第6話 初めての修行②
ようやく思い出すことができた。師匠からおすすめされたのは火盗みの神というタイトルの本だ。いかにもファンタジーっぽくあまり受け付けないのだが、師匠に「感想をお聞きできるのを楽しみにしていますね。」と言われてしまったため読まざるを得ない。
「俺も読んだことがない本だな。」
「エルスさんはどれくらい本を読んだんすか?」
「一万冊ぐらいだな。」
「一万!?いつからこの修行してるんすか。」
「んん。説明するのが難しいな。まあ簡単に言えば、物心ついた時からこの図書室に通っているだ。」
物心ついた時から?というと6歳くらいだろうか。そんなに小さい頃からギフトが発現し、修行していたとは考えずらい。予想として親子という考えもあるが朝食の時の二人を見た感じそのような雰囲気ではない。色々気になることが出てきてしまい聞いてみたくなったが、ここで詳しく説明しなかったということは今は話したくないのだろう。そんな話を無理やり聞こうとは思わない。
「ずっと本を読み続けているが、この図書室の本を全て読み切れる自信がない。」
そう言われ、図書室を見渡してみるとザッと数えただけでも二十万冊はある。この中から目当ての本を探さなければいけないと考えるだけでも気が滅入る。
「この中から一冊を探さなきゃいけないのか。」
「そうか。お前知らないのか。」
「え?」
「師匠はこの図書室の本を全て読んだことがあるらしい。聞けばその本の位置を教えてくれると思うぞ。」
物心ついた頃から図書室に通っているエルスさんでも読みきれないこの量をあの人はすでに読破しているとは。
ーー二十代後半ぐらいに見えるが、あの人何歳なんだ?
どうせわからないだろうと思い、読んだふりをして適当に感想を言おうと思っていたが、ここにある本を全て読んだことがあるなら話は別だ。出鱈目なんかを言ったらすぐにバレてしまう。
「なら俺、師匠にその本の位置聞いてきますよ。」
そういうとワイドは図書室から出て行った。
この図書室にくるまでは師匠に案内してもらった。広大な森なのですぐに迷子になってしまいそうだが、木に刃物で目印をつけてくれているためそんな心配は必要なかった。
そんなに急ぐことでもないと思い、先ほどガイルといた場所に歩いて向かっていたところ道の途中でガイルとリヴァさんを見かけた。見たところ戦闘訓練をしているみたいだ。
ーーあいつもう模擬戦してるのか?俺は読書時間だぞ。
嫉妬からなのかどこか焦りを感じた。俺も早く実践をしたい。そのためにも早く読書を済ませ、想像力を鍛え、師匠に認めてもらわなければ。そう思い、歩くのをやめ走って師匠のところへ向かった。
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ギフテッド:リヴァ・フェラル
ギフト:???
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ーーワイド。
リヴァさんと修行をしていると木の向こうで走り去っていくワイドが見えた。そちらに気を取られていると、
「よそ見しない。」
そう聞こえ、直後に木刀で思いっきり腹を叩かれた。こんなに本気でくるとは思わなかった。新入りだろうが容赦なく修行をつける先輩なのだろう。
「実践相手ができたのは嬉しいけどこれじゃ、お遊びにもならない。」
「それは…すみません。」
「ま、私がみっちり修行つけてあげる。」
ーーリヴァさんに鍛えてもらって、もっと強くならないと。
本来ならばギフトを自在に操れるようになるような修行がしたかった。しかし、「未来を予知できるとしても、それを対処できる戦闘能力がなければいけません。」と言われてしまい、この状況だ。今は師匠に従い、リヴァさんと戦闘技術を上げていこう。身体能力が上がるに伴ってギフトの制度も上がっていくかもしれない。
「ところで君、好きな武器何?」
「え?」
唐突な質問に目を丸くさせてしまった。俺はしばらく考えた後、
「鎌、とかですかね。」
と答えた。特に理由はなかった。なんとなく鎌がいいような気がしてそう答えた。リヴァさんは少しびっくりした後
「ちょっと待ってて。」
と言ってどこかへ行ってしまった。
鎌なんてここにあるのだろうか。普通武器といえば剣、弓、槍などを想像するだろう。鎌などと言ったためにリヴァさんに迷惑をかけてしまったかもしれない。ことが終わった後に一人反省会を開催して、数分後思っていた以上に早くリヴァさんが帰ってきた。その手には死神が持っているような大鎌があった。
「これが君の武器ね。」
そう言われると大鎌を手渡された。リヴァさんが軽々と持っているものだからそこまで重くないのだろうとみくびっていたが意外、手が持っていかれそうになるほど重かった。
ーーこれをあんなに軽々と持ち上げるなんて…
そう思ったと理解できたのかリヴァさんはこう言ってきた。
「これくらい持てなきゃ、私には勝てない。」
見た目に反して馬鹿力すぎる。一体服の下にはどれくらいの筋肉があるのだろうか。それともギフトの影響だろうか。
「あの、リヴァさんのギフトってなんなんですか?」
「私のギフトは…わからない。だが、魂エネルギーはある。だから実戦をして戦闘技術をあげている。」
おそらくリヴァさんも師匠からギフトを見極めるための試練のようなものを受けただろう。それでもわからないなんて。
「ちなみにその大鎌はエルスのギフトで作られたものだ。」
なるほど。だから好きな武器を聞いてきたのか。そのようなギフトを持っているなら、なんと答えられても安心だ。一人で反省していた意味はあまりなかったようだ。
「では、その大鎌を使って実際に戦ってみましょう。」
「え、でもこれ本物の鎌ですよ。下手したら大変なことに。」
「私のこと、舐めないでよね。素人が傷をつけられるとでも思わないこと。」
リヴァさんに怪我をさせてしまうかもしれないという心配と、素人と煽られて怒りを感じる二人の自分がいた。しかし、今までのリヴァさんの戦闘能力を見る限り、相当実力者なのは確かだ。ならばと心配の気持ちが薄れ戦闘心が高まった。
「そこまで言うんだったらやりますよ。でも、俺も本気でやりますからね。怪我しても文句言わないでくださいよ。」
勝負は一瞬だった。今考えたらバカなことをしたと思う。大鎌を振りかかった時に生じる隙のことを全く考えていなかったのだ。上に持ち上げているうちに木刀で腹を殴られ、そのまま蹴りもお見舞いされた。
「あんなに大口叩いてたのが嘘みたい。」
地面に横たわって呆然としている俺にそう語りかけてきた。嘲るような仕草は見せず、無表情のままだった。もはや笑ってくれた方が楽だと思った。自分でもなぜあんなことを言ってしまったのだろうと後悔し始めた。
「またやったところで今の状態じゃ結果は一目瞭然。私は別のところへ行ってくるから、一人で修行してて。」
そういい、リヴァさんはどこかへ行ってしまった。地面に寝転んだ状態で大の字になり空を見上げた。
ーーこんなに弱いから、俺は母さんを助けられなかったんだ。
怒り、悲しみ、悔しさ。色々の感情が濁流のように心の中に流れてきた。感情に押しつぶされてしまい、泣きそうになった。すると太陽の光によって身につけていた蝶のネックレスがキラッと光った。思わず俺は蝶のネックレスを握りしめた。
ーー母さんは天から見守ってくれているんだ。
くよくよなんかしていられない。母さんの仇を取るためにも、リヴァさんに認めてもらうためにも自分を鍛えなくては。
起き上がり服についた砂をはたいた。気合いを入れるためにと頬を叩き、大鎌を拾った。
ーー命を刈り取る死神のようになってやる




