第8話 襲撃
俺が未来を見てからすぐに師匠達の元へ向かった。まだ敵らしき人物は来ておらず、エルスさんに師匠、それにワイドは図書室で本を読んでいた。
「皆さんどうしたんですか。そんなに慌てて。」
「俺、また未来予知をしたんです。それでここが襲撃されているのを見て。」
状況を把握したのか師匠は読んでいた本を閉じ、さらに質問をしてきた。
「襲撃とはどういうことでしょう。」
「そのまんまの意味です。この図書室に何者かが来て、 色々破壊し尽くしていて…えっと。」
「ガイル君はまだギフトを使いこなせていないんでしたね。」
「はい…襲撃されるという大まかなことしか分からなくて…」
「それだけでも充分ですよ。今こうして皆が集まれたわけですし、迎えつ準備はできました。」
エルスさんもワイドも本を閉じ皆がいる方に歩いてきた。
「襲撃か。師匠、やっぱりあいつのせいなんでしょうか。」
「そう…でしょうね。」
俺はエルスさんと師匠の会話の意味がわからなかった。あいつとは誰のことなんだろう。俺の町を襲撃した仮面の男か?今の俺には全く検討もつかないが、2人は何か知っているのだろう。そもそも、なぜこの人たちが、この森で修行していたのか、それすらも分からない。
「師匠、誰かがこの森に侵入してきています。徐々に我々のいる場所へ向かってきています。」
俺の予知を聞いて、クオレさんは自分のギフトを使って影から影へ移動し、森の見回りをしていたみたいだ。そこで侵入者らしき人物を見つけたらしい。
「全く疑ってはいなかったけど、やっぱガイルの未来予知ってほんとなんだね。」
「ヴィジアはガイルの能力について知っていたの?」
「うん。出会った時に披露してくれたからね。未来予知のおかげで私は助かったといっても過言ではないよ。」
「なるほど。突発的ではあるけど、正確さは確かみたい。」
少しばかり雑談をしていると、突如、嵐のようなものがおこり建物全体がガタガタと揺れた。侵入者が到着したということだろうか。
「皆さん気をつけてくださいね。相手がどのようなギフトを持っているか分かりません。エルス君、君は盾の用意をお願いします。」
「了解です。」
そういうと、エルスさんは前方に手を掲げ始めた。するとエルスさんの目の前に盾が出現した。これがこの前リヴァさんが言っていたエルスさんのギフトなんだろうか。見た感じ、武器を作り出すことができる能力なのだろう。
エルスさんのギフトに夢中になっていると、さらに風の勢いが強くなったのか、扉が吹っ飛んでいった。強風のせいで舞った砂が図書室の中に入り込み、部屋の中に砂嵐が舞った。
ーーいったい何が起こってるんだ。
数秒が経ち砂嵐がだんだんおさまってきていた。師匠達は皆無事だった。
ーーごほっごほ。すごい砂嵐だった。
少しずつ視界が晴れていき周りの状態も見れるようになってきた。扉が吹っ飛んだせいで、外からの光が図書室に入り込んでいた。
光の方向を見てみると何者かが立っていた。
「この建物すっごくもろい〜。リフカール、簡単に吹っ飛ばせちゃった〜。」
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ギフテッド:エルス・シーファ
ギフト:シディルギア
武器を生成することが可能。想像力次第ではギミック付きの武器を生成することもできる。
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ツインテールをした幼い見た目の少女が宙に浮いていた。
ーーう、浮いてる?そういうギフトなのか?
少女の足元をよく見てみると小さな竜巻のようなものができていた。
ーー建物が壊れたのも風のせいだ。もしかするとあいつの能力は風?
「おぉ。砂嵐がおさまってよく顔が見えるようになってきたなぁ!」
少女は真剣に俺たちを観察したあと、何かに気付いたのか大声で喋り出した。
「むむむぅ〜?こいつのこと知ってるような。」
そういうと少女は宙に浮いたまま俺の目の前まで近づいてきた。注意深く隅々まで観察され、ある一点で視線が止まった。
「蝶のネックレス!ゼロノクスが言ってたやつってこいつなのかぁ!?」
ーーゼロノクス?誰のことを言ってるんだ。それに蝶のネックレスに反応した?
「あいつが言うほど強そうには見えないけど、殺したら殺したであいつにいろいろと怒られそうだしなぁ。よし!お前だけは生かしといてやる!」
すると突如俺の目の前を剣が通り過ぎた。目の前にいたはずの少女はいなくなり、リヴァさんと目が合った。
「もう!あんたのせいでリフカールの可愛いお洋服が汚れちゃったじゃん!」
「そう、かわいそう。」
そういうとリヴァさんは一瞬の隙も与えずまたも少女に切り掛かっていった。だが、その斬撃も先ほどと同じく風を切っただけだった。
「リフカールの話聞いてよぉ!まだ自己紹介もしてない!」
ーーわざわざ自己紹介しなくても名前はわかった気がするが…
「コホンッ。私はリフカール・フペルガ!イクエス様のヘタイロイの一人である!」
「ヘタイロイ?」
「ヘタイロイは王の側近のこと。簡単に言えば近衛兵みたいなもの。」
俺の質問には隣にいたリヴァさんがすぐ答えてくれた。ヘタイロイ…王の側近ということはイクエスっていうやつに従ってこのようなことをしているのだろうか。それにヘタイロイの一人…他にも側近がいるっていうことだろうか。
「自己紹介は済みましたか?できれば我々は戦闘などしたくないのですが。」
「せっかちなやつだな!終わったよ!でも、戦いたくないっていう望みを叶えることはできないなぁ。」
「そうですか。なら、全力でかかるのみです。」
「皆殺し…いやあいつ以外を殺して、イクエス様によしよししてもらうもんねー!」
そういうとリフカールは襲撃してきた時と同じように大きな竜巻を起こした。
ーー風力が強すぎる。立ってるだけでも精一杯だ。
エルスさんが事前に師匠の命令で作っていた盾を取り出し、俺の前に立った。
「みんな!俺の後ろに来るんだ!盾である程度は風を防げる!」
エルスさんの声が聞こえたのか、皆図書室の中央へと固まった。
「ふぅん。盾で防御してるんだ。一箇所に固まっちゃって、雨宿りしてる虫ケラみた〜い! 踏み潰すのが一回で済むから助かるけど〜♪」
「一箇所に固まってる?一人を除いてだけどな。」
「えっ?」
すでにスキアを使って影を移動していたクオレさんがリフカールの背後から現れ、思いっきり蹴りをいれた。蹴り飛ばされたリフカールは宙で体勢を立て直した。背中をさすりながら、底冷えするような視線でクオレさんを睨みつける。
「痛いんだけど!リフカールの可愛い体に傷をつけるなんて、絶対許さないんだから!!」
激怒したリフカールを中心に、先ほどとは比べ物にならないほどの暴風が吹き荒れ始めた。風圧だけで図書室の壁や天井がメリメリと音を立てて崩壊していく。
「みんな、下がれ!!」
エルスさんが再び巨大な盾を前面に構える。だが、本気になったリフカールの風は、盾の防御すらも力任せに押し潰しにかかってきた。ミシミシと嫌な音が鳴り、エルスさんの顔が苦痛に歪む。
「そんなボロっちい盾じゃ、この風は防げないよーだ!」
リフカールが手を振り下ろすと、風の刃が図書室全体を縦横無尽に切り刻んだ。舞い散る木片と本、猛烈な砂嵐の中で、視界が完全に奪われる。
「ガイル、危ない!!」
ヴィジアさんの声が聞こえた瞬間、俺の目の前でエルスさんの盾が風の圧力に耐えかねて弾け飛んだ。
衝撃で全員が吹き飛ばされ、体制を崩して地面に倒れ込んだ。
「ふぅー、すっきりしたぁ♪」
ゆっくりと砂嵐が収まっていくと、宙に浮いたリフカールが、ゆっくりとこちらへ降りてくるのが見えた。周囲を見渡せば、師匠たちも風圧に押されて身動きが取れずにいる。
「さてと。ゼロノクスが言ってたお前以外はここで殺しちゃおう!」
リフカールがニッコリと笑い、その手元に鋭利な風の刃が収束していく。
——このままじゃみんなが…!




