第5話 初めての修行①
「まずはお二人がなんのギフトをお持ちなのか調べますね。」
そういうと師匠はいきなり剣で襲いかかってきた。幸い、俺とワイドは格闘技を習っていたため反射神経がよく躱すことができた。突然の出来事に動揺を隠せないでいたが師匠は至って冷静だった。
「すごいですね。ここまで反射神経がいいとは思いませんでした。」
そういうと今度は躊躇いもなくワイドに襲いかかっていった。ワイドは俺よりも運動神経がいいので何度ふりかかられても躱せているようだった。師匠はワイドにばかり剣を振るっているものだから、ただワイドたちの方を眺めているだけだったが、いつのまにか目の前にはワイドしかおらず後ろから声が聞こえた。
「ガイル君の足には根が張っているんですか?」
振り向くと目の前には剣があり、恐怖で目を瞑った。しばらく経ってから恐る恐る目を開けてみると刃は目の前で止まっていた。殺さないようにしてくれたのだろう。師匠は少し考えた後俺たちに質問をした。
「お二人は自分が何のギフトを持っているのか理解してるんですか?」
ーー最初からそう質問してくれればいいのに
「最初からそう質問してくれればいいのに。とでも言いたげな顔をしてますね。」
ギクッ。そんなに顔に出ていただろうか。それとも師匠は人の心を読むというギフトなのだろうか。だとしたら別に襲ってくる必要はない。調べると言われた時から俺のギフトは未来予知だと心の中で叫び続けていたのだから。
「俺は自分のギフトがなんなのかわかんないっす。それに急に自分に特殊能力があるって言われてもね。」
「それもそうだね。ギフトという能力があることは理解してくれたのかな?」
「それは…納得せざるを得なかったしな。身をもってクオレさんのギフトを体験したわけだしね。」
「ならよかった。さっき試してみて君のギフトがわかった気がするんです。」
そう言うと先ほどの剣を俺たちに見せてきた。何の変哲もない普通の剣のように見える。しかし師匠が指を刺した部分を見てみるとわずかながら焦げていた。
「人間は危険を感じると本能で防御をとるでしょう?ワイド君は無意識的に剣を焦がしていたんです。」
なるほど。確かに自分のギフトがなんなのかを自覚していない状態で質問したって何の意味もない。なら無理矢理にでもギフトを発現せざるをえない状況を作ろうという魂胆だったのか。
「なら、ワイドのギフトは物を焦がす能力ってことですか?」
「まぁそういう能力と呼ぼうと思えば呼べますが、正確には炎と言った方が正しいでしょうね。」
ワイドのギフトは炎か。意外とワイドの性格にあっているかもしれない。
「俺のギフトは炎?」
「はい。第一関門の自分のギフトを自覚するというところはクリアですね。」
そういうと今度は俺の方を向いた。俺はギフトをすでに自覚しているから、自分から告白しようと思い、口を開いた。
「俺のギフトは未来予知です。ヴィジアさんに助けられた時にすでに発現してるので。」
「そうですか…未来予知をしたようなそぶりは見せていませんでしたが。」
「まだ自由にみることはできなくて。ふとした瞬間に脳内で再生されるんです。」
自由にコントロールできないのだから使い物にならないと言えばならないが、このギフトでヴィジアさんと無事にあの場から逃げることができたのも事実。修行を通してコントロールできるようにし、あいつと戦えるレベルにならなくては。
「お二人のギフトは理解できました。修行メニューを考えてくるので少し待っていてください。」
そういい俺たちの寝室がある小屋へと戻っていってしまった。再び二人きりになった俺たちは顔を見合わせた。最初に話を切り出したのはワイドだった。
「信じらんないよな。今まで普通の日常を送ってきたのに、急に町は崩壊するし、ギフトとかいうのも出てくるし。」
「そうだな。衝撃的なことが起こりすぎて精神が疲れ切ってるよ。」
「そういえばあのお漏らしやろう、避難させてる時もちびっててさ。まぁ怖がる気持ちはわかるんだけどさ。どうにかなんないのかな。」
俺はにこやかな笑顔を浮かべた。久しぶりに笑ったような気がする。やっぱりワイドといると気持ちが楽になる。こいつが同じギフテッドでよかったとつくづく思う。
「お待たせしました。修行メニューが決まったのでお伝えしますね。」
二人で仲良く笑い合っていたところ背後をとるようにして師匠が現れた。先ほどもそうだったが師匠は気配を消して近づくことがうまい。暗殺に向いているのではないだろうか。
「ワイド君はエルス君と一緒に、そしてガイル君はリヴァさんと一緒に修行してもらいます。」
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ギフテッド:ワイド・ゴルク
ギフト:フローガ
炎を扱うことができる能力。まだ物を焦がす程度しか熱量がない。
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「エルスさんって今日朝食を作ってくれた、あの?」
「そうです。エルス君とワイド君は伸ばすべき能力が同じなので、一緒に修行するべきと考えたんですけど。」
「伸ばすべき能力?」
「はい。お二人のギフトは扱うために想像力が必要なんです。ワイド君の場合だと、まだ物を焦がす程度。もっとイメージ力を上げて熱量を増やしていきましょう。」
って言われてここに来たけど…
「修行場というか図書室じゃん!」
「こら、図書室では静かにするんだぞ。」
「静かにするっつったってエルスさんと俺しかいないって!」
もっとザ・修行っていうのを期待してたがまさかの読書&勉強時間だなんて。学校に行っていた頃とさほど変わらないじゃないか。そう思いながらもエルスさんを見習い、近くにあった本を適当に手に取り読んでみることにした。
ーーえっと、トロイ?作者はトーメル・ドリアスって人か。
あまり興味がなかったのでパラパラとだけめくり、ごくたまに一行読むを繰り返していた。おそらく戦争の話なのだろう。しかし神というフィクションすぎる存在も登場しているためよくある作り話だろうと思い、本棚に戻した。
「もう読み終わったのか?早いな。」
「いや、全く読んでないですよ。パラパラーっと見てつまんなそうだったんで戻しただけです。」
「そうか。見た感じジャンルはファンタジーってとこか?」
「はい。俺、あんまりファンタジー好きじゃないんすよ。魔法とか明らかご都合主義じゃないですか。」
「そうかもしれないが、物語を面白くする要素としては良い材料だと思うぞ。」
「それはそうですね。ところでエルスさんは何の本を読んでるんすか?」
「これは師匠におすすめされて読んでるんだ。エルス君のギフトを上達させるにはきっとこの本がぴったりですよって。」
表紙を読んでみるとタイトルは神々の伝説の武器というものだった。よく見てみると先ほどたまたま手にしたトロイという本と作者が同じだった。
ーーこのトーメルって人は神が好きなのか?
俺の好みには刺さらない本ばかり書く人だと思っていたが、武器というのは少し男心が燻られる。チラッと本の中も見てみるとついつい見入ってしまうような魅力的な武器がたくさん書かれていた。
ーーこれがギフト向上に繋がるのか。エルスさんのギフトはどういう能力なんだ?
「そういえばワイドはおすすめの本教えられてないのか?」
「教えられてない…いや、待てよ?」
ここにくる前になにか言っていたような気がする。なんだったけな。タイトルか作者かわからないがもうすぐでわかりそうだ。
「あっ。」
霧が晴れたように師匠の声と共に思い出すことができた。その本のタイトルは確か…
「火盗みの神。」




