回の大運動会の戦闘記録(ちゃんと全校生徒分とれる魔道具があるらしい)や、生徒たちの提出するレポート(生態系への影響でも、集団戦闘における考察でも、なんでもいいらしい)から情報を集めて探るつもりのようだ。


 しばらく内緒ですよ、と幼女先生に可愛くウィンクしてお願いされた。


 実際にやると両目共瞑っちゃうとか、出来ても口元がひょっとことか、成功率の低い高等技だ。そのせいか、おれが見たことあるのは、もっと頑張りましょうとしか言えないくらい、残念な結果が多かったのだが。さすが外見美少女(美幼女?)なお色気先生、ばっちり決まっていた。


 おれはやったことないが、確か姉ちゃんは両目瞑っちゃうタイプの残念仕様だった。それでも可愛く見えるというハイスペックさを見せつけてくれていたがな。

 しかしその直後にした「決まってたでしょ」とばかりの得意顔で、全て台無しになっていた。


 正直に言ったら脳天に拳骨が落ちてきた。

 ああ、なんて理不尽。世の中なんて、そんなもん。



「しかしまぁ、色々あったが。

 大運動会と、後は試験さえ無事終えれば、外部からの依頼クエストを課外授業の一環として受けられるようになるからな。達成結果は成績に反映されるし、将来を見越した人脈作りもできる。…まぁ一番は、これが存外、楽しいということなのだがな」


 小遣いも稼げるぞ、と笑みを浮かべながら言うレスターに、ウェイグが首を傾げ、不思議そうな顔で訊く。


「小遣い?先輩って貴族だろ?仕送りくらいあるんじゃねぇの?」


「あぁ、ガーランドにいた時はあったがな。こちらでは、依頼をこなしながら食い扶持を稼ぐことも、勉強の一端を担っていると聞いてな。ならばと、私もそれに従うことにしたのだ」


「郷にいっては郷に従え、と言うことですね」


「うむ、そういうことだな」


 そんなシステムだったのか。聞いた覚えないんだけど。


「そっかー、じゃあ、やっと外に出られるんだな。

 …ティオナ先輩とガレク先輩、誘ってくんないかなー」


 軽いお誘いラブコールは貰ってるし、嫌がったりはされないと思うんだ。あの二人、面倒見がいいし。


「何に誘うんだ?」


「ほあ!?」


 噂をすればなんとやら。

 相変わらず表情の分かりにくい爬虫類顔だが、不思議そうにしているという雰囲気だけは伝わってくるガレク先輩が、おれの背後にいた。

 ていうかこの人表情もそうなんだけど、気配とかも分かりにくいんだよなー。

 外見が爬虫類だからだろうか?


 二メートル越えの身長を見上げるが、鱗人スケイラーの、特に『竜頭族』は余裕で三メートルとか四メートルとか越えちゃうので、ガレク先輩は小さい方なのだそうだ。それでもでけぇってどういうことだ、どちくしょう。


 見上げていたら、何を思ったのか、その硬い鱗に覆われたごつごつの手に頭をぽふぽふと叩かれる。ウェイグよりもちゃんと手加減してくれるその手は、爬虫類独特の冷たさでひんやりとしているものの、とても優しくて温かだ。


「それで、一体何の話をしていたんだ?俺の名が、出ていたように聞こえたが」


「大運動会が終わったので、外部依頼を受けられるようになる、という話をしてやっていたところです」


「ああ、なるほど」


 不思議そう(たぶん)なままの視線を向けられたレスターが答えれば、ゆるく頷いて納得(たぶん)する。本当に表情が分かりにくいなぁ。


「ん、そうだな…ジル。お前たちが本格的に外部依頼を受けられるようになるのは、火六シュネーの月からになる」


「そうなんですか」


「ああ。だから、お前たちさえよければだが…こなせそうな依頼があれば、とっておいてやろうか?」


 五人でパーティを組むのだろうと言って、こてん、と妙に可愛らしく首を傾げながら、提案してくれたガレク先輩の言葉に、おれたちは顔を見合わせる。

 願ってもない申し出だ。




「お願いします!」




「はは、素直でよろしい」



 おれたち五人の仲の良いお返事に、ガレク先輩がきゅっと目を細め、満足げに頷いた。













*おまけの会話*



「あ。ガレク先輩が暇なら、一緒に誘いたいなーって思ってるんですけど」


「ん?そうか…

 せっかく後輩が誘ってくれていることだしな、せいぜい都合を合わせてみるよ」


「わぁい、やったー!」


「おれも一緒に行きたい!」


「うん、行けたら行こうな(戦力になるし)」


「わぁい!ジルとおでかけー」

「いや、おれだけじゃないからな?」




(は…っ!

 これは…新たな恋敵ライバルの…ジルちゃんを巡る、恋の嵐が吹き荒れる予感…!!?)


(ロアナ、ジルで遊ぶの、止めてあげましょう?)


(あいつって昔からああなのか?人懐っこいっていうか…)


(まぁ、基本そうだな。本能レベルで敵味方の区別を付けているせいかも知れん)


(マジか)





「ああ、でもその前に、筆記試験をちゃんとパスしないといけないぞ?」


「…ミリアム、部屋でお勉強会という名のお茶会しない?」


「…先輩、復習も兼ねて後輩に教えてみる気はありませんか」


「貴様ら二人共ちょっとそこに直れこの脳筋共」

はい、ジルもウェイグも座学となると極端に怪しくなります。

身体動かしてる方が好きだったり、身体で覚える典型的なタイプです。


ちなみに実技は二人共余裕すぎるほどの高得点を叩きだしてます。他クラスへの援護に向かった、というのがプラス評価になったようで、ジル達のクラスは平均的に優秀な結果となりました。


ロアナは故郷を出てから「小説」という物に出会ったらしく、主に(他人に)借りたり(図書室で)借りたりして読み漁っているようですよ。特に恋愛小説がお気に入りで、妄想が暴走しやすくなりました。妄想被害者は主にジルなので、周りは止める気がありません。だってこっちきたらヤだし。

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