第9話 魂エネルギー
ーーこのままじゃみんなが…!
リフカールのギフトによって周囲の風がどんどん集まっていく。やがてそれらは鋭利な刃のようなものになった。
すると突然、師匠がムクっと立ち上がった。先程の攻撃のせいか、師匠はところどころ傷ついていた。
「まだ立ち上がるの?今の状態じゃリフカールに手も足も出ないと思うけど。」
リフカールは師匠にいやらしい笑みを浮かべた。人を見下すような意地の悪い笑顔だった。しかし師匠はリフカールのそんな挑発には乗らず立ち向かっていった。
「この子たちは私の弟子です。師匠として私はこの子たちを育て、そして…守らなくてはいけません!それに、私はこの森の主人でもあります。」
いつも穏やかな師匠からは想像もできないぐらい覇気がある声だった。俺たちのことをそこまで大事に思ってくれていたなんて。
「弟子も森も守る。そのために今、私はあなたを倒します。」
リフカールは少し黙り込んだ後、不気味にニヤッと笑った。
「へぇ。じゃあ、お前から先に殺してあげる!」
リフカールは先ほど作っていた風の刃を師匠目掛けて思いっきり振り下ろした。師匠は全く動揺していない。しかし風の刃はどんどん迫っていく。
「避けてください!」
俺は咄嗟に声に出した。このままでは師匠があいつの攻撃の餌食になってしまう。そう思っていた。しかし、攻撃が当たる寸前、師匠は一瞬にして消え、風の刃は壁に当たって散っていった。攻撃を受けた壁は粉々になっており、あの風に当たってしまえばただじゃすまないことを物語っていた。
「え。ど、どこに消えたの!?」
リフカールも理解が追いついていないのか辺りをキョロキョロと探し出した。しかし師匠らしき人物は見当たらない。するとリフカールは何かを察知したのかハッと息を呑み、恐る恐る後ろを振り返った。
リフカールの瞳に映っていたのは師匠の姿だった。
「やばいっ。」
リフカールは咄嗟に防御の姿勢を取ろうとしたが、そんな隙を与えることもなく師匠は蹴りを入れた。
ドゴォンという鈍い音が響き、リフカールは俺たちの後方の壁へ激突していった。衝突した部分の壁はボロボロと崩れ落ち、リフカールはぐったりとしていた。
「使命を果たすためなら子供相手だろうが容赦しませんよ。」
そういい師匠はリフカールを見つめた。哀れんでいるような、冷酷に見下すかのような複雑に感情が絡み合った目をしていた。
呆気に取られていたところエルスさんが師匠に話しかけた。
「大丈夫ですか?」
師匠は先程の目つきとは打って変わって、いつもの穏やかな目をエルスさんに向けた。
「大丈夫ですよ。傷も治ってきましたし。」
「あの少女放置しておいて大丈夫ですかね。」
「問題ないと思いますよ。魂エネルギーが対面した時とは比べ物にならないほど減っています。起きたところで私たちにギフトを使うことはできないでしょう。」
魂エネルギーか。そういえば初めてこの人たちと会った朝食でも、仮面の男にも同じ話をされた。両者ともに魂エネルギーが少ないと言われたが、ギフト素人ということだろうか。
「あの。」
珍しくただただ傍観していただけのワイドがようやく口を開いた。
「ずっと前から疑問だったんすけど、魂エネルギーってなんなんですか?」
「え。師匠説明してなかったんですか!?」
「そういえばしてなかったかも。あはは。」
「あははじゃないですよ!命に関わるほど重要なことじゃないですか!」
師匠はエルスさんに説教を喰らい、珍しく凹んでいるように見えた。
ーーあの師匠でも説教されることあるんだな。しかもエルスさんからなんて。
「でも、こうして機会ができたわけだし、よかったじゃないですか。」
「まぁそうですけど。」
「じゃあワイド君とガイル君向けに魂エネルギーの説明をしようか。」
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ギフテッド:リフカール・フペルガ
ギフト:アネモス
風を操ることができる能力。
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「魂エネルギーはギフトを使う上で欠かせないものです。車を動かすためのエンジンってとこですかね。」
「ふむふむ。」
「エンジンと同じように我々がギフトを使うと魂エネルギーは消費されます。」
「なら、使いすぎるとどうなってしまうんですか?」
俺はふと疑問に思ったことを質問した。ありきたりな質問になってしまったかもしれないが素人だからしょうがない。
「いい質問だね。ガイル君。もちろん魂エネルギーには限界がある。もしその限界を超えてギフトを使用した場合…魂ごと消えて消滅します。」
「た、魂ごと!?つまり簡単に言えば死ぬってことですか?」
「はい。」
ギフトにそのようなデメリットがあるとは知らなかった。他の人たちの場合だと自分の意思によって発動するからいいが、俺の場合突発的に起こるため魂エネルギーの消費を抑えられない。
「バカだからわかんないんですけど、魂が消滅ってどういうことすか。普通の死と何も変わらなさそうっすけど。」
「死んだら冥界に行くとか輪廻転生するとかあるでしょう?それがなくなるってことです。この世界からその人という存在がなくなるんです。」
「視覚的な違いでいうなら、骨が残るか残らないかだ。」
クオレさんが師匠の説明に加えて教えてくれた。
「じゃあ魂エネルギーは回復できないんですか?」
「できますよ。睡眠を取ったり食事をしたりと十分な休息を取ることが大事ですね。」
ーー急に予知してもいいように毎日十分な睡眠時間を確保しないとな。
そのようなことを考えていると、ふと疑問に思った。仮面の男もこの人たちも魂エネルギーがどうとか言っているがどうやって見極めているのだろう。
「ちなみに魂エネルギーって見れるんですか?」
「見れますよ。集中して見てみるとオーラのようなものが見えるはずです。」
ーーこういう人たちって感覚でやってること多いからな。俺にも見えるのかな。
少し不安に思いながらもとりあえずと師匠のことを集中して見てみた。すると本当にオーラのようなものが師匠の周りを囲っていた。
「見えた!このモヤモヤしてるやつが魂エネルギー?」
ワイドも見えたのか声を出していた。
「ギフテッドならギフトを発現させた時点で身につけられる能力です。」
ーーそんな初歩的な技術だったのか。
ワイドは感激したのか師匠のみならず他の人たちの魂エネルギー量も見ていった。
「全員魂エネルギー量多いですね。どれくらいここで修行してるんすか?」
「もしかして…師匠、修行の目的も言ってないとかないですよね。」
「え、あ、えーとその、言ってないかな…」
「なんです?ボソボソ言ってて聞き取れなかったんですが?」
「言って…ないです。」
「やっぱり。それじゃただの誘拐ですよ。」
誘拐とは思わないが、確かに修行の目的を聞いていなかったかもしれない。師匠たちがいつからここにいるのかとかも。
「なら、それは私たちが説明するよ。連れてきた張本人だしね。」
「そうだな。」
そういうとヴィジアさんとクオレさんが前に出てきた。
「実は私たちも町が壊されちゃったんだ。」
「え。」




