第7話 初めての修行③
リヴァさんはこの大鎌を軽々と持ち上げられないようなら勝てないと言っていた。その言葉を素直に受け取り、まずは筋力を鍛えることにした。
ーー脳筋戦法だと言われてしまえばそうだが、何もやらないよりはマシだろう。
ー1週間後ー
まだ完全には筋肉をつけられていないが前よりはだいぶマシになっただろう。格闘技を習っていたこともあってかマッスルメモリーが働き、短い期間で成長することができた。それに加え、師匠から少しアドバイスをもらい無駄のない動きをすることも少しづつだができるようになってきた。
すると、俺の成長を見越してかリヴァさんがタイミングよく修行場に戻ってきた。
「師匠から聞いたけど、案外頑張ってるのね。」
この澄ました態度は先輩ながらも少し腹が立つ。案外だなんて、この人は俺が修行を放棄するとでも思ったのだろうか。
「はい。少なくとも一週間前の俺とは違います。」
「そう。なら戦ってみましょう。」
リヴァさんは持っていた木の棒を投げ捨て腰にかけていた剣を抜き出した。
ーーもしかして、本物の刃でやるきなのか?
大鎌を使ってもリヴァさんなら避け切れるという安心感があったため俺は本物の刃でやっていたが、リヴァさんも使うなんて。躱せるかどうか不安になってきた。
「大丈夫。直前で止めてあげるから。君が下手に動けば怪我するかもだけど。」
「…わかりました。信じます。」
心の準備が終わり、いよいよ戦闘を始めようとした時、
「おーい!二人ともー!」
森の奥の方から聞き覚えのある声がした。目を凝らしてみると二人の影があった。
近づいてきたことによって顔が鮮明に見えるようになってきた。あの二人はヴィジアさんとクオレさんだ。
「どうしたの。」
「いやー。リヴァがガイル君と勝負するっていうから気になって見に来ちゃった。」
「すまん。勢いがすごくて…止められなかった。」
修行の途中だったのかヴィジアさんは両手が虎のようなものに変わっていた。聞いている感じ、この二人はペアで修行しているのだろうか。リヴァさんは少し呆れていながらも、
「なら端のほうで観戦していて。くれぐれもガイルの援護はしないこと。」
そう言われると二人は修行場の端っこの方に歩いて行った。
観客も揃い、いよいよ準備が整った。
「では!第一回リヴァ対ガイル。レディ?ファイト!」
ヴィジアさんが合図をした拍子に俺は先手必勝でリヴァさんに飛びかかった。
ーーやるからには、殺す勢いで。
俺は躊躇いもなく鎌を首元に持っていこうとした。
ーーいける。
そう思い、力を振り絞って大鎌を振った。しかし、皮膚に当たった感触はなくただただ空気を切っただけだった。
「これで成長したっていうの。笑える。」
直後に後ろから声が聞こえ、振り向くと剣が振り下ろされる直前だった。俺はとっさに鎌の持ち手を使い防御した。そこで一気に斬りかかろうとせず、リヴァさんはすぐに身を引いた。かと思った次の瞬間ものすごいスピードでまた斬り掛かってきた。今回は身を引くことはせず次々と攻撃を仕掛けてきた。剣での攻撃が止んだと思えば、腹に思いっきり蹴りを入れられ、俺は後方まで飛ばされてしまった。
「防御をとっているだけでは私には勝てない。」
その通りだ。俺は今、リヴァさんの攻撃を躱すことだけで精一杯だ。攻撃仕様だなんて考えている暇もない。
ーーくっ。どうすれば。
「ガイル君。ガイル君。」
名前を呼ばれ、声がしたほうを向いてみるとヴィジアさんが喋っていた。
「実力ではリヴァには勝てないよ。頭を使ってみて!」
なるほど。確かに俺はとりあえず急所を狙って大鎌を振っていた。最初から急所を狙おうとしたって相当の実力者でなければ成功しない。ならば徐々に弱らせていくしかない。
ーー逃げ回って体力が尽きるのを待つのは難しそうだ。俺のほうが先に限界が来てしまう。なら攻撃手段をなくすのは…?
リヴァさんの今所持している武器は剣。それをどうにかして手放させることができれば、どんなに実力のある人であろうと刃物対素手なら勝てるはずだ。
ーーでも、あの俊敏さだ。躱されて…いや、視界を無くせば?
どんなに速かろうが標的の位置が分からなければ意味がない。
思い立ったらやるのみ。俺は大鎌を地面と平行に構え一回しした。途端に砂埃が舞い始め、先ほどより視界が悪くなった。
ーー視界を遮れるのはものの数秒。そのうちにやらなければ。
ピキッ。
歩いた拍子に落ちた枝を踏んだのか音がした。
ーーそこだ。
俺は音のした方に向かって行った。大鎌を振り、砂埃を払うと目の前にはリヴァさんがいた。予想はついていたのかすでに防御の姿勢を取っていた。しかし、俺の目的は剣を振り払うこと。大鎌は振らず、手に思いっきり蹴りを入れた。蹴られた時の反動で手が緩み、剣は後方にとんでいった。
ーー勝った。
そう思い今度こそと首に斬りかかろうとした。すると、隠し持っていたのかリヴァさんは銃口を向けてきた。
バンッ。
俺は無意識的に恐怖で目を瞑っていた。恐る恐る目を開けてみると、怪我はしておらずどこからも血が出たりなどもしていなかった。
「流石に偽物だよ。」
そういうと、今度は自分の頭に銃口を突きつけ、引き金を引いてみせた。
バンッ。
音はするものの銃弾などは出ず、反動もなかった。
「この銃を使わせるなんて。思っていたよりも成長したみたい。」
「えっと、この勝負の結果はー?」
「ガイルの勝ちだな。」
そう言われたが、まだ理解ができずリヴァさんの方を見つめた。すると、
「クオレの言う通り、君の勝ちだ。」
勝負をした本人にちゃんと認められたからなのか、ようやく納得することができた。初日では手も足も出なかったのに、剣を振り払うことができたのだ。大きな成長だと思う。
「けど、先のことを見据える能力は身につけないとね。私みたいに持っている武器が目に見えているものだけとは限らない。」
すぐにダメ出しをされてしまい、勝負に勝ったことに対し喜べばいいいのか、悔しめばいいのかよく分からない複雑な気持ちだ。
「ガイルすごいじゃん!先輩に勝っちゃうなんて!」
「先輩?年上ってことですか?」
「そうだよ。リヴァは私たちより2歳年上の18歳なんだ。」
なるほど。どうりで大人びているわけだ。
「ヴィジアと大違いだな。」
「クオレ、今なんて言った?」
相変わらずあそこの二人は仲が良さそうだ。笑顔で二人を見守っていると突如脳裏に映像が流れ込んできた。
図書室のようなところに師匠、エルスさんそしてワイド。
建物の前には見知らぬ人物。
師匠とエルスさんがそいつと戦って負傷している。
本が散乱しメチャクチャな状態の図書室。
ーーこれは未来予知!
「皆さん。もしかしたらこの後誰かがこの森に来るかもしれません。」
「誰かって?」
「とりあえず俺たちの敵です!今すぐ図書室に行かないと!」
リヴァさんやクオレさんは俺の能力について知らないだろうが、何かを察してついてきてくれた。町の時や家が崩れた時など、映像を見てからどれくらい時間が経ったら起こるのかは予想がつかない。だからこそ、早く図書室に着かなくては。
「へぇ。ここにギフテッドが溜まってるんだぁ?」




